私を手放して、後悔は致しませんね?

アノマロカリス

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第二十話

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~~~~~あれから半年が経過した~~~~~

「最近、王都では…この黒くて甘い物が流行っているという話では無いか!」

ファグリューは、旅商人から話題作りの為に販売してきたチョコレートを購入した。

チョコレートの噂は耳にした事があった。

海の向こうの国の生産地なのに、こちらに来ても安価で買える理由がイマイチわからなかった。

デルード男爵家では資金困難な状態が続いているが、平民でも手に入れられる程の安価の物を購入出来ない程には落ちぶれていない。

そしてチョコレートを口に入れたファグリューは、衝撃を受ける事になる。

元々、余り甘い物を好まないファグリューには、この黒い塊が王都で大人気商品と旅商人から言われてもピンとこなかった。

だけど、口に入れると…この商品の売れる理由に気付いたのだった。

「これは…余り高い材料は使用されてはいない様だな、それにこの甘さは…砂糖では無いよな?もしも砂糖を使用していたのなら、此処まで安価で販売は無理だろうし?」

ファグリューは口にチョコレートを含んだまま、入っていた箱や箱に刻まれていたノブリス・オブリージュ商会の名前を見ました。

ノブリス・オブリージュ商会…

他国のデルキアッシュ王国で、様々な商会がしのぎを削る中で…立ち上げ手間も無いこの商会が王国一位の地位を得たという話をファグリューは新聞で知りました。

その時は、金に物を言わせて貴族に販売させた物…と思っていたのだが、このチョコレートの美味しさと値段の安さを見る限り、それは無いと気付きました。

「貴族だけに留まらず、平民にも購入出来る安価な商品…」

「まるで………いえ、なんでもありません。」

「フィリップ、構わないから言って見せろ。」

「では、僭越して……この手法なのですが、カーネラ元奥様の手法に似ていらっしゃいます。」

「俺も最初はそう思っていた。だが、あのデルキアッシュ王国で名のある商会を押し除けて、商会を立ち上げたばかりが1位に上がれる程…」

「いえ、カーネラ元奥様の手法なら……問題は無いでしょう。あの方の発想力はズバ抜けております。それに…貴族相手の商いに留まらず、平民に対しても安価で提供する…というやり方が、噂を拡散させるのでしょうね。」

ファグリューは、このチョコレートを口に入れた時に、一瞬カーネラの姿が思い浮かんだ。

だが、カーネラがエルザルーバー王国でだったら、ポップコーンやポテトチップスの関係で売り上げを上位に上げる事は可能であっても…

商会激戦区のデルキアッシュ王国で、それを成し遂げる事は…幾らカーネラでも無理だと思っていたからだ。

「おい、フィリップ…このノブリス・オブリージュ商会というのを調べろ‼︎」

「ですが、この商会は…王都デルキアッシュでございますよ?」

「時間は幾ら掛かっても構わないし、それに掛かる費用は気にするな!」

「畏まりました。大至急にお調べ致します。」

そう言ってフィリップは、デイルード男爵家から急いで飛び出して行った。

ファグリューはソファーに座りながら、チョコレートの箱を見ながら不適に笑って言った。

「これで、俺の商会は再び………」

果たして、ファグリューの思惑は…?

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