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せっかくの咲夜との買い物。気合いを入れてオシャレして、めっきり遠のいていたヒールも頑張って履いてみて。咲夜の横を少し緊張しながらも、幸せいっぱいに歩いていたはずなのに...。くるみが去った後、どんな距離感で話していたのか、急にわからなくなってしまった。
咲夜とくるみが接触したことがそんなに嫌だったのか。自分の心の狭さに少しだけショックを受ける。チラッと横目で見た咲夜は、何事も無かったかのように、振舞っていた。あれが可愛い、これが似合いそうだと、声をかけてくれるものの、先程のくるみとの会話が耳に残って邪魔をする。
「瀬津、もしかして疲れた?カフェ入ろうか。休憩しよう。」
中学の頃には入ったこともないような、オシャレなカフェを指差し、咲夜が瀬津の手を握った。向かうカフェの周辺は、そこのロゴの入った容器を持つ人で賑わっていた。よく見ると、今来た道を歩く人は当たり前のように持っているカップだった。持っていない方が目立ってしまうのではないかと、気付いた途端、不安になった。
咲夜は列に並び、自分の番が来ると慣れた口調でコーヒーを2つ、購入した。
受渡し口で頼んだコーヒーを受け取り、「こっちだよ。」と瀬津を席の方まで誘導する。咲夜はここによく来ているのだろうか?
まるで住む世界が違うのではないかと思うほど、綺麗でオシャレなカフェの空間に、飲まれそうになる。
「はい、これ。瀬津の分な。女の子が好きなのってなんなのかわかんなかったから、気に入るかわかんないけど。姉貴がよく頼む感じで頼んでみた。」
「ありがとう。あの...お金......」
「いいよいいよ。今日は買ってあげるって言ってただろ?」
戸惑う瀬津に、咲夜はいつもの爽やかな笑顔で手を横に振った。こういうとこサラッと出来るのが本当にすごいと思う。
受け取ったカップには、壁のポスターや入口のメニュー看板で目に入ったものと同じものが入っていた。赤く目立つ字で『𝑵𝑬𝑾』と書かれたそれは、ドーム型の蓋の下にたっぷりのクリーム。そして艶のあるソースがかかっている。瀬津のよく知っているコーヒーとはまるで別物だ。
「これ...食べるの?飲むの...??」
戸惑う瀬津を他所に、咲夜は何食わぬ顔でカップに口をつけていた。咲夜の方は平らな蓋に、小さな飲み口。そっちの形ならファストフードで飲んだことあるんだけどな...。
「普通にストローで飲むんだよ。最後にクリーム残ると飲みにくいから、少しずつ混ぜながら飲んでみて。今季の新作なんだって。」
恐る恐るストローに口をつける。優しい甘みの中にほのかに苦味を感じる。ストローで少し混ぜながら、飲むとクリームやソースが混ざってまた違う味になった。夢中になり、咲夜と会話をすることも忘れ、飲み進める。
咲夜はそんな瀬津の姿を、ただただ見つめていた。
「美味しいね。」
思い出したように、瀬津が顔を上げ、咲夜の方を向く。咲夜は何が面白かったのか、クスクスと笑い始めた。
「どうしたの?」
堪らず、声をかける。笑い続ける咲夜は、目に涙を浮かべ、まだ笑いの引っ込むことの無いうちに、涙を拭った。
「いや、喜んでもらえてよかったなーって思って。あんまり夢中で飲んでるから、可愛くってつい...」
そう言うと、咲夜はまた堪えきれずクスクスと笑いを零した。...そんなに面白いことしたかな?もしかして飲み方が違った...??
不安になり、まだクリームを合わせて半分ほど残っているカップの中身を、ストローを使ってぐるぐると混ぜた。
咲夜とくるみが接触したことがそんなに嫌だったのか。自分の心の狭さに少しだけショックを受ける。チラッと横目で見た咲夜は、何事も無かったかのように、振舞っていた。あれが可愛い、これが似合いそうだと、声をかけてくれるものの、先程のくるみとの会話が耳に残って邪魔をする。
「瀬津、もしかして疲れた?カフェ入ろうか。休憩しよう。」
中学の頃には入ったこともないような、オシャレなカフェを指差し、咲夜が瀬津の手を握った。向かうカフェの周辺は、そこのロゴの入った容器を持つ人で賑わっていた。よく見ると、今来た道を歩く人は当たり前のように持っているカップだった。持っていない方が目立ってしまうのではないかと、気付いた途端、不安になった。
咲夜は列に並び、自分の番が来ると慣れた口調でコーヒーを2つ、購入した。
受渡し口で頼んだコーヒーを受け取り、「こっちだよ。」と瀬津を席の方まで誘導する。咲夜はここによく来ているのだろうか?
まるで住む世界が違うのではないかと思うほど、綺麗でオシャレなカフェの空間に、飲まれそうになる。
「はい、これ。瀬津の分な。女の子が好きなのってなんなのかわかんなかったから、気に入るかわかんないけど。姉貴がよく頼む感じで頼んでみた。」
「ありがとう。あの...お金......」
「いいよいいよ。今日は買ってあげるって言ってただろ?」
戸惑う瀬津に、咲夜はいつもの爽やかな笑顔で手を横に振った。こういうとこサラッと出来るのが本当にすごいと思う。
受け取ったカップには、壁のポスターや入口のメニュー看板で目に入ったものと同じものが入っていた。赤く目立つ字で『𝑵𝑬𝑾』と書かれたそれは、ドーム型の蓋の下にたっぷりのクリーム。そして艶のあるソースがかかっている。瀬津のよく知っているコーヒーとはまるで別物だ。
「これ...食べるの?飲むの...??」
戸惑う瀬津を他所に、咲夜は何食わぬ顔でカップに口をつけていた。咲夜の方は平らな蓋に、小さな飲み口。そっちの形ならファストフードで飲んだことあるんだけどな...。
「普通にストローで飲むんだよ。最後にクリーム残ると飲みにくいから、少しずつ混ぜながら飲んでみて。今季の新作なんだって。」
恐る恐るストローに口をつける。優しい甘みの中にほのかに苦味を感じる。ストローで少し混ぜながら、飲むとクリームやソースが混ざってまた違う味になった。夢中になり、咲夜と会話をすることも忘れ、飲み進める。
咲夜はそんな瀬津の姿を、ただただ見つめていた。
「美味しいね。」
思い出したように、瀬津が顔を上げ、咲夜の方を向く。咲夜は何が面白かったのか、クスクスと笑い始めた。
「どうしたの?」
堪らず、声をかける。笑い続ける咲夜は、目に涙を浮かべ、まだ笑いの引っ込むことの無いうちに、涙を拭った。
「いや、喜んでもらえてよかったなーって思って。あんまり夢中で飲んでるから、可愛くってつい...」
そう言うと、咲夜はまた堪えきれずクスクスと笑いを零した。...そんなに面白いことしたかな?もしかして飲み方が違った...??
不安になり、まだクリームを合わせて半分ほど残っているカップの中身を、ストローを使ってぐるぐると混ぜた。
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