カタリーナのお店の人々

マッシ

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31. 寂しい夜とサザンクロス

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(寂しい夜と、サザンクロス)

 アキラと奈緒さんは、アイスコ―ヒーとロールケーキを食べ終わると……
「……、また、この店に来ていいかしら……」
 奈緒さんは、俯いて恥ずかしそうに言った。
「もちろんよー、また、必ず来てね……、ハナと待っているわ……」
 お姉さんは、壁に掛かっているハナの裸婦を見た。
 奈緒さんは、お兄さんの描いたジャンダルムの絵を大事そうに抱えて帰って行った。
 私とお姉さんは、車まで見送りに出た。
「……、アキラも、また来てね……」
「勿論さー、奈緒を連れてくるよ……」
「……、このブラウスも、今度、お返しに来るから……、それまで、お借りします……」
「いいのよ……、今日の記念に奈緒さんにあげるわー」
 奈緒さんは頷いて、嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
 車の中に入ってからも、名残り惜しそうに、奈緒さんが笑顔で手を振ってくれた……

 私たちは、店に入ると……
「……、ありがとうー、……」
 お兄さんが、ジャンダルムの掛かっていた、その前の席に座っていた。
「貴方ねー、生まれ変わって、新しい人生を生きるんじゃなかったの……?」
「奈緒を一目見てからでも遅くはないから……」
「……、それなら、何で出て来て逢ってあげなかったのよ……?」
「幽霊なんかで、出て行ったら、今度は、僕が奈緒の傍から離れられなくなる……」
「そうなのね……、ハナもきっと同じ気持ちで出てこられないのかな……」
「でも貴方、あの絵の破けたところから出入りしていたんじゃないの……?」
「……、そう思ていたけどね……、余り、関係ないみたいだ……」
「……、もうー、いい加減ね……」
「……、幽霊だからね……、ふらふらと……」
「……、でも、この店が幽霊の店になったのは、僕だけの力じゃないよ……」
「ちょっと、幽霊の店にしないでよー」
「もう、遅いけど……」
「そうしたら張本人は、やっぱり……、ハナ、なのね……」
「僕が来る前から居たからねー、……」
「それなら、もっと出てくればいいのに……」
「そうだね……、でも、彼女の力は、凄いよ、何処へでも飛んでいけるみたいなんだ。僕なんかは、あのジャンダルムの絵の傍からは、離れられない……」
「何やっているのかしら、あの子は……、でも、絵がなくなっちゃったら貴方はどうするの……?」
「……、もちろん、大丈夫……、もう、生まれ変わるから……」
 そう言って、お兄さんは、消えていった……

 夜……、夏子さんの通夜……
 家族葬で……、こぢんまりと開かれ……、静かに終わった。
 夏子さんのお婆ちゃんとお爺さん、そして夏子さんのお姉さん……
 家族三人も静岡から駆けつけて来てくれた。
 後は、お婆さんの兄弟も揃って来てくれた。
お爺さんはアルツハイマー型認知症で、もう夏子さんが分からないようだった。
 そこに、別れた旦那さんがいた……
「キー子、知らせたの……、縁を切ったって言っていたのに……」
「いいのよ……、来るか来ないかは、彼の自由だから……、でも、知らせて、もし来れば、香典の十万円くらい持ってくるでしょう……、それが目当てよ!」
「キー子、だんだん、うちのお母さんに似てきたんじゃないの……?」
「……、そう、分かるー、私の目標よー、何があっても、親よりも、お金の方が頼りになるから……」
「……、キー子、それだけは、やめて……、お母さんが二人いるなんて、私、付いて行けないから……」

 翌日……、告別式……
 こぢんまりとした葬儀のはずだったが、昔の山岳部の人たちが、たくさん集まってくれた……
 夏子さんが亡くなったことを、誰が知らせたのか分からなかったが……
 ただ、山岳部の人たちの携帯電話に、亡くなったことを知らせるメッセージが届いていたという……

 カタリーナのお店は、銀河鉄道だと勉は言った。
 でも私は、もう一度、人生を始めるサザンクロスであって欲しいと思っている。
 それは、死んだ人に限らず、生きている人でも、人生は何度でもやり直せるのだから……、
 生きているうちに、生まれ変われるように……
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