カタリーナのお店の人々

マッシ

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50. カタリーナ発、生まれ変わる道

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(カタリーナ発、生まれ変わる道)

「私、きっとカナのお腹の中から生まれてくるから……」
「……、だから言ったでしょう、私、男、嫌いだから……」
「でも、私、見ていたけど、アキラさんといい感じだったわよ……」
「……、何処で見ていたのよ……、でも、アキラは年下よ……、彼の方が嫌がるわよ……」
「でも、世の中姉さん女房のカップルはたくさんいるわ……」
「いいじゃない、私、応援するわ……、多分、アキラは彼女いないと思うし……、私が独占していたから……」
「……、それも、困った妹ね……、でも、私、男、好きでないし……、何考えているか分からないし……」
「まー、好きにしなさい……、それも生きている特権よ……、すべての道は開かれている……」
「……、それで、ハナ、いつ行っちゃうのよ……?」
「サリーちゃんが帰ってきたら、行くわ……」
「……、そんなに早く……、まだ、絵は完成じゃないでしょう……」
「絵は、このままでいいわ……、完成させちゃうとまた戻ってきてしまいそうだから……、未完の状態がいいのかもしれない……」
「よく見る絵のように、まだ描きかけの途中じゃないって思わせる絵があるでしょう……、未完成に見える方が、創造力を働かせて見ないといけないから、その方がいいのかもしれないわ……、抽象画なんてその最たるものね……」
「……、ピカソとか……?」
「そういう絵もあるってこと……、でも、この絵、私の描いた絵、私を引き込もうとしているから、絵としては完成しているのかもしれないわ……」
「私も半分、描いたけどね……」
「二人の初めての合作ね……、だからいいのかもしれない……、心が繋がっているのよ……、ジョバンニとカンパネルラ、死んだ私と生きてるカナ……、そして私は生まれ変わる……」

 午後四時……、サリーが帰って来た……
「日葵ちゃん……? どうして……」
「……、サリーちゃんを待っていたのよ……、さー、服を脱いで……」
「えー、まだ、あの絵、描くの……?」
「そうよ……、早く、時間がないのよ……」
「もー、日葵ちゃん、そればっかし……」
 もう一つのイーゼルに掛かっていた思春期のサリーの絵とイーゼルごと入れ替えた。
 サリーは、制服を脱いで、私の座っていた椅子を使って、前と同じポーズをとった。
 ハナは、素早く思春期のサリーの中のブラックホールを消して、普通の壁に塗り替えた……
「サリーの絵にブラックホールは要らないのね……」
「そうよ……、ベッドに座っていた過去の自分と、椅子に座っている現在のサリーと、彼女が見ている未来の自分……、でも、現在のサリーには、思春期を思わせるような不安な影はないわ……」
「……、誰よりも美しい完全な肉体と、どんなものでも取り込もうとする貪欲な精神……、さすが、澄姉―の娘だ……、天下無敵、完全無欠の美少女だ……」
「何、それー、どんな絵になったの……?」
 サリーは、椅子から跳び下りて、絵を覗きに来た……
「えー、前と変わらないじゃん……」
「ブラックホールを消して、普通の壁にしたのよ……、サリーちゃんには暗い影は似合わないから……」
「……、えー、じゃ―私……、裸にならなくてもよかったんじゃないの……?」
「そうね……」
「……、えー、……」
「でも、サリーちゃん、これでお別れよ……」
「……、えー、もう行っちゃうの……?」
「そう、サリーちゃんが来るのを待っていたのよ……」
「完全無欠のサリーちゃんの裸を見てから行こうと思って……」
「……、そんな、そんな私、いいものじゃないわよ……」
「天下無敵のサリーちゃん、貴女を慈しむ温かい家庭とカナ、それと友達の奈緒さんにキー子、皆がいて、初めて貴女は輝けるのよ……、それで、どんな困難でも乗り越えられる……」
「……、うん、私もそう思う……、皆がいるから、今の私があるって……、思えるのよ……」
「忘れないでね……、永遠に……、カナをよろしく……」
「……、それは、私のセリフじゃないの……?」
「それもあるかもね……」
 日葵ちゃんは、笑いながら、服を脱いだ……
 服を脱ぎ終わる頃には、日葵ちゃんは、大人のハナに変わっていた……
 サリーは、裸のハナに抱き着いた……
 ハナは、サリーを抱きしめてから、突き放した……
 後ずさりしてくるサリーを私は、抱き寄せた……
 その次の瞬間……、ハナは消えた……
「これで、良かったのよね……」
 今まで、一言もしゃべらなかった奈緒さんが、ぽつりと言った。
 私たちの前には、ハナの悲しそうな裸婦とパジャマを半分描きかけてやめたシースルー状態の私の裸婦が目に入った。
 これで、ちゃんとサザンクロスを通れたのか心配になる。
 この絵は、このまま、イーゼルに掛けたまま、三階に置こうと思った。
 ハナが、この続きを描きに来るのではないかと思って……

「何やっているのよ! 店を開けないで……」
 澄姉―のけたたましい声が二階から聞こえてくる。
「奈緒さん、店を開けて、服を着ているのは奈緒さんだけだから……」
「OK……」

 また変わらない、平凡な日常が続く……
 秋も深まったころ、奈緒さんの家に一本の電話が掛かって来たという……
 その内容は、崖の下の雪渓の中から奈緒さんのお兄さんが発見されたという話だった。
 その姿は、三年の月日を経ても、氷漬けだったせいか、三年前のその姿、そのままだったという……


 おわり

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