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「……あー、美味しかった! ボス、見てください! エルダール帝国の特産品、この『魔力イチゴのパフェ』、絶品ですわ! この国に嫁いで、私の胃袋の幸福指数はかつての五百倍に達しました!」
エルダール帝国の首都を一望できる、超高層ホテルのスイートルーム。
メリルはドレスの背中のボタンを一つ外した状態で、山盛りのパフェを口いっぱいに詰め込んでいた。
その隣では、帝国の高級軍服に身を包んだガウェインが、真面目な顔で彼女のパフェに追いクリームを絞り出している。
「……メリル。あまり食べ過ぎると、またドレスの補修費用が『経費』として認められなくなりますわよ」
私は窓辺でゼクス様と並び、新しく開通した「大陸横断鉄道」の運行計画書を眺めながら、呆れた声をかけた。
アストレア公爵令嬢から、帝国の最高経済顧問へ。
私の肩書きは変わったが、やるべきことは変わらない。無駄を省き、利益を最大化し、自分と味方の幸せを確保することだ。
「いいじゃないですか、ラーニャ。今日という日は、我々の『合同事業計画』が一周年を迎えた記念すべき日なのですから。少々の贅沢は、将来への投資として計上しましょう」
ゼクス様が、私の肩を抱き寄せながら優しく囁く。
かつての冷徹な特使は、今や「最も成功した共同経営者(夫)」として、私を支えてくれている。
「……ゼクス様、甘いですわね。私を甘やかすと、あなたの個人資産まで、私の新しい事業計画に飲み込まれてしまいますわよ?」
「望むところだ。私の心臓も、資産も、すべてはあなたの管理下にある。……契約を破棄するつもりは毛頭ありませんからね」
ゼクス様はそう言うと、私の指先にある魔石の指輪に、愛おしそうに触れた。
そこに、かつての王子のような「押し付けがましい愛」はない。
あるのは、対等なパートナーとしての、深くて強固な信頼だ。
「ところでボス。……あのアホ王子、まだ例の塔で頑張ってるらしいですよ」
メリルがパフェのチェリーを噛み砕きながら、思い出したように言った。
「昨日、実家の父から手紙が届いたんですけど。王子、最近では藁で『ラーニャ様人形』を作って、それに毎日お悩み相談をしてるんですって。……怖すぎません?」
「……。もはやホラーですわね。まあ、それだけ元気なら、あと数十年はあの地下室で『独り占めの幸せ』を味わえるのではないでしょうか」
私は、遠く離れた故郷の空を想い、少しだけ目を細めた。
有能な者を蔑ろにし、真心の形さえ理解しようとしなかった男。
彼は今、自分が望んだ「物語」の中で、永遠におひとり様として君臨し続けている。
それが彼にとってのハッピーエンドなのだから、誰も文句は言えまい。
「……さて。無駄話はこれくらいにして、お仕事に戻りましょうか。メリル、午後の会議の資料は?」
「ばっちりです、ボス! 次なるターゲット……いえ、業務提携先である海洋諸国の税率表、すべて暗記済みですわ!」
「ガウェイン。警護の準備は?」
「はっ。ラーニャ様とメリルの影にすら、不浄なものは近づかせません」
ガウェインが胸を叩くと、鋼のような筋肉が力強く鳴った。
この、最高に有能で、最高に現金で、最高に愉快な仲間たちがいれば、この先どんな難局が来ようとも、すべてを「利益」に変えてみせる。
「行きましょうか、ラーニャ。世界は広い。……我々が買い叩くべき市場は、まだ山ほどありますよ」
ゼクス様が差し出した手に、私は優雅に自分の手を重ねた。
「ええ。高くつきますわよ、ゼクス様。……私の描く未来は、誰にも差し押さえられませんから」
私たちは、光り輝くバルコニーを後にし、次なる戦場……いいえ、輝かしいビジネスの舞台へと歩み出した。
悪役令嬢による「断罪」のその先。
そこには、愛だの恋だのという不安定な言葉を、確かな「実績」と「富」で塗り替えた、最高に合理的で幸福な日々が続いていたのである。
エルダール帝国の首都を一望できる、超高層ホテルのスイートルーム。
メリルはドレスの背中のボタンを一つ外した状態で、山盛りのパフェを口いっぱいに詰め込んでいた。
その隣では、帝国の高級軍服に身を包んだガウェインが、真面目な顔で彼女のパフェに追いクリームを絞り出している。
「……メリル。あまり食べ過ぎると、またドレスの補修費用が『経費』として認められなくなりますわよ」
私は窓辺でゼクス様と並び、新しく開通した「大陸横断鉄道」の運行計画書を眺めながら、呆れた声をかけた。
アストレア公爵令嬢から、帝国の最高経済顧問へ。
私の肩書きは変わったが、やるべきことは変わらない。無駄を省き、利益を最大化し、自分と味方の幸せを確保することだ。
「いいじゃないですか、ラーニャ。今日という日は、我々の『合同事業計画』が一周年を迎えた記念すべき日なのですから。少々の贅沢は、将来への投資として計上しましょう」
ゼクス様が、私の肩を抱き寄せながら優しく囁く。
かつての冷徹な特使は、今や「最も成功した共同経営者(夫)」として、私を支えてくれている。
「……ゼクス様、甘いですわね。私を甘やかすと、あなたの個人資産まで、私の新しい事業計画に飲み込まれてしまいますわよ?」
「望むところだ。私の心臓も、資産も、すべてはあなたの管理下にある。……契約を破棄するつもりは毛頭ありませんからね」
ゼクス様はそう言うと、私の指先にある魔石の指輪に、愛おしそうに触れた。
そこに、かつての王子のような「押し付けがましい愛」はない。
あるのは、対等なパートナーとしての、深くて強固な信頼だ。
「ところでボス。……あのアホ王子、まだ例の塔で頑張ってるらしいですよ」
メリルがパフェのチェリーを噛み砕きながら、思い出したように言った。
「昨日、実家の父から手紙が届いたんですけど。王子、最近では藁で『ラーニャ様人形』を作って、それに毎日お悩み相談をしてるんですって。……怖すぎません?」
「……。もはやホラーですわね。まあ、それだけ元気なら、あと数十年はあの地下室で『独り占めの幸せ』を味わえるのではないでしょうか」
私は、遠く離れた故郷の空を想い、少しだけ目を細めた。
有能な者を蔑ろにし、真心の形さえ理解しようとしなかった男。
彼は今、自分が望んだ「物語」の中で、永遠におひとり様として君臨し続けている。
それが彼にとってのハッピーエンドなのだから、誰も文句は言えまい。
「……さて。無駄話はこれくらいにして、お仕事に戻りましょうか。メリル、午後の会議の資料は?」
「ばっちりです、ボス! 次なるターゲット……いえ、業務提携先である海洋諸国の税率表、すべて暗記済みですわ!」
「ガウェイン。警護の準備は?」
「はっ。ラーニャ様とメリルの影にすら、不浄なものは近づかせません」
ガウェインが胸を叩くと、鋼のような筋肉が力強く鳴った。
この、最高に有能で、最高に現金で、最高に愉快な仲間たちがいれば、この先どんな難局が来ようとも、すべてを「利益」に変えてみせる。
「行きましょうか、ラーニャ。世界は広い。……我々が買い叩くべき市場は、まだ山ほどありますよ」
ゼクス様が差し出した手に、私は優雅に自分の手を重ねた。
「ええ。高くつきますわよ、ゼクス様。……私の描く未来は、誰にも差し押さえられませんから」
私たちは、光り輝くバルコニーを後にし、次なる戦場……いいえ、輝かしいビジネスの舞台へと歩み出した。
悪役令嬢による「断罪」のその先。
そこには、愛だの恋だのという不安定な言葉を、確かな「実績」と「富」で塗り替えた、最高に合理的で幸福な日々が続いていたのである。
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