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佐々木さん
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「お前の事。前から好きだったんだ。」
いきなり、校舎裏に来て欲しい。そう下駄箱に手紙が入っていて来てみれば目の前の男からそう言われた彼女。
私、耳が遠くなったかな?そう思い
「あの?もう一度言ってもらっていいですか?」
そう聞き返す彼女にイライラした雰囲気を醸し出し眉間にしわを寄せ。2年でイケメンと騒がれている男がもう一度彼女に言った。
「前から好きだったんだ!」
どうみたって告白というより罰ゲームでいやいや言わされてる感がにじみ出た男に気づいているのか
彼女は顔を真っ赤にしながら片手で顔を覆い蹲る。
それを確認したかのようにニヤニヤとした男とは、別に近くでは何やらガサゴソという音。
しかし、そんなことどうでもいいくらい。
彼女は
「はぁ?テメー校舎裏の告白を舐めてんのか!!!」
「は?」
キレていた。顔を真っ赤にした怒りマックス状態で
もちろん。ガサゴソっと音をたて、近くから出てこようとしていたクラスメイト数名の足が止まった。
本来この告白は、罰ゲームで。クラスで1番地味で気の弱そうな彼女をわざわざ選び、イケメンの彼に告白されて、浮かれはずかしがる彼女を『うそだよ。本気にしてばっかじゃねーの』っとばかりにからかいに来たつもりだった。
だが、彼女がするであろう予想していたイメージと現実があまりにも違いすぎて彼らはたたらを踏む。
そんな中。彼女はギロリと男を睨みつけると
「まず服装!!」
そう叫んだ。
「ふ、服装?」
告白した彼は、そのまま訳も分からず復唱する。
そんなよくわからない空気の中。彼女はずんずんと近寄ると両手で襟元を引っ張る。
「お前!!校舎裏の告白というベタなイメージを、ベタで簡単な告白だとなめて侮るな!!いいか!ベタだからこそ、そこには、雰囲気が大事なんだ。それなのに・・・」
襟を握った彼女の手に力が篭る。
「テメェ!クソみたいな告白しやがって、イメージ力がたりてねぇんだよ!!」
『え?』っと首を傾げているあいてに軽くため息を吐くと
「お前の足りない頭で想像しろ!まず、好きな人あったらどう思われたい?ふつうの奴なら、まず好きな人には印象を良くしたい!!良いように見られたいって願望があんだよ。なのにお前!!何?その格好。制服のボタンは全部開けっぱなしだし髪も整えた形跡もない。清潔さも爽やかさもない。逆にチャラさが滲み出て0点いや、マイナスなんだよ!」
そう言いながら彼女は軽く首を締め上げ始めていた彼の襟を緩めるとテキパキとボタンを嵌めてきっちりした見た目にすると、鞄から櫛を取り出し緩やかに髪型を整える。少し爽やかなイメージにしあげる。
もちろん途中で抵抗しようとした彼の手は、はたき落としている。
「そして、次に態度!!」
「た、たいど?」
男は彼女がはたき落とした手をさすりながら牽制するかのように彼女を睨みつけたが、彼女は気にした様子もなく何故か鞄から躾け用の鞭を取り出し地面にペチンッと打ち鳴らす。
「いいか?まず手!」
そう言いながら的確に手を鞭で軽く叩く。
痛みと驚きでビクッとなりながら、及び腰になって逃げ出そうとするが、すかさず襟首を掴み引きずり倒されて地面に転がり込む男に。
「どこに行く気だ!まだ終わってないぞ。立て!!」
何処から出したのかと思うくらい低い声が出た彼女につい恐怖で。
「ひゃい!!」
っと変な返事をしながらいそいで直立に立った男を彼女は泥を鞭で軽く叩き落としながら男の周りをじっくり見ながら回る。
「まず手は手前に。告白するやつが手をポケットに突っ込んだままとかなめてんの?なめてるよな?」
そう詰め寄りながら踵で足をギュっとにげられないように踏みつける。
男は涙目になりながらも首を必死に横にふっている。
「じゃあ、さっさと手を前にだす。」
「は、はい!!」
涙目で返事をする男。その姿は、イケメンと呼ばれていた面影はない。しかし、そんな事は、御構い無しに劇が飛ぶ。
クイッと顎を掴まれ
「いいか!顔は俯き加減に目線はすこし挙動不審に見えるような感じで世話しなくとまではいかないが、チラチラと恥ずかしいそうに動かすのがポイントだ!!あと、頬を軽く染めると、なおいいが無理ならチークを使う。屈め」
そう言いながら、彼女はいつの間に取り出したのか鞄から出したチークを彼の頬に軽めに乗せてやる。
「よし。そして、おい。そこにいるやつ!」
そう言って、ギロリと視線を後ろに向けると5、6人いた男女から適当に1番前にいた男を指差すと
「おい。お前でいい。さっきまで私がいた所に立て。は?そこじゃねぇよ。もっと右だ。よし!そこだ止まれ!いいか?動くんじゃねぇぞ。」
そう軽く睨むと指名され方は、なぜか顔を真っ青にしながら刻々と頷いているのを確認して、もう一度向きなおる。
もちろん。彼女は軽く睨んだだけと思っているようだが何故か逆らってはいけないと思わせる絶対的なオーラが包んでいるのを本人は気づいていない。
「さて、これで下準備は、整った。よし。じゃあ、さっきの最初っからもう一度言ってみようか?」
「え?」
そう返したのも仕方ない。さっきのとはなんだ?男はもう自分が何の為にここに来ていたのかわからなくなっていた。
「え?っじゃねーよ!『お前の事が前から好きだったんだ』だろうが」
ピシッと鞭がなる。その音にビクッとした男は
「オヒャエのことがまりぇからすきだったんりゃ」
慌てて叫んだ言葉は噛みまくりだった。周りの沈黙もあり、少し恥ずかしいそうに顔を真っ赤にした男を見ながらため息をついた彼女は
「はあ、何噛みまくってんだよ。もう一回小学生から日本語やり直すか?」
と返すが男は顔を真っ赤にしながらブルブルと首をふる。そんな男にまたため息をつきながら目線をあげると
「あめんぼあかいなあいうえお」
さっきまでの偉そうな口調とは違うハキハキとした口調で言われた言葉に「は?」っと首を傾げた。
「いいから繰り返す!!」
そう言われて慌てて口を開く。
「あ、あめんぼあかいなあいうえお」
「声が小さい!!もっと腹から声を出せ!!あめんぼ あかいな あいうえお。はい!」
「あ、あめんぼ あかいな あいうえお」
「うきもに こえびも およいでる」
「う、うきもに こえびも およいでる」
「かきのき くりのき カキクケコ」
「かきのき くりのき カキクケコ」
それを何回か繰り返した二人の発声練習は彼女の「少しは落ち着いたか?」っという言葉で止められた。
少し優しさを滲ませる声で話しかけると、相手も落ち着いたのかコクンと頷いた。
「よし、じゃあ、ゆっくりでいいから俯き加減にさっき言った通りの態度であれが告白相手だと思って言ってみてくれ」
そう優しく言われるとさっきまでの怖さが無くなり、すとんとあの言葉がいまなら言えるような気がした。
そして、すこし決意をにじませた目をした男は目の前の男にむかってゆっくりと声を出した。
「俺・・前から・・・ずっとお前の事が、好きだったんだ・・・」
それは、最初の嫌々ながら告白していたようなガサツな態度の面影もなく。
初恋の初心な心が、感じられる相手を本当に好きだと思わせるそんな甘酸っぱい雰囲気を醸し出していた。
そして、そんな雰囲気と空気の緩みに触発された相手役の男もそんな雰囲気にあてられたのか顔を赤くしながら
「あ、ありがとう嬉しいよ。」
とハニカミながら答えたのだった。
そんな不思議な空間が数分経過した時だった。
「あっいた!部長ー!!こんなところにいたんですか?探したんですよ。予算会議が始まります。」
そう大きな声で叫ばれた声に一瞬にして場が現実に戻ると、さっきまで鞭を持っていた女は鞄に鞭を直して告白した男に向き直っていた。そして、
「よく出来ました。」
そう言われ頭をよしよしと撫でられた男はなんだか心が癒される感じがした。
なんだこの感じは、そう思い彼女の顔をみるとさっきまでのオーラはなく。慈しむような笑顔にドキリとした。そして、彼女は
「いい告白でした。」
そういうと「では呼ばれてますので失礼します。」といって歩き出した。
「まって佐々木さん。えっと、告白の返事は?」
そう言われた彼女は「そういえば告白されたんでしたっけ?」そう言いながら、ふむふむといい、男をみつめる。
しばらく見つめると
「あの?すいませんが名前はなんでした?」
「え?」
「その前に話したことあります?」
「いや、たまにクラスで挨拶とかするでしょ」
そういう男に彼女は
「え?同じクラスですか?」
「・・・うん」
男は少し悲しくなった。そして告白を笑うはずだった仲間たちはちょっと可哀想に男をみている。
「芝居が上手い子は名前をすぐ覚えられるんですが、すいません。」
そういって、軽く頭をさげる彼女に男は気になった質問をする。
「いや、えっと芝居が上手くなったら名前を覚えてくれるんですか?」
「ええ、そうですね。たぶん・・・。演劇部員の子の名前は覚えてますし」
「・・・わかりました。返事は名前を覚えてもらってからでいいです。」
しかし、その言葉は「部長。ん?なにして?・・・まあ、いきますよ。」っという第三者の声でかき消されて「え?何か言いました?」っとまったく耳に入ってなかったらしい。
「いえ、なんでもないです。」
「そうですか?では失礼します。」
そういって、去っていった彼女の後ろ姿を見つめながら男は決意した。
今度は、真面目に彼女に告白をしてみようと、しかし、そんな決意は虚しく後日。男が校舎裏で男に告白して甘酸っぱい雰囲気を漂わせていたという噂によりそれどころじゃなくなることを今のこの男は知らない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「部長。あれなんですか?ダメですよ。変なのまた引っかけてきたら」
「いやいや、引っかけてないよ?」
「ってか、呼び出されたって言ってましたけど一体なんだったんですか?」
「いたずらでたぶん告白されたんじゃないかな?罰ゲームぽかったですし」
「うぇ。よくやりますね。あいつら、俺だったら絶対部長には、告白しないわ」
「それは、どういう意味かな?」
「え?だって、部長にそんなことやったら確実に演技指導が入るでしょう」
「まあね。あれは、酷かったからつい鞭まで出してしまった。」
「やっぱり、ってか鞭だしたんだ・・・。はぁ、ってあの配置からすると部長役は、男ですかね?」
「ん?よくわかりしたね?」
「いや、部長の隣にいた男がチークをつけてましたし」
「ああ。」
「・・・ってか。部長。・・・わざと自分の代わりを男にやらせましたね。」
「ちょっとした。嫌がらせです。あれぐらい許されると思います。」
「あそこ結構文化部から見えますよね。特にあの二人の配置。・・・可哀想に遊ばれて」
「遊んでません。真剣に指導しましたよ?」
「はぁ、頭が痛くなってきた」
「半分は優しさでできた頭痛薬飲みますか?」
「いえ。俺には優しさよりも癒しが欲しいです。」
そんなよくわからない会話をしながら今日も演劇部部長の佐々木さんは、我が道をいく。
いきなり、校舎裏に来て欲しい。そう下駄箱に手紙が入っていて来てみれば目の前の男からそう言われた彼女。
私、耳が遠くなったかな?そう思い
「あの?もう一度言ってもらっていいですか?」
そう聞き返す彼女にイライラした雰囲気を醸し出し眉間にしわを寄せ。2年でイケメンと騒がれている男がもう一度彼女に言った。
「前から好きだったんだ!」
どうみたって告白というより罰ゲームでいやいや言わされてる感がにじみ出た男に気づいているのか
彼女は顔を真っ赤にしながら片手で顔を覆い蹲る。
それを確認したかのようにニヤニヤとした男とは、別に近くでは何やらガサゴソという音。
しかし、そんなことどうでもいいくらい。
彼女は
「はぁ?テメー校舎裏の告白を舐めてんのか!!!」
「は?」
キレていた。顔を真っ赤にした怒りマックス状態で
もちろん。ガサゴソっと音をたて、近くから出てこようとしていたクラスメイト数名の足が止まった。
本来この告白は、罰ゲームで。クラスで1番地味で気の弱そうな彼女をわざわざ選び、イケメンの彼に告白されて、浮かれはずかしがる彼女を『うそだよ。本気にしてばっかじゃねーの』っとばかりにからかいに来たつもりだった。
だが、彼女がするであろう予想していたイメージと現実があまりにも違いすぎて彼らはたたらを踏む。
そんな中。彼女はギロリと男を睨みつけると
「まず服装!!」
そう叫んだ。
「ふ、服装?」
告白した彼は、そのまま訳も分からず復唱する。
そんなよくわからない空気の中。彼女はずんずんと近寄ると両手で襟元を引っ張る。
「お前!!校舎裏の告白というベタなイメージを、ベタで簡単な告白だとなめて侮るな!!いいか!ベタだからこそ、そこには、雰囲気が大事なんだ。それなのに・・・」
襟を握った彼女の手に力が篭る。
「テメェ!クソみたいな告白しやがって、イメージ力がたりてねぇんだよ!!」
『え?』っと首を傾げているあいてに軽くため息を吐くと
「お前の足りない頭で想像しろ!まず、好きな人あったらどう思われたい?ふつうの奴なら、まず好きな人には印象を良くしたい!!良いように見られたいって願望があんだよ。なのにお前!!何?その格好。制服のボタンは全部開けっぱなしだし髪も整えた形跡もない。清潔さも爽やかさもない。逆にチャラさが滲み出て0点いや、マイナスなんだよ!」
そう言いながら彼女は軽く首を締め上げ始めていた彼の襟を緩めるとテキパキとボタンを嵌めてきっちりした見た目にすると、鞄から櫛を取り出し緩やかに髪型を整える。少し爽やかなイメージにしあげる。
もちろん途中で抵抗しようとした彼の手は、はたき落としている。
「そして、次に態度!!」
「た、たいど?」
男は彼女がはたき落とした手をさすりながら牽制するかのように彼女を睨みつけたが、彼女は気にした様子もなく何故か鞄から躾け用の鞭を取り出し地面にペチンッと打ち鳴らす。
「いいか?まず手!」
そう言いながら的確に手を鞭で軽く叩く。
痛みと驚きでビクッとなりながら、及び腰になって逃げ出そうとするが、すかさず襟首を掴み引きずり倒されて地面に転がり込む男に。
「どこに行く気だ!まだ終わってないぞ。立て!!」
何処から出したのかと思うくらい低い声が出た彼女につい恐怖で。
「ひゃい!!」
っと変な返事をしながらいそいで直立に立った男を彼女は泥を鞭で軽く叩き落としながら男の周りをじっくり見ながら回る。
「まず手は手前に。告白するやつが手をポケットに突っ込んだままとかなめてんの?なめてるよな?」
そう詰め寄りながら踵で足をギュっとにげられないように踏みつける。
男は涙目になりながらも首を必死に横にふっている。
「じゃあ、さっさと手を前にだす。」
「は、はい!!」
涙目で返事をする男。その姿は、イケメンと呼ばれていた面影はない。しかし、そんな事は、御構い無しに劇が飛ぶ。
クイッと顎を掴まれ
「いいか!顔は俯き加減に目線はすこし挙動不審に見えるような感じで世話しなくとまではいかないが、チラチラと恥ずかしいそうに動かすのがポイントだ!!あと、頬を軽く染めると、なおいいが無理ならチークを使う。屈め」
そう言いながら、彼女はいつの間に取り出したのか鞄から出したチークを彼の頬に軽めに乗せてやる。
「よし。そして、おい。そこにいるやつ!」
そう言って、ギロリと視線を後ろに向けると5、6人いた男女から適当に1番前にいた男を指差すと
「おい。お前でいい。さっきまで私がいた所に立て。は?そこじゃねぇよ。もっと右だ。よし!そこだ止まれ!いいか?動くんじゃねぇぞ。」
そう軽く睨むと指名され方は、なぜか顔を真っ青にしながら刻々と頷いているのを確認して、もう一度向きなおる。
もちろん。彼女は軽く睨んだだけと思っているようだが何故か逆らってはいけないと思わせる絶対的なオーラが包んでいるのを本人は気づいていない。
「さて、これで下準備は、整った。よし。じゃあ、さっきの最初っからもう一度言ってみようか?」
「え?」
そう返したのも仕方ない。さっきのとはなんだ?男はもう自分が何の為にここに来ていたのかわからなくなっていた。
「え?っじゃねーよ!『お前の事が前から好きだったんだ』だろうが」
ピシッと鞭がなる。その音にビクッとした男は
「オヒャエのことがまりぇからすきだったんりゃ」
慌てて叫んだ言葉は噛みまくりだった。周りの沈黙もあり、少し恥ずかしいそうに顔を真っ赤にした男を見ながらため息をついた彼女は
「はあ、何噛みまくってんだよ。もう一回小学生から日本語やり直すか?」
と返すが男は顔を真っ赤にしながらブルブルと首をふる。そんな男にまたため息をつきながら目線をあげると
「あめんぼあかいなあいうえお」
さっきまでの偉そうな口調とは違うハキハキとした口調で言われた言葉に「は?」っと首を傾げた。
「いいから繰り返す!!」
そう言われて慌てて口を開く。
「あ、あめんぼあかいなあいうえお」
「声が小さい!!もっと腹から声を出せ!!あめんぼ あかいな あいうえお。はい!」
「あ、あめんぼ あかいな あいうえお」
「うきもに こえびも およいでる」
「う、うきもに こえびも およいでる」
「かきのき くりのき カキクケコ」
「かきのき くりのき カキクケコ」
それを何回か繰り返した二人の発声練習は彼女の「少しは落ち着いたか?」っという言葉で止められた。
少し優しさを滲ませる声で話しかけると、相手も落ち着いたのかコクンと頷いた。
「よし、じゃあ、ゆっくりでいいから俯き加減にさっき言った通りの態度であれが告白相手だと思って言ってみてくれ」
そう優しく言われるとさっきまでの怖さが無くなり、すとんとあの言葉がいまなら言えるような気がした。
そして、すこし決意をにじませた目をした男は目の前の男にむかってゆっくりと声を出した。
「俺・・前から・・・ずっとお前の事が、好きだったんだ・・・」
それは、最初の嫌々ながら告白していたようなガサツな態度の面影もなく。
初恋の初心な心が、感じられる相手を本当に好きだと思わせるそんな甘酸っぱい雰囲気を醸し出していた。
そして、そんな雰囲気と空気の緩みに触発された相手役の男もそんな雰囲気にあてられたのか顔を赤くしながら
「あ、ありがとう嬉しいよ。」
とハニカミながら答えたのだった。
そんな不思議な空間が数分経過した時だった。
「あっいた!部長ー!!こんなところにいたんですか?探したんですよ。予算会議が始まります。」
そう大きな声で叫ばれた声に一瞬にして場が現実に戻ると、さっきまで鞭を持っていた女は鞄に鞭を直して告白した男に向き直っていた。そして、
「よく出来ました。」
そう言われ頭をよしよしと撫でられた男はなんだか心が癒される感じがした。
なんだこの感じは、そう思い彼女の顔をみるとさっきまでのオーラはなく。慈しむような笑顔にドキリとした。そして、彼女は
「いい告白でした。」
そういうと「では呼ばれてますので失礼します。」といって歩き出した。
「まって佐々木さん。えっと、告白の返事は?」
そう言われた彼女は「そういえば告白されたんでしたっけ?」そう言いながら、ふむふむといい、男をみつめる。
しばらく見つめると
「あの?すいませんが名前はなんでした?」
「え?」
「その前に話したことあります?」
「いや、たまにクラスで挨拶とかするでしょ」
そういう男に彼女は
「え?同じクラスですか?」
「・・・うん」
男は少し悲しくなった。そして告白を笑うはずだった仲間たちはちょっと可哀想に男をみている。
「芝居が上手い子は名前をすぐ覚えられるんですが、すいません。」
そういって、軽く頭をさげる彼女に男は気になった質問をする。
「いや、えっと芝居が上手くなったら名前を覚えてくれるんですか?」
「ええ、そうですね。たぶん・・・。演劇部員の子の名前は覚えてますし」
「・・・わかりました。返事は名前を覚えてもらってからでいいです。」
しかし、その言葉は「部長。ん?なにして?・・・まあ、いきますよ。」っという第三者の声でかき消されて「え?何か言いました?」っとまったく耳に入ってなかったらしい。
「いえ、なんでもないです。」
「そうですか?では失礼します。」
そういって、去っていった彼女の後ろ姿を見つめながら男は決意した。
今度は、真面目に彼女に告白をしてみようと、しかし、そんな決意は虚しく後日。男が校舎裏で男に告白して甘酸っぱい雰囲気を漂わせていたという噂によりそれどころじゃなくなることを今のこの男は知らない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「部長。あれなんですか?ダメですよ。変なのまた引っかけてきたら」
「いやいや、引っかけてないよ?」
「ってか、呼び出されたって言ってましたけど一体なんだったんですか?」
「いたずらでたぶん告白されたんじゃないかな?罰ゲームぽかったですし」
「うぇ。よくやりますね。あいつら、俺だったら絶対部長には、告白しないわ」
「それは、どういう意味かな?」
「え?だって、部長にそんなことやったら確実に演技指導が入るでしょう」
「まあね。あれは、酷かったからつい鞭まで出してしまった。」
「やっぱり、ってか鞭だしたんだ・・・。はぁ、ってあの配置からすると部長役は、男ですかね?」
「ん?よくわかりしたね?」
「いや、部長の隣にいた男がチークをつけてましたし」
「ああ。」
「・・・ってか。部長。・・・わざと自分の代わりを男にやらせましたね。」
「ちょっとした。嫌がらせです。あれぐらい許されると思います。」
「あそこ結構文化部から見えますよね。特にあの二人の配置。・・・可哀想に遊ばれて」
「遊んでません。真剣に指導しましたよ?」
「はぁ、頭が痛くなってきた」
「半分は優しさでできた頭痛薬飲みますか?」
「いえ。俺には優しさよりも癒しが欲しいです。」
そんなよくわからない会話をしながら今日も演劇部部長の佐々木さんは、我が道をいく。
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