女剣士「私は剣の名家、貴方のような貧民上がりには負けない」俺「どうだろうな」シュッ

道楽時計

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第九話 魔王城

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―魔王城―

魔王「……ふむ、また来たのか」

魔王「まさかこの魔物の王たる我が、たった一人の人間を警戒せねばならんとはな」
魔王「おのれ、神紋の女神め……」チッ

俺(あれが、魔王……)ゴクリ
俺(千年に渡り、魔物を生み出し続けてきた怪人)

俺(かつて万の兵が魔王を倒すべく送られたというが、道中の魔物に滅ぼされ、一人として魔王の元まで辿り着くことができなかったという)
俺(俺は、そいつの前まで来たというのか)

魔王「なんだ……? 神紋を持たぬ、ただの人間が紛れているではないか」
魔王「神紋なくば、我が魔法も、闇の衣も退けることが叶わぬぞ」ハンッ

魔王「場違いな虫けらめ。まずは貴様から消してやろう」

俺(こんな奴相手に、本当に俺なんかの剣が通用するのか……?)ゾッ

女勇者「わかっているだろう? キミは、あいつの相手をしなくていいよ」


魔王「クク……勇者とて、所詮は人間か。一人が寂しく、情夫を雇ったとはな!」カカカ

女勇者「彼は、必要な人材だった。それだけだ」

魔王「建前に過ぎぬな。我が魔眼は、嘘を見抜くぞ」
魔王「貴様ら……通じておるな」ククッ

女勇者「なっ!」

魔王「女神も人選を誤ったものよ。如何に強大な力を持とうと、人間であることが枷となる」
魔王「やはりその男から消し飛ばしてくれるわ!」


魔王「何発避けられるか見物だな!」シュウウウン

俺「あの光は……!」
女勇者「く、来る! 魔弾だ! 一か所に留まるな!」

スッ

女剣士「…………」

俺「お、女剣士……!」
俺(顔は青色になって、髪は白くなっている……)
俺(背には禍々しい翼があり、獣のような爪と牙……)

俺(本当に……人間を辞めてしまったのか)グッ


魔王「そこに立つな、魔法の邪魔だ」
女剣士「……あの男の相手は、私に任せてください」

魔王「あんな雑魚はどうでもよかろう。それより、勇者の方を……」

シュンッ
ガッ

魔王「……その剣では、闇の衣のある我は斬れぬぞ」
女剣士「魔力が尽きるまで斬ってもいいのですが」

魔王「チッ、好きにするがいい。そいつが因縁の男か。早く終わらせるのだぞ」

俺(今の剣……全く見えなかった。人間の頃とは段違いだ)
俺(だが、やるしかない)
俺(俺は……今度こそ、もう逃げない!)シュッ



キィンッ キィンッ
ガッ

女勇者「剣の方はあまり得意じゃないみたいだね」
女勇者「速いけど、技術自体はボクの俺さんとどっこいどっこいってところか」

魔王「黙れ小娘が!」シュウウウ

タンッ

女勇者「剣士の目の前で魔法なんて、間に合うわけないだろ?」
魔王「うぐっ!」

ズパッ

魔王「ガハッ! こ、小娘がァ!」

女勇者「どうしたんだい?」
女勇者「あの子達より、ボク達の方が先に決着が着きそうだよ」

魔王「女神め……勇者め……!」ゼェゼェ


俺「……ずっと、会いたかった」
俺「ごめんな……あの日、とどめを刺してやれなくて」

女剣士「…………」
女剣士「……今度こそ、殺してくれるの?」

俺「ああ」
俺「愛してるよ、女剣士」

女剣士「…………」

俺「人生最高の試合にしよう」シュッ


シュッ、シュンッ
シュッ

ドガッ!

俺(防戦一方……!)キィン
俺(女勇者が、魔王と同時に相手取れないと判断したわけだ)
俺(女剣士と魔王に前衛と後衛を分けられたら、如何にあの子でも手数が足りなすぎる)

女剣士「どうしたの? 私を殺すんじゃなかったの?」
女剣士「ねぇ、早く殺してよ」
女剣士「貴方の剣で、私を突き刺してよ」シュンッ

俺「ぐっ!」カァン


女剣士「早く早く早く早く」

キンキンキンキンンキンッ

俺(剣が、速すぎる……!)

女剣士「早く早く早く早く早く早く早く早く」

俺(人間の限界を、二回りは超えている!)

女剣士「早く早く早く早く早く早く早く早く」
女剣士「早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く」

キンキンキンキンンキンッ
キンキンキンキンンキンッ

ザシュッ

女剣士「あ、がはっ!」

俺「言われなくてもだ!」ゼェゼェ

女剣士「アハ……痛い。血が流れてる。まともな傷を負ったのなんて、もう随分と久し振りみたい」
女剣士「痛いのが、すっごく気持ちいい」ペロ
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