底辺男が十歳下の溺愛執着系イケメンホストに買われる話(本編完結済み)

猫と模範囚

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【ショートストーリー三作詰め合わせ】二人のベッドの誘い方

(最終話)澪からのお誘いと後日談





 シャワーを浴びた後、リビングのソファでスマホをいじっていると、澪がそろそろと青山君に近づいてくる。先に寝室へ行っていたのに、青山君が来ないから様子を見にきたようだ。
 少し退屈そうな目をした澪が、勝手に青山君の膝を枕にしてソファに寝そべる。彼のダークブラウンの柔らかな髪をくしゃくしゃとなで、青山君はあえて甘えた声で言った。

「ごめん、あと少しだけ」

 シャワーを浴びている最中に気づいてしまったのだ。スマホゲームのイベント期間が今日で終了することに。
 青山君はさほどゲーム好きというわけではないけど、常になんらかのゲームをスマホにダウンロードして、隙間時間にだらだらとやる習慣がある。澪に言わせると、それは充分ゲーム好きとのことだが。
 今回だってイベント期間だということを忘れていた。うっかり思い出してしまったので、少しやっておかないともったいないような。その程度の熱意で、五分だけ……。そう思っていたのにまだ引き際を見つけられずにいる。

「圭吾くーん、遊びましょー」

 しばらく青山君の膝枕でおとなしく待っていた澪が、ふざけた棒読みで誘ってきた。
 澪は青山君より体温が高い。膝のぬくもりが心地良かった。青山君はスマホから目を離し、寝そべってこちらを見上げる澪に視線を落とす。

 澪を見ているといまだに愕然とする瞬間がある。なんだこの男、顔が良すぎる、と。
 整いすぎて冷徹にすら見える顔立ちなのに、仔猫みたいに可愛い。色素の薄い睫毛の長さと密度、明るい琥珀色の瞳の華やかさが、澪を甘い印象に仕立てていた。ただ呼吸をしながらまばたきしているだけで人の視線を釘付けにできる美貌。
 いつのまにか青山君は、スマホそっちのけで澪をなでまわしていた。澪の小さな頭、ピアスホールだらけの真っ白な耳、まだ少しあどけない唇がくすぐったそうに笑う。

「あー……もう。圭吾君、時間切れでーす」

 澪がするりと青山君の手をかわし身体を起こす。そして青山君をひょいと抱きあげた。
 肩に担がれたことはある。行為の最中に抱えあげられたこともある。でも今回のやり方ははじめてだった。二本の腕で背中と膝裏を支える、いわゆるお姫様抱っこである。
 青山君は己の状況を理解し、ヒェッと色気のない悲鳴をあげた。三十一歳の男がこのシチュエーションはきつすぎる。

「澪!これやだ!」
「でも時間切れだもん。俺のこと待たせすぎたお仕置き」

 このまま寝室まで連行する気らしい。
 中性的な可愛い顔とは裏腹に、澪は意外と腕力がある。華奢でかよわく見えるのは服を着ているときだけだ。野生動物みたいに無駄がなくてしなやかな彼の肉体の堅牢さを、青山君はベッドの中で何度も思い知らされている。
 甘い微笑みを向けられても、青山君はいつもより高い位置の視界におどおどしていた。

「俺そんなに軽くないからな……お前、腰いわすぞ」

 青山君は痩せ型ではあるが、きちんと成人男性の体重だ。しかし澪は危なげなく青山君を持ち上げ、生意気そうにニヤリとする。

「俺の腰の強さ、圭吾君は誰よりもご存知なんじゃないですかぁ」

 クソガキ、と毒づきながらも、青山君は何の抵抗もできない。
 暴れたら落ちるかもしれないので、青山君は渋々ながらも澪の首に腕をまわした。ふふっ、と澪が嬉しそうに笑みをこぼす。

「ねぇ、絶対落とさないから力抜いて」
「いいから早く降ろせ……」

 言い終わらないうちにくちづけられた。明るいリビングルームは、静まり返ると風呂場の換気扇がまわる音が聞こえてくる。日常のど真ん中で、澪の腕に身を委ね、キスに応えることしかできない。柔らかく主導権を奪われる浮遊感。

「……っは……ん」

 青山君はそらした喉を震わせながら澪に縋りついた。
 部屋干ししている洗濯物やダイニングテーブルに出しっぱなしの烏龍茶のペットボトルを視界に入れながら、夜の恋人仕様の濃厚なキスができる澪は豪胆だと思う。あるいはやはり、若いと思う。
 口内を蹂躙されぐったりとする青山君を腕に抱き、澪はケラケラ笑っていた。

「やっぱり力抜けてるほうが軽く感じる。不思議ぃ」

 寝室に辿り着く前に骨抜きにされた青山君はその晩、たいそうしおらしかった。澪が常々好きだと言っている、ベッドでは何もできなくて可愛い青山君である。

 その一週間後の夜。シャワーを浴び終えた青山君は、寝室へ直行せずにまたリビングのソファに寄り道する。スマホを片手になるべくさりげない風を装いながら。
 ほどなくして、先に寝室に行っていた澪がそろそろと様子を見にきた。青山君はソファに座った状態で、澪と目を合わせず無言で待つ。お利口な澪は青山君の要求にすぐ気づいた。

「圭吾君、それ誘ってるの?」
「……誘われるのを待ってんだよ」

 ふ、と唇を笑みで歪ませた澪に、すぐにひょいと抱きげられた。リビングルームの真ん中で今度は青山君からキスをする。互いの吐息のかかる距離で、青山君は笑いをこらえながら白状した。

「アトラクションみたいで楽しい」

 澪がこらえきれずに吹き出す。そして天井を仰ぎ大笑いして寝室まで歩き出した。青山君はそんな澪の頬に手を添え、前を向かせる。

「こらよそ見すんな。安全運転!」
「運転ってもう……俺のこと乗り物扱いじゃん。最近ぜんぜん騎乗位しないくせに」
「お前が俺を乗せたがらねーからだろ」

 言い返している途中で青山君も笑ってしまった。

「ほんと色気ない誘い方」

 ふわりと優しくベッドに降ろされる。青山君は澪に組み敷かれながらも両手を伸ばし、彼を強く抱き寄せた。

「誘ってるのは圭吾君のほうでしょ」
「どっちでもいいよ」

 誘ったのがどちらだろうが、どうせ二人が行き着くところは同じなので。







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