【完結】全てを後悔しても、もう遅いですのよ。

アノマロカリス

文字の大きさ
57 / 63

第五十五話 何を期待しているの?

しおりを挟む
 あれから数日後…

 私はレントグレマール王国に到着しました。

 まぁ…当然の事だけど、城下街には国民の姿は殆どいなかった。

 見掛けたとしたら、冒険者や兵士が街の中を彷徨いていた。

 国王陛下がどういう発表をしたかにもよるけど、空から魔物の軍勢が降って来る…なんて話をすれば、国民達は一斉に逃げ出すでしょう。

 私は一応、聖女達が集合している場所を目指して歩いていると…?

 私より先に到着した一団がチラホラ見えた。

 その中には、ドレクスの様に屈強な体格を持った女性がいて、背中には両手剣のグレートソードを二本担いだ法衣を着たムキムキの女性が立っていた。

 「あの服装から見ると…あの人も聖女なのかな?」

 私は遠目から見ていたんだけど、その法衣を着た女性は私に気付いたみたいで、私に近付いてきた。

 「アンタがこの国の聖女か?」

 「はい…」

 あまりの体格の良さに、昔に物語で読んだアマゾネスと呼ばれた女戦士を彷彿とさせる感じでした。

 聖女…というよりは、バーバリアンという方がしっくりする。

 その聖女は私に挨拶するかの様に手を差し出した。

 私もそれに応える様に手を出して握手をしようとすると、以前のステファニーさんの時の様にバチっと弾かれた。

 「やはり…聖女同士だとこうなるんだな。 アタイはベルセラだ!」

 「私はレイラと申します。」

 本来なら、冒険者活動をしている時に名乗っていたファスティアを名乗りたかったけど、大聖女クライネート様からは本名で呼ばれたので、私は本名で名乗る事にした。

 まぁ…メナス達と合流した際に、ややこしくなりそうな予感はするけど…?

 そんな事を考えながら他の聖女を探していると、聞き覚えのある声が聞こえて来た。

 「レイラは…聖女レイラはいるか⁉︎」

 この声は間違い無く…レントグレマール王国の国王陛下の声だった。

 自国の問題なので、国民は退避していても王族は残っているよね?

 私は…無視して街の外に向かおうとすると、先程話しかけて来たベルセラが私の方を指差していた。

 ベルセラさん…余計な事を。

 それを聞いた国王陛下が私の元に駆け寄って来た。

 「其方がレイラ…なのか⁉︎」

 何をすっとぼけた事を言っているのだろうか?

 星の涙の予想到達場所がこの王国と聞いて、頭が混乱しているのかしら?

 貴方があの馬鹿王子との婚姻を決めた張本人の癖に…と思っていたけど、国王陛下の中の私の姿は銀髪だった所を思うと、今の変装した青髪を見て…私と分からないのかな?

 「そうですけど…」

 「良かった! 早速で申し訳無いが、以前に王国全土に張っていたという結界を…」

 「張りませんよ? そんな事をしても無意味ですから…」

 「なっ!」

 私の以前張っていた結界は、魔物の侵入を退ける事が出来ていた。

 前回の星の涙の時は、レントグレマール王国は一切参加していないという話なので、魔物の軍勢も結界で退けられるとでも思っている節が見えた。

 「どんなに頑丈な橋でも、重量級の魔物がのしかかれば…数分で大破しますよ。 それと同じで、何万や何十万という魔物の軍勢が空から落ちて来たら、例え私の結界でも物の数秒しか持ちませんから…」

 「だが、やってみないと分からないでは無いか‼︎」

 やった所で目に見えていると諭しているのに、なぜ理解ができないんだろう?

 「あの国王陛下…もしかして私が結界を張れば、レントグレマール王国が助かる…なんて思ってはいないですよね?」

 「レイラの結界で防げ…」

 「…ません! 先ほどもお話しした通り…あ~~~こう言った方が分かりやすいかな? 国王陛下は魔物の軍勢が、この付近にいるボアとかアルミラージなどの自然魔物とでも思っているんですか? 星の涙で襲って来る魔物の軍勢は、ドラゴンやベヒーモスと言った災害級や天災級クラスの軍勢ですよ!」

 「むぅ………」

 国王陛下は、大聖女クライネート様の放送を聞かなかったのかな?

 各国の聖女や騎士に冒険者を集結させるという話を国王のネットワークから聞いていて、何で結界如きで追い払えると思っているんだろう?

 「なら、この王国は…?」

 「星の涙が終われば、地図から無くなるでしょうね。 それも…以前に星の涙で滅ぼされた王国の様に…」

 私はそう話し終わると、国王陛下は肩を落として城の方に歩いて行った。

 気持ちは分からなくは無いんだけどね。

 それから三週間の月日が流れた。

 各国の騎士や聖女達が集結して行き、その中にはステファニーさんやメナス達も合流した。

 そして最後に、大聖女クライネート様の一団も集結し、作戦の発表がされたんだけど?

 国王陛下もそうだったけど、大聖女クライネート様も私に何を期待しているんだろう?

 そんな内容の話が出たのでした。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

わたくしを追い出した王太子殿下が、一年後に謝罪に来ました

柚木ゆず
ファンタジー
 より優秀な力を持つ聖女が現れたことによってお払い箱と言われ、その結果すべてを失ってしまった元聖女アンブル。そんな彼女は古い友人である男爵令息ドファールに救われ隣国で幸せに暮らしていたのですが、ある日突然祖国の王太子ザルースが――アンブルを邪険にした人間のひとりが、アンブルの目の前に現れたのでした。 「アンブル、あの時は本当にすまなかった。謝罪とお詫びをさせて欲しいんだ」 現在体調の影響でしっかりとしたお礼(お返事)ができないため、最新の投稿作以外の感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない

nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?

私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?

榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」 “偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。 地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。 終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。 そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。 けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。 「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」 全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。 すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく―― これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。

素顔を知らない

基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。 聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。 ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。 王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。 王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。 国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

処理中です...