お前の不敬には愛想が尽きた!と婚約破棄されましたが、これ幸い!

ちゃっぴー

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王都へと帰還した翌朝。私はアスタール公爵邸の自室で、割れんばかりの悲鳴を上げた。

「……な、なんですの、これは……っ!? 鏡の精霊がストライキでも起こしたのかしら!」

私の悲鳴を聞きつけ、アンと、なぜか朝から我が家を訪れていたセシル様が部屋に飛び込んできた。

「ノノカ! どうした、呪いの影響が出たのか!?」

セシル様が血相を変えて私の肩を掴む。私は絶望に打ちひしがれ、鏡を指差した。

「セシル様、見てください! 私の顔……私の顔が、大変なことになっていますわ!」

セシル様は、穴が開くほど私の顔を見つめた。……数秒後、彼は拍子抜けしたように息を吐いた。

「……何だ、特に変わっていないではないか。老婆のようになると聞いていたが、相変わらず……いや、いつも通り美しいぞ」

「何をおっしゃいますの! 三行で今の私の絶望を説明しますわね!」

「……あぁ、落ち着いてからにしてくれ」

「一つ、私の鼻筋が昨日より0.5ミリほど『謙虚』になっていますわ!」

「二つ、肌の透明感が『清流』から『公園の噴水』レベルにまで落ち込んでいますの!」

「三つ、要するに……今の私は、ただの『普通に綺麗な令嬢』になってしまっていますわ! これは悪口を言われるより、ずっと、ずっと酷いことですわよ!」

私はベッドに倒れ込み、枕を叩いた。

クラリス王女の呪いは、私を醜くするのではなく、私の「突出した美」を削り取り、平凡な枠に押し込めるという、極めて陰湿なものだったのだ。

「……ノノカ。貴様、本気で言っているのか? 私には、昨日と全く変わらず、私の心を乱すほど魅力的に見えるのだが」

セシル様が困惑したように私の隣に座り、そっと髪を撫でてくれる。

「セシル様は、私のことが好きすぎて目が曇っているんですわ。……あぁ、鏡を見るのが苦痛です。このままでは、私は『エキストラ令嬢A』として歴史の闇に消えてしまいますわ……」

「……そんなことはさせない。貴様が自分の美しさに自信を失っているのなら、私が、国中の人間に貴様が世界一であることを認めさせればいいだけの話だ」

セシル様の銀色の瞳に、静かだが激しい熱が宿った。

「セシル様? 何をなさるつもり……」

「ライアン! 今すぐ王室御用達の宝飾師と、最高のドレス職人を呼べ。それから、神殿に連絡だ。王太子即位の儀を前倒しにし、同時に私の『婚約者』を正式に公表する」

「……旦那様。それはつまり、ノノカ様をこの国の『美の象徴』として神格化するということでしょうか?」

ライアンさんが眼鏡をクイと上げ、手帳に書き留める。

「そうだ。ノノカが『普通』だと言うなら、その『普通』がこの国の『至高』であると定義し直せばいい。……ノノカ、三行で私の提案に答えろ」

私は、セシル様のあまりに強引で、あまりに美男子らしい傲慢な愛の言葉に、思わず顔を上げた。

「一つ、あなたのその独裁的な愛情表現、200点満点ですわ」

「二つ、私を神格化するなら、もっとキラキラした宝石が必要不可欠ですわね」

「三つ、いいでしょう。その挑戦、受けて立ちますわ。私が『普通』だなんて言った呪い、後悔させて差し上げますの!」

私は立ち上がり、再び鏡の前に立った。

確かに、今の私は全盛期より少しだけ輝きを欠いているかもしれない。けれど、隣に立つこの男の輝きが、私を何倍にも引き立ててくれる。

「セシル様。呪いを解くのは、魔術師の呪文ではありませんわ」

「ほう。では、何だ?」

「世界一の美男子による、魂を揺さぶるような『最高の演出』ですわ。……準備はよろしいかしら?」

「あぁ。貴様のためなら、神の摂理すら書き換えてみせよう」

セシル様は私の手を取り、跪いてその甲に唇を寄せた。

呪いが生んだ「普通」の私を、彼は誰よりも特別な「王妃」に変えようとしていた。
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