お前の不敬には愛想が尽きた!と婚約破棄されましたが、これ幸い!

ちゃっぴー

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王太子即位の儀から一夜明け、私は晴れてこの国の「王太子妃」……実質的な次期王妃としての第一歩を踏み出しました。

しかし、目覚めてすぐに王宮の廊下を歩いた私の口から出たのは、祝福の言葉ではなく、深いため息でした。

「……アン。三行で今の私の絶望を代弁なさい」

後ろを歩く侍女のアンが、手帳を片手に神妙な面持ちで答えます。

「一つ、王宮のカーテンの裾が、昨夜の風で3ミリほど右にズレていますわ」

「二つ、すれ違う近衛兵たちの髭の剃り跡が、朝日に照らされて青々としすぎていますの」

「三つ、何より……この王宮の予算書。美を維持するための『美容維持費』が、軍事費の百分の一もありませんわ! これは国家的な危機ですわよ!」

「その通りですわ。よく分かっていてよ、アン」

私はそのまま、セシル様が執務を行っている大広間へと乗り込みました。

そこには、新しく王太子となったセシル様を囲み、これからの国政について議論する大臣たちが集まっていました。

「セシル様! 重大な提案がございますの!」

私が扉を勢いよく開けると、セシル様はペンを止め、少しだけ困ったような、けれど愛おしそうな眼差しをこちらに向けました。

「……ノノカ。朝から元気だな。今度はどこの『顔面偏差値』が足りないと言いに来たんだ?」

「あら、個人の問題ではありませんわ。国家の『根幹』に関わる大問題ですのよ」

私は大臣たちが広げている、埃っぽい紙の山を扇で指し示しました。

「皆様。三行で、私の『新国家建設プラン』の概要を説明しますわね」

大臣たちが一斉に姿勢を正します。私の毒舌が、もはやこの国の「標準」になりつつあるのは、少しばかり愉快ですわね。

「一つ、王宮内の全てのカーテンと絨毯を、セシル様の瞳が最も美しく映える色に新調しますわ」

「二つ、役人の採用基準に『清潔感』と『姿勢の良さ』を項目として追加。背中の曲がった政治は、国民の心も曲げますもの」

「三つ、そして! 『美の特別予算』を編成し、全国民に基礎化粧品を配布。国民が美しくなれば、自然と犯罪も減り、国全体が輝き出しますわ!」

静まり返る広間。

一人の年配の大臣が、恐る恐る口を開きました。

「……王太子妃殿下。お言葉ですが、そのようなことに予算を投じれば、国防やインフラ整備が疎かになるのでは……」

「あら、大臣。三行で反論させていただきますわ」

私は優雅に椅子に座り、足を組み替えました。

「一つ、美しく整えられた街並みは、それだけで外敵に対する『威圧感』になりますわ。乱れた国は、付け込まれる隙を与えるだけですの」

「二つ、インフラ整備こそ美学ですわ。機能的で美しい道路、左右対称な橋。それこそが文明の証ではありませんこと?」

「三つ、何より。……美男子であるセシル様が治める国が、中身も外見もボロボロなんて、そんなの、私のプライドが許しませんわ!」

セシル様はふっと息を吐き、椅子にもたれかかりました。

「……大臣たち。彼女の言うことは一見突飛だが、本質を突いている。……人は美しいものに集まり、美しいものを守ろうとする。この国を『世界一美しい国』にする。それは、武力で国を大きくするよりも、ずっと強固な基盤になるかもしれん」

「セシル様……っ! さすが私の選んだ至宝ですわ!」

「ただし、予算の配分は私が管理する。ノノカ、貴様に任せると、国庫の金が全て最高級の美容液に消えてしまいそうだからな」

「あら、バレてしまいました? でも、セシル様の肌のためなら、それくらいの投資は安いものですわよ」

私がいたずらっぽく笑うと、セシル様も観念したように笑みを返しました。

「……さて。大臣たち。まずは、このカビ臭い報告書の書式を変えるところから始めようか。ノノカが読みやすいように、要点を『三行』にまとめる習慣をつけるんだ」

「は、ははっ! 承知いたしました!」

大臣たちが慌てて書き直しを始める姿を見て、私は満足げに頷きました。

セシル様との新時代。

それは、毒舌と美学、そして溢れんばかりの「美男子愛」に満ちた、最高に輝かしいものになりそうですわ。

……もっとも、まずはあの近衛兵たちの『髭剃り指導』から始めなくてはなりませんけれど。
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