【完結】公国第二王子の一途な鐘愛 〜白い結婚ではなかったのですか!?〜

緑野 蜜柑

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〜8. それぞれの思惑〜

父上の思惑

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部屋に戻った後、ずっと考えていた。レイラが落としたあの手紙。名前も住所も異なっていたけれど、間違いなくあれは父上の筆跡。しかも、わたくしがサイラス殿下に嫁ぐ遥かに前から、手紙のやり取りがあった。

どういうことなのだろう…。殿下と父上は以前から交流を持っていた…? 何のために…?

第二王子である殿下は、レリック公国王家の中心的な人物だ。そして、父上──クレディア公爵は、セントレア帝国で一、二を争う高い権威を持つ貴族。"ただの知り合い" というには不自然な組み合わせだ。

アーサー皇子の婚約破棄の後、瞬く間にわたくしはサイラス殿下のもとに嫁ぐことが決まった。今思えば、なんの伝手つてもなく、あんなに早く決まるものだろうか。

少なくとも、レリック公国側はわたくしを受け入れる準備ができていた。目的は勿論、レリック公国で品種改良を施した小麦の輸出。短期間で決まった婚姻には、当事者であるサイラス殿下が関与していると思って良いだろう。

ただ、トリガーとなったアーサー皇子の婚約破棄は、他国であるレリック公国の者が仕掛けるのは不可能。でも、父上ならどうだろう。

クレディア公爵家はセントレア帝国の王家と繋がりが深い。帝国内には父上が自由に動かせる者も沢山いる。アーサー皇子好みの令嬢を送り込むぐらいは造作もない。

一方的な婚約破棄に対する王家からの法大な補償。さらに、この先、レリック公国の小麦の流通を任された場合、クレディア商会には莫大な利益が入る。被害者のように見せかけて、父上にとってあの婚約破棄はメリットしかない。

最初から、全ては父上が仕組んだことなのではないだろうか。"最初" というのが、どれほど前なのかわからない。だけど、あの父上のことだ。レリック公国の小麦の戦略も、早い時期から知っていたのではないだろうか。

婚約破棄は、浅慮なアーサー皇子によるクレディア公爵家への裏切り、そう思ってきた。だけど、父上が仕組んだものだとしたら、話は逆になる。

「裏切ったのは、クレディア公爵家…?」

しかも、表向きは忠誠を誓ったまま、何も失うことなく、父上は大きな利益を手にしている。

…頭が痛い。すべてはまだ仮説。でもこんなにも辻褄が合うことがあるだろうか。出来ることならば、すぐにでもセントレア帝国へ行き、父上を問い詰めたい。

とはいえ、サイラス殿下が不在の今、そんな勝手なことは出来ない。わたくしはサイラス殿下の帰りを、ただ待つしかなかった。
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