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「……ちょっと、ヴィンセント。私のデスクの上に、この不衛生な色の紙の山は何かしら? まさか、帝国の郵便システムはゴミの収集場所を私の部屋と勘違いしているの?」
帝都の離宮に落ち着いて三日。私の机には、山のような招待状が積み上がっていた。
香水がキツすぎて鼻が曲がりそうなもの、金粉がまぶしてあって読みにくいもの……。
どれもこれも、私の美学に反する「視覚的テロ」でしかない。
「やあ、レーズン。それは帝国の貴族たちが、君という『劇薬』の味見をしたがっている証拠だよ。今夜、大公殿下が主催する夜会への招待状も入っているはずだ」
「味見? あら、毒キノコを口にするのに、遺言も書かずに招待状を送るなんて、この国の貴族は死に急いでいるのかしら? それに、この大公とかいう人の文章。助詞の使い方が支離滅裂だわ。教育課程をドブに捨ててきたのかしら」
私は、一番上にあった豪華な招待状を指先でつまみ上げると、一切の躊躇なく足元のゴミ箱へシュートした。
「……レーズン、今のは大公家直筆の……。まあいい、ゴミ箱行きか。実に君らしい判断だ」
「当然よ。一分一秒を惜しんで帝国の帳簿を精査している私にとって、中身のないパーティーなんて『人生の無駄遣い』以外の何物でもないわ。……それよりヴィンセント、頼んでいた資料は?」
私が手を出すと、ヴィンセントはいつものように恍惚とした表情で、一冊の分厚いファイルを差し出してきた。
「こちらだ。帝国の各省庁が隠蔽し続けてきた、過去十年の『不透明な支出リスト』。……これを君に渡すのは、火薬庫の中で火遊びをさせるようなものだが……。どうかな、私の女王?」
「火遊び? 失礼ね。私はただ、腐りかけの野菜を整理整頓して、コンポストに放り込もうとしているだけよ。……あら、ひどいわね。この軍事費の三割、どこへ消えたのかしら? まさか空飛ぶ絨毯でも開発して、宇宙へ逃亡する計画でもあるの?」
私は書類をめくるたび、扇子をパタパタと動かして、不快感を露わにした。
ヴィンセントの兄である第一皇子、第二皇子に連なる派閥が、どれだけ国庫を私物化しているか、この数字の羅列が雄弁に語っている。
「……ヴィンセント。あなたの国、あと半年で破産するわよ。あなたの兄たちが着ているその贅沢な服、実は民衆の明日食べるパンの耳でできているようなものだわ。……そんな恥知らずな生き物と同じ空気を吸っていると思うと、私の肺がかわいそうだわ」
「……半年か。君に言われると、それが確定した未来のように聞こえるよ。……それで、どうするんだい? このまま隠居生活に戻るか、それとも……」
「決まっているわ。逆襲よ。……あ、勘違いしないで。私は別に、あなたの国を救いたいわけではないの。ただ、私の『完璧な管理下』にあるべき数字が、これほどまでに乱されているのが我慢ならないだけよ。……無能が放置したゴミは、私が一番効率的な方法で燃やしてあげる」
私はペンを取り、一枚の真っ白な紙に、流麗な文字で「処刑リスト(社会的)」を書き始めた。
「まず、今夜の夜会。やっぱり出席することにするわ」
「おや、ゴミ箱に捨てたばかりでは?」
「ゴミ箱から拾ってきなさい、ヴィンセント。……ただ出席するのではないわよ。帝国中の貴族が集まるその場所で、この国の『腐敗の臭い』を、私の言葉で可視化してあげるの。……楽しみにしておきなさい。明日には、帝国の権力図が、私の毒で溶けて形を変えているはずだから」
ヴィンセントは深く跪き、ゴミ箱から(魔法で浄化して)招待状を拾い上げると、私の手に恭しく返した。
「……了解した。君の戦場に、私は最高の観客として……そして、君の最も忠実な猟犬として付き添おう」
「猟犬? ……せいぜい、私のドレスの裾を踏まないように気をつけなさいな、私の汚点(ヴィンス)。汚したら、あなたの存在そのものを帝国の歴史から黒塗りにして消してあげるわ」
「……っ、黒塗り! ああ、楽しみだ!」
私の逆襲の準備は整った。
王国で培った「悪役令嬢」としての手腕。それを今度は、帝国という巨大な盤面で、思い切り振るってあげる。
……待ってなさい。無能がのさばる時代は、今夜で終わりよ。
帝都の離宮に落ち着いて三日。私の机には、山のような招待状が積み上がっていた。
香水がキツすぎて鼻が曲がりそうなもの、金粉がまぶしてあって読みにくいもの……。
どれもこれも、私の美学に反する「視覚的テロ」でしかない。
「やあ、レーズン。それは帝国の貴族たちが、君という『劇薬』の味見をしたがっている証拠だよ。今夜、大公殿下が主催する夜会への招待状も入っているはずだ」
「味見? あら、毒キノコを口にするのに、遺言も書かずに招待状を送るなんて、この国の貴族は死に急いでいるのかしら? それに、この大公とかいう人の文章。助詞の使い方が支離滅裂だわ。教育課程をドブに捨ててきたのかしら」
私は、一番上にあった豪華な招待状を指先でつまみ上げると、一切の躊躇なく足元のゴミ箱へシュートした。
「……レーズン、今のは大公家直筆の……。まあいい、ゴミ箱行きか。実に君らしい判断だ」
「当然よ。一分一秒を惜しんで帝国の帳簿を精査している私にとって、中身のないパーティーなんて『人生の無駄遣い』以外の何物でもないわ。……それよりヴィンセント、頼んでいた資料は?」
私が手を出すと、ヴィンセントはいつものように恍惚とした表情で、一冊の分厚いファイルを差し出してきた。
「こちらだ。帝国の各省庁が隠蔽し続けてきた、過去十年の『不透明な支出リスト』。……これを君に渡すのは、火薬庫の中で火遊びをさせるようなものだが……。どうかな、私の女王?」
「火遊び? 失礼ね。私はただ、腐りかけの野菜を整理整頓して、コンポストに放り込もうとしているだけよ。……あら、ひどいわね。この軍事費の三割、どこへ消えたのかしら? まさか空飛ぶ絨毯でも開発して、宇宙へ逃亡する計画でもあるの?」
私は書類をめくるたび、扇子をパタパタと動かして、不快感を露わにした。
ヴィンセントの兄である第一皇子、第二皇子に連なる派閥が、どれだけ国庫を私物化しているか、この数字の羅列が雄弁に語っている。
「……ヴィンセント。あなたの国、あと半年で破産するわよ。あなたの兄たちが着ているその贅沢な服、実は民衆の明日食べるパンの耳でできているようなものだわ。……そんな恥知らずな生き物と同じ空気を吸っていると思うと、私の肺がかわいそうだわ」
「……半年か。君に言われると、それが確定した未来のように聞こえるよ。……それで、どうするんだい? このまま隠居生活に戻るか、それとも……」
「決まっているわ。逆襲よ。……あ、勘違いしないで。私は別に、あなたの国を救いたいわけではないの。ただ、私の『完璧な管理下』にあるべき数字が、これほどまでに乱されているのが我慢ならないだけよ。……無能が放置したゴミは、私が一番効率的な方法で燃やしてあげる」
私はペンを取り、一枚の真っ白な紙に、流麗な文字で「処刑リスト(社会的)」を書き始めた。
「まず、今夜の夜会。やっぱり出席することにするわ」
「おや、ゴミ箱に捨てたばかりでは?」
「ゴミ箱から拾ってきなさい、ヴィンセント。……ただ出席するのではないわよ。帝国中の貴族が集まるその場所で、この国の『腐敗の臭い』を、私の言葉で可視化してあげるの。……楽しみにしておきなさい。明日には、帝国の権力図が、私の毒で溶けて形を変えているはずだから」
ヴィンセントは深く跪き、ゴミ箱から(魔法で浄化して)招待状を拾い上げると、私の手に恭しく返した。
「……了解した。君の戦場に、私は最高の観客として……そして、君の最も忠実な猟犬として付き添おう」
「猟犬? ……せいぜい、私のドレスの裾を踏まないように気をつけなさいな、私の汚点(ヴィンス)。汚したら、あなたの存在そのものを帝国の歴史から黒塗りにして消してあげるわ」
「……っ、黒塗り! ああ、楽しみだ!」
私の逆襲の準備は整った。
王国で培った「悪役令嬢」としての手腕。それを今度は、帝国という巨大な盤面で、思い切り振るってあげる。
……待ってなさい。無能がのさばる時代は、今夜で終わりよ。
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