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「さあ、お待たせいたしました。いよいよオペの開始ですわ!」
坑道から這い出してきたエミリーは、泥だらけの顔に狂気じみた笑みを浮かべ、ボロ屋敷のテーブルに陣取った。
その手には、先ほど掘り出したばかりのデマントイド・ガーネットの原石が握られている。
「お、おいお嬢様。オペってなんだよ、ただの石磨きだろうが。それより先に風呂に入れ、泥が屋敷中に落ちてるぞ」
ガストンが眉をひそめてタオルを差し出すが、エミリーはそれを完全に無視した。
「ただの石磨き? 失礼な! これは眠れる森の美女を目覚めさせる真実のキスの儀式ですわよ! ガストン様、お湯と柔らかい布、それからわたくしの鞄の底にある特製の研磨粉を持ってきてちょうだい!」
「勝手にしろ……。ったく、公爵令嬢ってのはどいつもこいつも強情なのかねぇ」
ブツブツと文句を言いながらも、ガストンはエミリーの迫力に押されて準備を整えた。
エミリーは震える手で、慎重に原石の泥を洗い流していく。
お湯の中で汚れが落ちるたびに、深緑色の結晶がカンテラの光を反射して、怪しくも美しい輝きを見せ始めた。
「……っ、ああ! 見て、見てくださいませ! この透明度。内部に広がるホーステイル・インクルージョンが、まるで黄金の糸が舞っているようですわ!」
「……ほう、さっきよりは綺麗になったな。だが、磨く道具もねえのにどうするんだ?」
エミリーはニヤリと笑うと、鞄から小さな革袋を取り出した。
中には、彼女が独自に調合した数種類の研磨剤と、使い古されているが手入れの行き届いた小型の研磨布が入っていた。
「わたくしを誰だと思っていまして? 王都にいた頃、夜な夜な自室にこもって、安物の原石を磨き上げては悦に浸っていた『磨き魔(ポリッシュ・マニア)』のエミリーですわよ!」
「……自分で自分を変態だと言ってる自覚はあるか?」
「最高の褒め言葉ですわ! いいですか、ガストン様。宝石の輝きは、カットとポリッシュで決まるのです。この子のポテンシャルを最大限に引き出すのは、わたくしの愛以外にあり得ませんわ!」
そこからエミリーの集中力は凄まじかった。
何時間も、ただひたすらに、石の表面を磨き続ける。
時折、角度を変えて光に透かし、ルーペで確認しては、また布を動かす。
その目は、獲物を狙う猛禽類のように鋭く、一切の妥協を許さない。
やがて、窓の外が白み始めた頃。
エミリーの手の上で、一際強い「閃光」が爆発した。
「……完成、ですわ」
エミリーの震える声に、うたた寝をしていたガストンが飛び起きた。
「な、なんだ!? 何が起きた!」
「ご覧なさいな。これこそが、大地の奇跡……デマントイドの真実の姿ですわ!」
エミリーの手のひらには、まるで自ら発光しているかのような、鮮烈なグリーンの宝石が鎮座していた。
それはダイヤモンドをも凌ぐと言われる高い分散度を遺憾なく発揮し、部屋の僅かな光を捉えては、虹色の火花(ファイア)を四方八方に散らしている。
「……おい、嘘だろ。あんな泥団子が、こんな化け物みたいな石になったのか?」
ガストンが信じられないといった様子で、身を乗り出して覗き込む。
「化け物だなんて! この子は世界で一番の美少女ですわ! この輝きがあれば、王都の貴婦人たちは腰を抜かして失神するに違いありませんわね」
エミリーは宝石を愛おしそうに見つめ、そっと頬を寄せた。
「よし、決めましたわ。ガストン様、わたくしたちはこの石を持って、近隣の町へ行きますわよ!」
「はあ? 何しにだよ」
「商売に決まっていますわ。この子を売って、もっと高性能な採掘機と、最高級の研磨機、それからわたくしのための特製作業着を買うのです!」
エミリーの瞳には、すでに巨大な宝石帝国の建設図が描かれているようだった。
「追放された令嬢が、辺境で泥にまみれて泣いている……。そんな退屈な脚本(プロット)は、わたくしがこの輝きで全て焼き尽くして差し上げますわ!」
高笑いするエミリーの背後で、朝日が昇り始める。
その光を浴びた宝石は、まるで彼女の野望を祝福するかのように、一層強く煌めいた。
坑道から這い出してきたエミリーは、泥だらけの顔に狂気じみた笑みを浮かべ、ボロ屋敷のテーブルに陣取った。
その手には、先ほど掘り出したばかりのデマントイド・ガーネットの原石が握られている。
「お、おいお嬢様。オペってなんだよ、ただの石磨きだろうが。それより先に風呂に入れ、泥が屋敷中に落ちてるぞ」
ガストンが眉をひそめてタオルを差し出すが、エミリーはそれを完全に無視した。
「ただの石磨き? 失礼な! これは眠れる森の美女を目覚めさせる真実のキスの儀式ですわよ! ガストン様、お湯と柔らかい布、それからわたくしの鞄の底にある特製の研磨粉を持ってきてちょうだい!」
「勝手にしろ……。ったく、公爵令嬢ってのはどいつもこいつも強情なのかねぇ」
ブツブツと文句を言いながらも、ガストンはエミリーの迫力に押されて準備を整えた。
エミリーは震える手で、慎重に原石の泥を洗い流していく。
お湯の中で汚れが落ちるたびに、深緑色の結晶がカンテラの光を反射して、怪しくも美しい輝きを見せ始めた。
「……っ、ああ! 見て、見てくださいませ! この透明度。内部に広がるホーステイル・インクルージョンが、まるで黄金の糸が舞っているようですわ!」
「……ほう、さっきよりは綺麗になったな。だが、磨く道具もねえのにどうするんだ?」
エミリーはニヤリと笑うと、鞄から小さな革袋を取り出した。
中には、彼女が独自に調合した数種類の研磨剤と、使い古されているが手入れの行き届いた小型の研磨布が入っていた。
「わたくしを誰だと思っていまして? 王都にいた頃、夜な夜な自室にこもって、安物の原石を磨き上げては悦に浸っていた『磨き魔(ポリッシュ・マニア)』のエミリーですわよ!」
「……自分で自分を変態だと言ってる自覚はあるか?」
「最高の褒め言葉ですわ! いいですか、ガストン様。宝石の輝きは、カットとポリッシュで決まるのです。この子のポテンシャルを最大限に引き出すのは、わたくしの愛以外にあり得ませんわ!」
そこからエミリーの集中力は凄まじかった。
何時間も、ただひたすらに、石の表面を磨き続ける。
時折、角度を変えて光に透かし、ルーペで確認しては、また布を動かす。
その目は、獲物を狙う猛禽類のように鋭く、一切の妥協を許さない。
やがて、窓の外が白み始めた頃。
エミリーの手の上で、一際強い「閃光」が爆発した。
「……完成、ですわ」
エミリーの震える声に、うたた寝をしていたガストンが飛び起きた。
「な、なんだ!? 何が起きた!」
「ご覧なさいな。これこそが、大地の奇跡……デマントイドの真実の姿ですわ!」
エミリーの手のひらには、まるで自ら発光しているかのような、鮮烈なグリーンの宝石が鎮座していた。
それはダイヤモンドをも凌ぐと言われる高い分散度を遺憾なく発揮し、部屋の僅かな光を捉えては、虹色の火花(ファイア)を四方八方に散らしている。
「……おい、嘘だろ。あんな泥団子が、こんな化け物みたいな石になったのか?」
ガストンが信じられないといった様子で、身を乗り出して覗き込む。
「化け物だなんて! この子は世界で一番の美少女ですわ! この輝きがあれば、王都の貴婦人たちは腰を抜かして失神するに違いありませんわね」
エミリーは宝石を愛おしそうに見つめ、そっと頬を寄せた。
「よし、決めましたわ。ガストン様、わたくしたちはこの石を持って、近隣の町へ行きますわよ!」
「はあ? 何しにだよ」
「商売に決まっていますわ。この子を売って、もっと高性能な採掘機と、最高級の研磨機、それからわたくしのための特製作業着を買うのです!」
エミリーの瞳には、すでに巨大な宝石帝国の建設図が描かれているようだった。
「追放された令嬢が、辺境で泥にまみれて泣いている……。そんな退屈な脚本(プロット)は、わたくしがこの輝きで全て焼き尽くして差し上げますわ!」
高笑いするエミリーの背後で、朝日が昇り始める。
その光を浴びた宝石は、まるで彼女の野望を祝福するかのように、一層強く煌めいた。
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