セルリアン

吉谷新次

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チャプター03-02

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 ランスが案内されたのは、洞窟と機械室が混じったような広いホールで、人造人間の製造室とされる場所だった。倉庫のように天井が高く、配電室のように電線が入り乱れ、ホール外周部の発電機が中央の円柱水槽に繋がっていた。そして、その青く輝く円柱水槽のなかには、ぼろい布を身体に巻いた灰色の肌をした人間が入って眠らされていた。その人間にも栄養や電力を送る管が繋げられ、見るからに人造人間製造の最終段階のような雰囲気だった。

 ここにある膨大な熱量を取り扱う機材は、地元の惑星で廃棄されていた粗大ゴミに似ているもので、この惑星で故障したものを、こちらの地元で捨てていたのだと理解できた。以前の生活では、頻繁に機材を回収しては、金属部分を溶かして生活に活かすようなことをしていたのをおぼえている。

「君には、ここで働いてもらう」隣にいるジャンが言った。「指定の場所に立って、魔術を展開しろ。どんな魔術でも良い。周辺機器が魔術を吸収して、魔術の混じった電力に変換する」

 ランスは辺りを見渡し、発電機とは別の、人が立てるほどの機械の踏み台のような台座を見つけた。その台座の周囲には、魔力を探知してその力を回収するような棒状の機械があった。

 似たような踏み台はもう二箇所あり、そこはほかの魔術師が球体光壁を展開し、魔力を電力へと変換させ、発電することを務めていた。

 この踏み台は、銀河連邦が魔界との戦争を想定した際に開発した魔力を電力に変換する機械を応用したもので、本来は戦闘艦に搭載されて防御光壁の出力に用いられるが、魔界の賢者が小型化させることに成功し、その低質複製品がここにあるようだ。ただ、低質といっても、魔力の混じった電力は、魔界の人造人間を製造するのには、都合が良いとされている。

 ここに来た時に、いくつかの機材の情報を思い出したのは、これまでの長老からの雑学が活かされたからだ。地元の惑星で機材を拾う仕事中に、頻繁に蘊蓄を聞かされていたのだ。

 魔女の魔術を送り込んだのであれば、人造人間は、その魔女の魔術を習得した下位互換の複製品に過ぎなくなってしまうのだが、特殊な幼児が魔力を送り込むことで、その人造人間にも、成長過程が得られ、どのように魔力を成長させるのか、見ものだとされている。

「あいつらのように、防御魔術を展開しろ」とジャン。「君の特殊な魔力なら、私やあいつらよりも良い特殊な電力を生み出し、成長を得られる人造人間となる。中央の奴が完成すれば、地元へ返してやろう。はやく、あの台に乗って、魔力を展開しろ」

 ジャンからそんな言葉をかけられるも、ランスは怯えて固まってしまった。

 ここにいるジャンや研究術師にとって、成長しきった魔術師の魔力を与えるよりも、これから成長するかもしれないという魔力を与えたほうが、人造人間が自力でどう成長するのか観察でき、好奇心を煽られるのだ。そのうえ、人造人間の魔力の成長によっては、魔女や銀河連邦の軍隊に対抗できるかもしれない。彼らは、遊び感覚のように実験を行っている。

 こちらの魔力によって、中央にいるおかしな灰色の人造人間が目覚めるとなれば、そいつがどんな行動をするのかは想定できない。場合によっては、人を殺す人型の兵器として扱われ、今以上に人々へ危険を及ぼすことになってしまう。

「はやくしろ!」ジャンは大声を上げた。

 そんな彼の圧力に、ランスは身体を震わせてしまったが、仕方なく台座へと向かった。台座の上に立ち、両手を中央の水槽に向けながら、全身に力を入れて魔力を展開した。それは、防御魔法を展開し、全身のまわりで球体の光壁を張り、水色の閃光を放つものだった。

 すると、周囲では原動機が激しく稼働し、こちらの防御魔法である結界術に反応したのか、魔力の混じった膨大な電力が中央の水槽へと供給され始めた。

 同時に、この機械室に発電石があるのか、手のひらに収まるほどの大きさの石が、発電機の隣にある機械のなかで青色の閃光を放ち、膨大な電力を供給していた。

「予想以上の発電量だ」ジャンは微笑んでいた。「魔女が認めるだけある」

 けれど、常に走っているような体力の奪われ方をされ、すぐに魔力が尽きてしまった。

「……なにをしている」ジャンが、すぐにこちらの失態に気づいた。「続けろ!」

「……ダメ」ランスは息を荒くし、姿勢を崩した。

「君が魔力を出さないなら、またあの惑星に行き、君の変わりを探すしかないな」とジャンは脅しを入れてきた。「君のせいで被害者が増えるんだぞ」

「……やります」ランスは、汗を垂らしながら立ち上がり、魔術をもう一度展開した。

 しばらくのあいだ、ランスや複数の魔術師、そして発電石の力によって、電力が生産されていた。それらに反応するかのように、水槽のなかにいる人造人間が時折、指を動かすなどの反応を示すようになってきた。閉じている瞼にも力が入っており、今にも目覚めそうな状態だった。ほかの魔術師が展開する魔術よりも、こちらの魔術のほうが特殊な電力を生み出すのか、機械の稼働する音は断然に違った。

 それらの光景を見て、ジャンは満足げな表情を浮かべた。

 すると、次第に発電機から異音が鳴り響き、ほとんどの機器に黒煙が立ち上がり始めた。それは徐々に悪化していき、火花なども散り、発火を始めてしまった。

 ランスを含め、周囲の魔術師も魔術の展開をやめ、これ以上の送電作業を中断した。

「くそ。これだから古い機械はだめなんだ」ジャンは、顔をしかめた。続けて、通信機を取り出した。「スノー様。ご報告があります」

「どうした?」通信機からスノーの声が聞こえた。

「制御装置と発電機の両方が壊れました。エネルギーの量が今の機械の想定を超えたことが原因かもしれません」ジャンは、円柱水槽を凝視していた。「……ランスの魔力は異常です。前までの担当魔術師の魔力を遥かに上まわっているからか、ここにある機械では変換ができないようです」

「ほかの部品での代用は無理なのか?」スノーは、魔女ではありながらも、魔界だけではなく、人界の科学もある程度は知り得ているようだった。

 一方で、ジャンの部下達は、ここにある機械を簡易的に再使用できるように、補助部材の交換を始め、新しい制御装置が来るまでの修理を行っていた。

「修理をしても、同じように壊れるかもしれません。新しい制御装置は必要かと。惑星ゼリアに行くしかありませんが、雑貨屋の店主とコネのある奴は、惑星シストンで例の賞金稼ぎに殺されました」ジャンは悩んでいた。「ランスの魔力を混ぜた電力を人造人間に送るには、安物の複製品では無理と予想されるうえ、高価な機材を安く値切ることもできません」

「私が行こう」スノーが答えた。「私が、惑星クラウに行く。そこに行けば、なにかしらの機械が手に入るであろう」

「ありがたいですが、あそこは銀河連邦と交流を持つ魔界二次惑星。スノー様ほどの魔術師が出向いたら、連邦所属の誰かに追跡される可能性もありますし、見知らぬ人物から注目を受ける可能性もある」

「私は、そこまで馬鹿じゃない」とスノー。「人造人間を扱う機械は、特殊なものだ。手続きと移動で時間がかかる。しばらくのあいだ、ランスを休憩所に送ってやれ」

「わかりました」とジャンが返事をしたところで、通信機での会話が終わった。

 その光景をじっと見ていたランスではあったが、気づけば、ジャンの部下である魔術師に囲まれていた。そして、監獄へと連れていかれることとなってしまった。
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