女剣士「私は剣の名家、貴方のような貧民上がりには負けない」俺「どうだろうな」シュッ

道楽時計

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第一話 決闘祭の二人

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―ある士官学校・決闘祭にて―

女剣士「私は剣の名家、貴方のような貧民上がりには負けない」
俺「どうだろうな」シュッ

キンキンキンキン! 
俺「ついていける!」 
女剣士「嘘…!」 

俺(この日の士官学校の決闘祭のために半年、彼女の剣の流派を研究した甲斐があった) 

女剣士「こんな試合、お父様も失望する…」 
女剣士「この私が、貧民の我流剣士なんかに負けるわけには…!」ブワッ 

審判(これは殺す気の一撃だ…!)ゾクッ 

俺(来る、炎刀流奥義・絶炎華!) 
俺「我流奥義、絶炎返し!」カァンッ 

女剣士「う、そ….こんな、ことは…」ドサッ 

審判「しょっ、勝負あり! 決勝戦、俺選手の勝利です!」 
観客「うおおおおおお!」 
 


―二年後―

友「士官学校、最後の決闘祭も大詰めだね」 
友「三年連続俺君の優勝かなあ」 

俺「どうだろうな。イケメンの奴、今年は実家絡みでとんでもない師匠を見つけてたみたいだ」 
俺「俺でも勝てるかどうか…」 

クラスメイト「おい、準決勝戦でイケメンが敗れたぞ!」 
俺「!」 
友「は、はぁ!? 何かの間違いだろ!」 

俺「相手は…」 
クラスメイト「女剣士って奴だよ。去年、決闘祭はベスト8まで勝ち残ってなかったはずだけど…」 

俺「女剣士…!?」 
俺(馬鹿な、あいつは俺に敗北してから士官学校に来なくなったはずだ…) 
俺(てっきりショックで学校を辞めさせてしまったのかと心配していたが…) 


女剣士「ふ、ふふ…やっと、やっと貴方に再戦できる」ニヤ 

俺「ど、どうしたんだ、その身体…」 
俺(酷使しすぎてボロボロ…筋肉がむしろ貧相になっている。明らかなオーバーワークで身体を壊している!) 

女剣士「二年間、貴方が、憎くて憎くて、仕方ありませんでした」 

俺「あれは、正当な決闘で…!」 

女剣士「私は父様の自慢の娘…貴族家の家督を継ぐはずだったのに!」 
女剣士「決闘祭で我流の貧民相手に遅れを取って家の名に泥を塗ったと、家を追い出され…家名を失い…!」 
女剣士「私の全てだった…人生そのものだった、炎刀流の使用さえ禁じられた!」 

俺「そ、そこまで…!」 


女剣士「それもこれも、全てっ! 貴方が、あのような節操のない、卑劣な手段で私を負かしたせいで!」 

俺「ひ、卑劣な手段…?」 

女剣士「貴方は、私の炎刀流の奥義を破るためだけの技を半年掛けて編み出して、切磋し続けていた…!」 
女剣士「あんな、あんな技…! 実力では私が勝っていた! だというのに!」 
女剣士「あまりに陰険…!」 

俺「…相手の技に対応した返し技を使うのが、卑怯だと?」 
女剣士「ここは戦場じゃない! 学生が他の学ぶべきことを蔑ろにして、あんな技を覚えるなんて…!」 

俺「俺は、貴女をそれだけ警戒して…同時に、尊敬していた」 
女剣士「!」 
俺「貴女の家がそれ程厳しいとは知らなかった、申し訳ないことをしたとも思う」 
俺「だが、それ以上世迷言を吐いて失望させないでくれ」 


女剣士「…そうね、貴方と口論をしにしたわけじゃない」スッ 
女剣士「始めましょうか」 

俺「…そんな痛々しい身体で、試合なんてしていたら…取り返しのつかないことになるぞ」 
女剣士「黙れ! 私は、とっくに引き返せないんだよ!」タァン 
俺(以前より遥かに速い!) 

キンキンキンキン! 
キンキンキンキン! 

俺「うぐっ…この立ち回りは!」 
女剣士「どう? 決定打が、全く出せないでしょう?」ニマァ 

女剣士「この二年間…ずっと、ずうっと貴方だけを観察し続けて、貴方だけを想い続けてきたの」 
女剣士「今日この日の立ち合いのために」 
女剣士「どれだけ、この日を恋い焦がれていたか…」ハァハァ 
女剣士「まさか、卑怯とは言わないわよね?」ニコォ 

俺「……」ゾクッ 
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