女剣士「私は剣の名家、貴方のような貧民上がりには負けない」俺「どうだろうな」シュッ

道楽時計

文字の大きさ
3 / 10

第三話 最悪の再会

しおりを挟む
―三年後・王都にて― 
俺「任務を終えました。騎士長様」 
騎士長「うむ、ご苦労だった。思っていたより、ずっと早くに戻ってきてくれるね、キミは」ニイ 

騎士長 「さすがは士官学校、決闘祭三年連続優勝の快挙を果たした男だ」 
騎士長「私でも、優勝は二年時に一度だけだったよ」 
俺「……」 

騎士長「…ふうむ、キミは影があるね」 
俺「すいません、決闘祭には苦い思い出があって」 
騎士長「ほう?」 
俺「…三年たった今でも、行方不明のままなんです。決勝戦の相手が」 

騎士長「……」 
騎士長「…そうか、キミがいつも探しているのはその女か」

―― 

騎士長「こんな遅くに出歩くな! 早く戻れ!」 
街人「す、すいません!」 

俺「…出歩く人は減りませんね。本当に、危うい事態なのに」 
騎士長「真剣に罰金でも課すべきだろうか」ハァ 

ドサッ… 

騎士長「…何の音だ?」 
俺「俺が確認します」サッ 
騎士長「馬鹿者、不用意に逸れるな!」 

女剣士「禁魔流・羅刹」ガシュッ 
騎士長「がっ!」 

女剣士「あら…外れた。心臓を不意打ちで貫く技なのに」 
女剣士「でも、その外傷じゃ無駄! 天道貫!」ザスッ 
騎士長「あ、あ、あ…」ドサッ 

女剣士「フ、フフ、首の神経を削ったわ。これで貴女ももう、動けないお人形さん」 


俺「き、騎士長様!」 
女剣士「…せっかくの再開なのに、他の女の名前を呼ぶの?」ペロ 
俺「なぜ、なぜだ女剣士! お前っ…!」 

女剣士「あれから三年…ずっと、ずっと、ずっとずっと貴方が憎くて仕方なかった」 
女剣士「ただ、ずっと貴方のことを考えていた」 
女剣士「起きているときも、寝ているときも、鍛錬のときも、ずっと、ずっと…」 

俺「女剣士、お前…」 

女剣士「貴方への憎しみを忘れないために、毒を呑んで喉を潰して、身体を焼いて、その痛みが貴方のせいだってずっと言い聞かせてたの」ハァハァ 
女剣士「他の生き方を選べないように、人だってこんなに殺したの! 見て、これぜぇんぶ、貴方のせいなの!」ジャラッ 

俺(首飾りにした、脊髄の一部…)ゾッ 


女剣士「羅刹! 羅刹!」ガシュッ、ガシュッ 

俺「そんな不意打ち前提の技が当たるか!」ガンッ、ガンッ 
ザクッ 
俺(防ぎきれなかった…横っ腹、持っていかれた…)ガハッ 

女剣士「ああ、あら、ごめんなさい、貴方の身体に傷をつけるつもりはなかったのに」ペロッ 
俺(俺の血を、美味そうに舐めてやがる…)ゾッ 
女剣士「貴方、私が思っていた程強くはなかったのね」シュッ 
女剣士「手足落としで達磨にして、ずぅっと、生涯愛してあげるわ」ハァハァ 

俺(不意打ちとはいえ、騎士長に致命傷を与えた剣の腕は、明らかに俺より数段上だ!) 
俺(こいつは狂ってるが、俺と覚悟が違う!) 


女剣士「フフ、フフフフ、アハハハハ!」 

俺「…ずっと、あれからお前のことを考えていた」 

女剣士「あら、愛の告白? 嬉しいわねぇ」 

俺「止めてやれなくて、悪かった」 
俺「俺も、覚悟をする」 
俺「被害者のためにも、騎士長ためにも、お前のためにも……ここで絶対に、お前を殺す!」 

女剣士「その構え…」 

俺「…我流奥義・虎牙閃」スッ 


女剣士「わざわざその技を仕掛けて来るなんてね」 
女剣士「愛している貴方のことなら…私、なんでも知っているのよ」ペロッ 

女剣士(とはいえ、猫崩しへの変化は、見てからは対応できない) 
女剣士(勝負するなら、二分の一に賭けることになる) 
女剣士(技量で勝ってる私は、下がって守りに徹して、この剣技の相手をしないのが正解だけど…) 

女剣士「アハ、いいわ、乗ってあげる! 貴方の覚悟、逃げずに受け止めてあげる! 貴方と私、賭けに負けた方が死ぬことになるわ!」 


女剣士(あの人の性格上……一度猫崩しを見せている以上、ここはそのまま虎牙閃で突っ込んでくるはず…!) 

俺「……」シュッ 

女剣士(ほら来た! ここまで来て姿勢を変えていないということは、猫崩しに変化する気がないということっ!)ググッ 

女剣士(なぜなら、ここまで来てしまったら、私の剣を避けられないから!) 
ザシュッ 

女剣士「アハ、私の勝ち……このまま追撃で……!」スカッ 
女剣士「え……?」 

俺「……猫崩し」ザクッ 

女剣士(確実に猫崩しを通すために、わざと私の攻撃を受けるまで引き付けてから変化した……?) 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

処理中です...