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王太子への即位を目前に控えたセシル様の執務室。
そこには、いつもの理知的な輝きを少しだけ曇らせ、眉間に深い皺を刻んだセシル様の姿がありました。
「……セシル様。三行で今の状況を嘆きなさいな」
私が部屋に入るなりそう告げると、彼は重い溜息と共に顔を上げました。
「一つ、隣国ルーベル王国が我が国への『魔石』の輸出を全面的に停止した」
「二つ、そのせいで王都の夜を彩る魔導灯や、貴族たちが使う美顔器の魔力が枯渇し始めている」
「三つ、この嫌がらせの主導者が、あのクラリス王女の父であるベリアル公爵だと判明した。……ノノカ、笑い事ではないぞ」
「あら、笑っておりますわよ。あまりに相手のやり口が『美しくない』ものですから」
私はセシル様のデスクに歩み寄り、その眉間の皺を指先でそっと押し広げました。
「見てください。そんな悩み事で眉間に皺を作って。せっかくの至宝にヒビが入ったら、ベリアル公爵の首を撥ねても償いきれませんわよ」
「……あいにく、ベリアル公爵は私の美貌など微塵も気にしていないようだ。彼は我が国の即位儀礼を妨害し、不平等な通商条約を結ばせるのが目的らしい」
私は扇を広げ、不敵な笑みを浮かべました。
「魔石の輸出停止……。それはつまり、私が愛用している『超音波振動式・毛穴洗浄機』が使えなくなるということかしら?」
「……おそらく、そうなるだろうな」
「許せませんわ」
私は部屋の壁に掛けられたルーベル王国の地図を、鋭い眼差しで射抜きました。
「三行で私の決意を述べますわね」
「……聞こう。嫌な予感しかしないが」
「一つ、私の美肌を人質に取るような卑劣な輩は、地獄の果てまで追い詰めますわ」
「二つ、クラリス王女を甘やかして増長させたベリアル公爵とやらの『面の皮』、一度剥いで差し上げる必要がありますわね」
「三つ、というわけでセシル様。私、これからルーベル王国へ『美的殴り込み』に行って参りますわ」
「……殴り込み? 一人でか? 正気か、ノノカ」
セシル様が椅子を蹴って立ち上がりました。
「一人ではありませんわ。腕利きの美容師と、父が貸してくれた屈強な(そして顔の整った)私兵たちを連れて行きます」
「そういう問題ではない! 敵地だぞ。ベリアル公爵は残忍で、美学など欠片も持たない男だ」
「だからこそ行くのですわ。美学のない男が振るう暴力ほど、見苦しいものはありませんもの。私が直々に『美しき正義』というものを叩き込んで差し上げますわ」
私はセシル様の胸元に手を置き、その銀色の瞳をじっと見つめました。
「セシル様。あなたはここで、誰よりも美しく、堂々と即位の準備を進めていてくださいな。泥仕事……いえ、ドブ板掃除は、あなたの専属コンサルタントである私の役目ですわ」
セシル様はしばらく沈黙していましたが、やがて諦めたように私の手を握り返しました。
「……分かった。ただし、三日だ。三日で戻らなければ、私は全軍を率いてルーベル王国を更地にしに行く。……その時は、私の顔がどれほど怒りで歪んでいても、文句は言うなよ」
「あら、怒れるセシル様も、きっと140点くらいの破壊力がありますわ。楽しみにしておりますわね」
私は彼に軽い口づけを贈るふりをして、耳元で囁きました。
「……帰ってきたら、最高に潤った肌で抱きしめていただきますわよ」
セシル様が顔を真っ赤にするのを背中で感じながら、私は颯爽と執務室を後にしました。
待っていなさい、ベリアル公爵。
私の美容ライフを邪魔した罪、その『美しくない魂』ごと、徹底的に浄化して差し上げますわ!
そこには、いつもの理知的な輝きを少しだけ曇らせ、眉間に深い皺を刻んだセシル様の姿がありました。
「……セシル様。三行で今の状況を嘆きなさいな」
私が部屋に入るなりそう告げると、彼は重い溜息と共に顔を上げました。
「一つ、隣国ルーベル王国が我が国への『魔石』の輸出を全面的に停止した」
「二つ、そのせいで王都の夜を彩る魔導灯や、貴族たちが使う美顔器の魔力が枯渇し始めている」
「三つ、この嫌がらせの主導者が、あのクラリス王女の父であるベリアル公爵だと判明した。……ノノカ、笑い事ではないぞ」
「あら、笑っておりますわよ。あまりに相手のやり口が『美しくない』ものですから」
私はセシル様のデスクに歩み寄り、その眉間の皺を指先でそっと押し広げました。
「見てください。そんな悩み事で眉間に皺を作って。せっかくの至宝にヒビが入ったら、ベリアル公爵の首を撥ねても償いきれませんわよ」
「……あいにく、ベリアル公爵は私の美貌など微塵も気にしていないようだ。彼は我が国の即位儀礼を妨害し、不平等な通商条約を結ばせるのが目的らしい」
私は扇を広げ、不敵な笑みを浮かべました。
「魔石の輸出停止……。それはつまり、私が愛用している『超音波振動式・毛穴洗浄機』が使えなくなるということかしら?」
「……おそらく、そうなるだろうな」
「許せませんわ」
私は部屋の壁に掛けられたルーベル王国の地図を、鋭い眼差しで射抜きました。
「三行で私の決意を述べますわね」
「……聞こう。嫌な予感しかしないが」
「一つ、私の美肌を人質に取るような卑劣な輩は、地獄の果てまで追い詰めますわ」
「二つ、クラリス王女を甘やかして増長させたベリアル公爵とやらの『面の皮』、一度剥いで差し上げる必要がありますわね」
「三つ、というわけでセシル様。私、これからルーベル王国へ『美的殴り込み』に行って参りますわ」
「……殴り込み? 一人でか? 正気か、ノノカ」
セシル様が椅子を蹴って立ち上がりました。
「一人ではありませんわ。腕利きの美容師と、父が貸してくれた屈強な(そして顔の整った)私兵たちを連れて行きます」
「そういう問題ではない! 敵地だぞ。ベリアル公爵は残忍で、美学など欠片も持たない男だ」
「だからこそ行くのですわ。美学のない男が振るう暴力ほど、見苦しいものはありませんもの。私が直々に『美しき正義』というものを叩き込んで差し上げますわ」
私はセシル様の胸元に手を置き、その銀色の瞳をじっと見つめました。
「セシル様。あなたはここで、誰よりも美しく、堂々と即位の準備を進めていてくださいな。泥仕事……いえ、ドブ板掃除は、あなたの専属コンサルタントである私の役目ですわ」
セシル様はしばらく沈黙していましたが、やがて諦めたように私の手を握り返しました。
「……分かった。ただし、三日だ。三日で戻らなければ、私は全軍を率いてルーベル王国を更地にしに行く。……その時は、私の顔がどれほど怒りで歪んでいても、文句は言うなよ」
「あら、怒れるセシル様も、きっと140点くらいの破壊力がありますわ。楽しみにしておりますわね」
私は彼に軽い口づけを贈るふりをして、耳元で囁きました。
「……帰ってきたら、最高に潤った肌で抱きしめていただきますわよ」
セシル様が顔を真っ赤にするのを背中で感じながら、私は颯爽と執務室を後にしました。
待っていなさい、ベリアル公爵。
私の美容ライフを邪魔した罪、その『美しくない魂』ごと、徹底的に浄化して差し上げますわ!
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