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11. 暗号と扉
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(暗号と扉)
それから、三日たった金曜日……
良一に何か一言いってやろうと思っても、幸恵の目があるし簡単には近づけなかった。
待ち伏せという手もあったが何処で誰が見ているかわからない。
しかし、それでは妙子の気が落ち着かず、いらいらしていた。
良一の席は一番前、妙子は一番後ろ。
みんながよくやる手で、ここから消しゴムに手紙を包んで背中にぶつけてやろうかと思ったくらいだった。
それでも、やはり回りから注目を浴びることは間違い。
「手紙、そうだ、暗号……」
妙子は、思いついたように英語の教科書をだして、適当な練習問題を探した。
そして、その練習問題の上の余白に逆さまに数字を並べた。
「幸恵ちゃん、ちょっと来て……!」
幸恵は何事かと思って妙子の席に向かった。
その声でいつもの連中も集まってきた。
「なになに、面白いこと?」
一番近くにいた聡子が幸恵よりも先に着いた。
「何でもないわよ。お勉強なんだから……」
「珍しいわね……」
他の仲間が寄ってきてしまったことで、一番前の席から、ようやくたどり着いた幸恵に言い難くなってしまった。
「あのね……」
「なに、解らないこと?」
幸恵は優しく尋ねてくれた。
集まってきた仲間の手前、何か言わないと格好が付かなくなった。
「あのさー、英語のこの練習問題なんだけど……、江崎君に聞いてみてくれないかなー?」
「そんなの妙子が自分で聴けばいいのにねー!」
聡子が冷やかすように言った。
「いや、私が聴いてもいいんだけど、またみんなに誤解されると困るから……」
「それなら、私がわかるかもよ?」
幸恵が妙子の教科書を取って眺めた。
「あ、あーあ、でも幸恵ちゃんじゃ……?」
妙子が意外な展開に戸惑った。
「あ、わかった! 幸恵ちゃんじゃ駄目よ!」
理恵子が教科書を奪って言い放った。
妙子が、わけもわからず同調した。
「この問題は江崎君が解かないと意味がないのよ!」
「どういうこと?」
言葉の先が見えない幸恵に、聡子も気が付いたらしく理恵子から教科書を奪い取ると幸恵に渡した。
「いいから、早く聴いてきなさい!」
妙子は、笑って幸恵を見送った。
幸恵は罠の匂いがぷんぷんしたが、こんなことでみんなが喜んでくれればいいと思い。良一の席に向かった。
「ちょっと教えてくれる?」
「いいよ!」
良一は、なんの抵抗もなく教科書を受け取った。
そして、余白に書かれた逆さまの数字と最後の「”」が目に入った。
「11335511311223952332”」
数字の下には丁寧に波線で強調されていた。
「何、この数字……?」
「さあー、この教科書妙子のものだから、本当いうと妙子に頼まれての! 自分で聴きに来るのが恥ずかしいんだって……」
良一はそれには応えず難しい顔で問題と取り組んでいるようすだった。
幸恵が良一の席に来たことで、達也が飛んできた。
「どうしたの幸恵ちゃん?」
「うん、なんでもない。ちょっと問題を教えてもらおうと思って……」
「どれどれ……。うそ、現在完了形なんてまだ習ってないよ。幸恵ちゃん、凄いね……。これは、俺の出番ではないね。でも、良一でもわからないだろう?」
「そんなことないわよ。もう、塾では終わっているわ」
「へーえ、幸恵ちゃんのところレベル高いね……」
「出来たよ。これでいいと思うけど……」
「……、ありがとう!」
「あ、幸恵ちゃん……、湯川さんに、いいよって言ってくれない」
「そうね、今度は自分で聞きに来るように言っておくわ」
幸恵が戻ると、仲間の女子は遠慮がちな拍手で迎えた。
「はい、行って来たわよ!」
「あ、ありがとう!」
妙子は深々と頭を下げた。
「今度は自分で聞きに来なさいって……」
「うん、聞こえた……」
妙子たちは、二人の関係をじっと息を済ませて聞いていたのだから、内容はすべてわかっていた。
「それで、どうだったの? 二人の距離は縮まったのかな。それとも告白したとか……?」
理恵子が、幸恵をからかうように冷やかした。
「そんなわけないでしょう。あなたたちも暇ねー」
幸恵は、大きくため息をついて妙子の前の席に座った。
「幸恵ちゃん、ごめん。本当は、そんなつもりではなかったけど……」
妙子は、いまさらながらに弁解がましく、もう一度頭を下げた。
「わかっているわよ。妙ちゃんの考えは……」
「なになに、もっと重大な作戦が秘められていたのかな?」
聡子が顔を近づけてきた。
「違うわよ。妙ちゃんは江崎君も、もっとクラスのみんなと仲良くなればいいと思っているのよ」
「それは、ちょっとねー、性格というものだから……」
理恵子が小声で言った。
妙子の回りは、いつの間にか、例の円陣ができていた。
しかし、聡子が言ったように、この作戦にはもっと重大な秘密が隠されていた。
これは妙子と良一が小さいころ、姉の紗恵子にもわからない暗号で伝聞を交わして楽しんでいたものだった。
仕組みは教科書の余白に書かれてあった数字が伝聞で、これは二桁の組み数字になっていて、五〇音表の縦と横の数字で文字を当てはめ、濁音発音はそのまま数字に添える約束にしていた。
したがって「11」は「ア」。「33」は「ス」それによると「アスノアサイクロクジ」とかかれていた。
多分言いたかったことは、「明日の朝行く。時間は6時」と推測された。
それから、三日たった金曜日……
良一に何か一言いってやろうと思っても、幸恵の目があるし簡単には近づけなかった。
待ち伏せという手もあったが何処で誰が見ているかわからない。
しかし、それでは妙子の気が落ち着かず、いらいらしていた。
良一の席は一番前、妙子は一番後ろ。
みんながよくやる手で、ここから消しゴムに手紙を包んで背中にぶつけてやろうかと思ったくらいだった。
それでも、やはり回りから注目を浴びることは間違い。
「手紙、そうだ、暗号……」
妙子は、思いついたように英語の教科書をだして、適当な練習問題を探した。
そして、その練習問題の上の余白に逆さまに数字を並べた。
「幸恵ちゃん、ちょっと来て……!」
幸恵は何事かと思って妙子の席に向かった。
その声でいつもの連中も集まってきた。
「なになに、面白いこと?」
一番近くにいた聡子が幸恵よりも先に着いた。
「何でもないわよ。お勉強なんだから……」
「珍しいわね……」
他の仲間が寄ってきてしまったことで、一番前の席から、ようやくたどり着いた幸恵に言い難くなってしまった。
「あのね……」
「なに、解らないこと?」
幸恵は優しく尋ねてくれた。
集まってきた仲間の手前、何か言わないと格好が付かなくなった。
「あのさー、英語のこの練習問題なんだけど……、江崎君に聞いてみてくれないかなー?」
「そんなの妙子が自分で聴けばいいのにねー!」
聡子が冷やかすように言った。
「いや、私が聴いてもいいんだけど、またみんなに誤解されると困るから……」
「それなら、私がわかるかもよ?」
幸恵が妙子の教科書を取って眺めた。
「あ、あーあ、でも幸恵ちゃんじゃ……?」
妙子が意外な展開に戸惑った。
「あ、わかった! 幸恵ちゃんじゃ駄目よ!」
理恵子が教科書を奪って言い放った。
妙子が、わけもわからず同調した。
「この問題は江崎君が解かないと意味がないのよ!」
「どういうこと?」
言葉の先が見えない幸恵に、聡子も気が付いたらしく理恵子から教科書を奪い取ると幸恵に渡した。
「いいから、早く聴いてきなさい!」
妙子は、笑って幸恵を見送った。
幸恵は罠の匂いがぷんぷんしたが、こんなことでみんなが喜んでくれればいいと思い。良一の席に向かった。
「ちょっと教えてくれる?」
「いいよ!」
良一は、なんの抵抗もなく教科書を受け取った。
そして、余白に書かれた逆さまの数字と最後の「”」が目に入った。
「11335511311223952332”」
数字の下には丁寧に波線で強調されていた。
「何、この数字……?」
「さあー、この教科書妙子のものだから、本当いうと妙子に頼まれての! 自分で聴きに来るのが恥ずかしいんだって……」
良一はそれには応えず難しい顔で問題と取り組んでいるようすだった。
幸恵が良一の席に来たことで、達也が飛んできた。
「どうしたの幸恵ちゃん?」
「うん、なんでもない。ちょっと問題を教えてもらおうと思って……」
「どれどれ……。うそ、現在完了形なんてまだ習ってないよ。幸恵ちゃん、凄いね……。これは、俺の出番ではないね。でも、良一でもわからないだろう?」
「そんなことないわよ。もう、塾では終わっているわ」
「へーえ、幸恵ちゃんのところレベル高いね……」
「出来たよ。これでいいと思うけど……」
「……、ありがとう!」
「あ、幸恵ちゃん……、湯川さんに、いいよって言ってくれない」
「そうね、今度は自分で聞きに来るように言っておくわ」
幸恵が戻ると、仲間の女子は遠慮がちな拍手で迎えた。
「はい、行って来たわよ!」
「あ、ありがとう!」
妙子は深々と頭を下げた。
「今度は自分で聞きに来なさいって……」
「うん、聞こえた……」
妙子たちは、二人の関係をじっと息を済ませて聞いていたのだから、内容はすべてわかっていた。
「それで、どうだったの? 二人の距離は縮まったのかな。それとも告白したとか……?」
理恵子が、幸恵をからかうように冷やかした。
「そんなわけないでしょう。あなたたちも暇ねー」
幸恵は、大きくため息をついて妙子の前の席に座った。
「幸恵ちゃん、ごめん。本当は、そんなつもりではなかったけど……」
妙子は、いまさらながらに弁解がましく、もう一度頭を下げた。
「わかっているわよ。妙ちゃんの考えは……」
「なになに、もっと重大な作戦が秘められていたのかな?」
聡子が顔を近づけてきた。
「違うわよ。妙ちゃんは江崎君も、もっとクラスのみんなと仲良くなればいいと思っているのよ」
「それは、ちょっとねー、性格というものだから……」
理恵子が小声で言った。
妙子の回りは、いつの間にか、例の円陣ができていた。
しかし、聡子が言ったように、この作戦にはもっと重大な秘密が隠されていた。
これは妙子と良一が小さいころ、姉の紗恵子にもわからない暗号で伝聞を交わして楽しんでいたものだった。
仕組みは教科書の余白に書かれてあった数字が伝聞で、これは二桁の組み数字になっていて、五〇音表の縦と横の数字で文字を当てはめ、濁音発音はそのまま数字に添える約束にしていた。
したがって「11」は「ア」。「33」は「ス」それによると「アスノアサイクロクジ」とかかれていた。
多分言いたかったことは、「明日の朝行く。時間は6時」と推測された。
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