女剣士「私は剣の名家、貴方のような貧民上がりには負けない」俺「どうだろうな」シュッ

道楽時計

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最終話 終わらない愛

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魔王「我が、我が滅びるわけがない!」ゼェゼェ
魔王「我は千年生き続けた魔物の王なり!」
魔王「滅びるのは貴様ら人族だ!」

女勇者「長く生き続けただけあって、さすがにしぶといね」ゼェゼェ
女勇者「でも、すぐに楽にしてあげるよ」
女勇者「闇の衣も、随分と薄くなったじゃないか」
女勇者「その光が、お前の命の灯火なんだろう?」

魔王「な、なにをしておるのだ女剣士! そんなただの人間、すぐに捻り殺してしまえ!」
魔王「早く我の、補佐をしろぉっ!」

女勇者「急かさないであげてくれよ」
女勇者「俺さんには、しっかりあの子との件に決着をつけてもらわないといけないからね」
女勇者「これから俺さんと人生を歩むのは、あの子じゃなくてボクなんだから」

女勇者(きっちりとケジメをつけて、ゴブリンパウダーを断って……それからようやく、ボクのことをちゃんと見てもらえるようになるんだ)



俺「うおおおおっ!」ザシュッ

女剣士「アハ、アハハハハ……」ドクドク

俺(胸部をかなり深く斬った)
俺(魔人の身体とはいえ、さすがに……!)

女剣士「斬られる度に、貴方の愛を感じる……」
俺「!」
女剣士「私の愛も、受け取ってぇっ!」

ズシュッ
ザシュッ

俺(左耳と、左肩が……!)

キンキンキィン

俺(あっさり斬らせてくれたわけだ。魔人の身体が、予想以上にタフ過ぎる)ゼェゼェ
俺(ゴブリンパウダーで痛覚が麻痺してなかったら、追撃でまず殺されてた……)

女剣士「アハァッ!」


俺(頼む……)
俺(この戦いで、死んだっていい)
俺(だから……この試合だけは勝たせてくれ!)

シュンッ
ズシュッ

女剣士「凄い、凄い、凄い……今の私が、貴方の剣に追いつけない」
女剣士「やっぱり貴方は、本物の天才だった」

俺「ゴブリンパウダーを、減らさなくてよかった」ボソッ

俺(女勇者の言う通りだ。地下闘技場に落ちてから、俺を支えていた強さの一端は間違いなくゴブリンパウダーだった)
俺(今の俺は……ゴブリンパウダーと脳内麻薬の興奮作用と痛み止めが、ぐちゃぐちゃに混ざってるみたいだ)
俺(全身どころか、まるで辺り一帯の空間中が俺の目になったみたいだ)


キィンキンキンッ

俺(今まで見た何より速いはずの女剣士の動きが、遅く見える)
俺(脳の処理に、身体が追い付かないのが口惜しいくらい)

俺(頭が凄い熱くて、それが恐ろしく気持ちいい)
俺(きっと俺の脳は、この戦いが終わったらダメになっちまう)

俺(だが、今の俺なら、女勇者にだって勝てそうだ)

ザクッ、ズシュッ、バシュッ
ザシュッ、ザシュッ

女剣士「あ、ああ、あああっ!」ハァハァ

ザクッ、ザクッ

女剣士「もっと……もっともっと、私を壊して!」ハァハァ
女剣士「もっともっと、もっともっともっともっと!」ハァハァ


ザンッ

俺(剣を持つ手を落としたっ!)

女剣士「ウフ、ウフフフ……さすが、貴方ね」ハァハァ
女剣士「まだ、終わりじゃないでしょ?」シュンッ

俺(爪で戦うつもりか?)

俺「ああっ! 今日は最後までやってやる!」

キンキンキンキンキンキンキンキンキン
キンキンキンキンキンキンキンキンキン


ガシュッ

女剣士「貴方の利き腕、もらっちゃった。ウフ、ウフフフ」ハァハァ
俺「……くれてやったんだ。お前にな」

ドシュッ、ドシュッ

女剣士「あ……両腕、なくなっちゃった、あ、ああ……」ヨロッ

俺「これで終わりだ」ドスッ
女剣士「…………あ、ああ、心臓……魔族は……」バタッ

俺「終わった……これで、ようやく」ヨロッ
俺「愛してるよ……女剣士……ずっと、ずっと」ギュッ



魔王「女剣士が、敗れたのか……?」

女勇者「よかった……俺さん」ホッ

魔王「ま、まさか、まさか……」
魔王「最高位の魔人となった女剣士が、ただの人間に……?」
魔王「こんな、こんなことが……」ワナワナ

魔王「我が、我が、敗れるのか……?」
女勇者「よそ見してる場合かいっ!」シュンッ

魔王「う、うおおおおっ! 来るなああああっ!」

ザシュッザシュッ

女勇者「うぐっ……! し、しくじっちゃったか」
女勇者「大丈夫……まだまだ戦える。向こうも決着はついたんだし、すぐにこいつを殺す……!」



魔王「うおおおおおおおおっ! うあああああああっ!」バッ

女勇者「に、逃げるつもりかっ!」
女勇者(いや、違うっ!)ゾッ

女勇者「逃げて俺さんっ! 魔王は、キミを殺すつもりだ!」ダッ

魔王「ただの人間如きが、世界の代行者たるこの偉大なる我の邪魔をするなあああああっ!」シュウウウン

俺「なっ!」
俺(身体が……身体が、もう、動かない)
俺(限界を何周も超えてたんだ……)

俺「悪い、女勇者……俺は、ここまで……」


魔王「死ねええええええええいっ!」
魔王「我が暗黒魔法、至近距離から受けるがいい!」

俺「……っ」

ドゴオオオオオオオオンッ!

俺「…………」
俺「俺……生き、てる?」

女勇者「ごめ、んね……キミ」ドサッ

俺「おっ、女勇者っ! そんな、俺を庇って……!」

女勇者「ボク……約束守って、あげられないみたい」ニコッ


女勇者「フフ……みんな、ボクのことを知ったら馬鹿にするのかな」
女勇者「魔王を倒して、世界を救えるところだったのに……」
女勇者「ボクはそんなことより、キミ一人を助ける方がずっと大事だと思っちゃったんだ」

俺「お、女勇者……」

女勇者「おかしいよね」
女勇者「これで、これからも魔物が蔓延って沢山の人が苦しみ続けることになったのに……」
女勇者「ボクはそんなことより、キミがこれからどうなるのか、そのことばかりが頭の中でいっぱいなんだ」

女勇者「ごめんね……キミの隣にいられなくて」
女勇者「愛してたよ……凄く、誰よりも、何よりも」ガクッ

俺「う、嘘だよな……そんな……」


魔王「馬鹿な小娘め……だから人間であることが枷になると言ったのだ」ゼェゼェ
魔王「ク、ククク、情夫など雇うからこうなる」

魔王「最後に生き残るのはやはりこの我であった! フハハハハ!」
魔王「やったわい! 女神の奴を出し抜いてやった!」

俺(動け……俺の身体!)
俺(女勇者の想いを、旅路を、生き様を、無駄にするな!)スクッ

俺「うおおおおおおおっ!」
ザンッ

魔王「ハッ、神紋のない貴様には我を傷つけることなど叶わぬわ!」


魔王「すぐに楽にしてや……」

シュウウン

魔王「これは……」
魔王「闇の衣が、剥がれた……? 女勇者を殺したときに、我の魔力が尽きたというのか?」

俺「行くぞっ!」

魔王「止めろっ! そ、そうだ、世界の半分をお前にやろう! だからっ……!」

俺「死にやがれェッ!」

ザシュッ

魔王「あ、ああ……我が、我が、こんな、ただの人間に……! 勇者を凌いだというのに、馬鹿な……!」ドサッ


俺「女勇者……」ヨロッ
俺「なぁ、女勇者……お願いだ、目を覚ましてくれよ……」

俺「魔王……倒したよ。全部、女勇者のお陰なんだ」

俺「俺さ……結婚しようって言われて、本当に嬉しかったんだ」
俺「もう、まともに生きられることなんてないと思っていたから……」

俺「なのに、なのに、こんな……あ、ああ、あああ……」

「う、うう、あ……」

俺「え、まだ、生きて……?」


―一年後―


俺「……獣の皮、金に換えてくれ」

村人A「あ、ああ。旦那、よく隻腕でそんな大熊を狩れるね」
村人A「これ、金だよ。ほら」

俺「……」コクッ
タッタッタッタッタ

村人B「あいつ、頭が麻薬で駄目になってんだ。金なんて誤魔化してやればよかったのに」

村人A「そ、そういうわけにもいかねぇだろ」



俺(あのとき……女剣士が言い掛けていた言葉……)

女剣士『…………あ、ああ、心臓……魔族は…』

俺(あれは、魔族の心臓は二つある、ということだった)

俺(あの日、魔王を討伐した俺は女勇者を埋葬し……)
俺(四肢のなくなった女剣士を連れ帰って、山奥の小屋でひっそりと彼女と暮らしている)ギィ

俺「ただいま」

女剣士「あ、ああ……貴方……貴方……」

俺「愛してるよ、女剣士。……もう、どこにも逃がさないからな」ギュウッ
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感想 3

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みんなの感想(3件)

まろ
2019.12.07 まろ

女勇者待ってるぞ マジで期待してるからな

解除
Jupiter
2019.11.29 Jupiter

まず、根本的な指摘をしておくとなんJでのスレにあった騎士Aが消えているため騎士BCDがいきなり表れては消えている不可思議な状況になっています。また、3話では、俺が猫崩しを使用しているのに女剣士は猫崩れと触れているのも初歩的なミスでしょう。内容以前のミスなので修正すれば事足りますが念のため。
ストーリーラインは非常に良かったと思います。キャラクターの心理状態が分かりやすく、そのため行動に対する動機が理解しやすい説得力のあるものになっていると思います。
ただし、魔王や女勇者など主要以外のキャラクターに関しては、短編とはいえ唐突な印象を受けました。特に魔王に関しては世界を揺るがす存在であるはずなのに特に言及もされておらず不自然です。例えば、初期の学校を魔王やそれに準ずる「敵」存在の討伐を目指す場所としてやるなど、字数を圧迫しないで序盤から匂わせるだけでも唐突さは消えると思いました。
表現技法について、攻撃した/された描写は欠損描写は簡潔でよいと思うのですが「キンキンキン」と言った効果音に関しては稚拙な印象も受けました。一人称視点での戦いの描写に力を入れ、効果音に頼りすぎないようにするとよいと思います。
ラストについては賛否両論あるものでしょうが個人的には嫌いではありません
総合的にはとても楽しく読ませていただきました。
最後に、女勇者√も書いてください。

解除
世界ひろし
2019.11.28 世界ひろし

凄く面白いです

解除

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