【完結】学校帰りに石蹴りしながら帰っていたら異世界召喚! 貧乏なので異世界の知識はありませんよ?

アノマロカリス

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上章

第九話 ギムの修業法2

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 「どうも、テトです! 僕は今…丸太を運ばされています!」

 …と、唐突にこんな事を話されても混乱するでしょうから、順を追って説明しますね。
 井戸のレバーの修業は、1週間くらいで終わりました。
 筋力を付けるというのが課題だったのですが、もう1つは醜い出っ腹を引っ込める事でした。
 でもそんな物は、3日も過ぎればすっかりへこんでいました。
 それだけ毎日汗だくで運動量が凄まじいからです。
 1週間程続けていると、片手で楽々と…嘘です!
 未だに両手を使っております!
 ですが、初日に比べて…コツがわかったのか、何時間やっても苦にならなくなっていました。
 それを見たギムさんが、修業を次の段階に移す…と言って、森で木を斧で伐採してから丸太を担いで運ぶという物に変わりました。

 「燃やすには石炭を使うんじゃが、丸太も使うのでな…石炭の掘り出すのはワシらに任せて、テトは丸太を持って来るんじゃ!」

 …だそうです。
 この修業の意図を聞いたら、持久力を付ける為の修業だと言われました。
 確かに、いつまでも此処でお世話になっている訳にはいきません。
 いずれは集落を出て旅をしないといけないからです。
 その為の持久力だそうですが…ただ、木を伐採する斧がドワーフ用です。
 斧の先から柄まで僕の身長よりも高いです。
 こんな斧をドワーフの方々は片手で振り回します。
 ですが、僕には無理です!
 井戸の修業をしていなかったら、この斧は持ち上げる事すら困難だったでしょう。
 なので、僕は丸太集めに精を出しています。

 「だけど…これにもノルマがあるんだよね。」

 まず木を切ります。
 次にのこぎりで木を切断して細かくします。
 その丸太を家に持ち帰ってから薪割りをして、家の壁に積み上げてからまた戻ってから丸太を持って来る。
 家に帰って薪割りをする、壁に積み上げたら戻ってから丸太を持って来る。
 この繰り返しです。
 一応僕は、手に持てる武器は使えない事は説明しました。
 ですが、斧を奮うには強靭な下半身が無いと踊っちまうからと言われて、下半身強化にも役立つそうです。
 1日に3本の木を切り倒していると、5日目には僕の腕で切り落とせる木が無くなりました。
 後はドワーフの人達でもない限り切り倒せない様な大木だけでした。

 「困ったな…これではテトの修業が終わってしまう!」
 「ならギムさん! エルフ族の御神木を倒した方法を使っても良いかな?」
 「長老の木を倒した方法か? あれは…以前の様な空が大爆発を起こす様な威力を生み出すんじゃないのか?」
 「リフティングの回数を抑えれば大丈夫だと思うよ。」
 「う~む…?」

 僕は近くにあった手頃な石でリフティングを始めた。
 すると以前とは違って下半身が安定していた。
 これは回数を…この間の比じゃない位に増やす事が出来る!
 …と思っていたけど、あの威力を出したらこの周辺が消滅しかねないので、回数を抑える事にしたのだが…
  
 「御神木の時は何回だっけ? 確か30回くらいのリフティングでやったんだっけ? そう、30回を越えないと足が光らない…ん?」

 足は10回も満たない回数で既に光っていた。
 そして石も20回のリフティングで眩い位に光っていたのだった。

 「あれ? 光るのが早くないかな?」
 「もう、それ位で良いんじゃないのか⁉」

 僕はギムさんの指示で大木にシュートした。
 すると大木を貫通してから、その後ろにいたベヒーモスの頭まで撃ち抜いたのだった。

 「何だ、この威力は⁉」
 「ベヒーモスを1撃じゃと⁉ なんつう威力じゃ‼」
 
 ギムは家から仲間を呼びに行って、僕が仕留めたベヒーモスを解体し始めた。
 頭が消し飛んだので角や牙の回収は出来なかったけど、代わりに肉や毛皮が大量に手に入れたのだった。
 僕は考え込んでいると、ギムが聞いてきた。

 「どうした、テト?」
 「いや、何であんなに早く石が光りだしたんだろう? 以前は30回以上やらないとあそこ迄光らなかったのに…」
 「それは多分、お前のレベルが上がったからだろう。 前に上空に放った炎の塊が大爆発を起こした時にワイバーンが落ちて来ただろ? あれは街の近くでは1匹だけだったが、他のエリアでも数匹落ちていて、全て死んでいたそうだ。」
 「それがレベルというのと…どう関係があるの?」
 「お前達のいた異世界ではどうだか知らんが、この世界では魔物や魔獣を討伐するとレベルという物が上がり、今現在よりも更に強くなるという仕組みなのじゃ!」
 「そう…なんだ? それで、レベル…だっけ? それが上がった方法を知るにはどうしたら良いの?」
 「この世界にはギルドカードというのを皆が持っている。 こんなカードなんだが?」
 「あ…これって!」

 僕が崖から落とされる前に騎士から奪い取られたカードだ!
 だからか…僕が死ぬと思って回収されたんだな。

 「再発行とかは出来ないの?」
 「出来なくはないが、この集落では出来ん。 街に行って冒険者ギルドで発行をしてくれるだろうが…」
 「街って近いの?」
 「いや、ここから2週間ほど行った場所にある。 道のりはかなり険しいし、危険な場所も通るからな!」
 「ギムよ、久々に街に行くか?」
 「まぁ、納品分もそれなりの量が出来たし…行ってみるのも良いかもしれんな!」
 「街かぁ…どんな所だろ?」
 
 ギムとドワンゴは、他の者達に声を掛けた。
 すると、他の3人も久々の街に歓喜の声を上げた。
 ギルが僕に声を掛けて来た。

 「テトよ、ベヒーモスを倒したのだからまたレベルが上がったんじゃないか? 石を太腿で弾ませるやつをもう1回やってみてくれないか?」
 「そうじゃな、今度は先程よりも早くなっているかもしれないしな…」
 「うん、わかった!」

 僕は足の甲で跳ね上げた石を太腿でキャッチしてからリフティングを始めようとした。
 するともう…足と石が光り始めたのだった。
 そして10回を過ぎると、ドワーフ達が目を開けられない位に眩く光りだしてから、30回を過ぎると前回と同じ様に炎を纏って熱気を発し始めた。
 
 「いかん! テト、それを空に向けて放つんだ‼」
 「あの時と同じ感じがするね? わかった!」

 僕は空に向かって思いっ切りシュートをすると、雲を突き抜けて大爆発を起こした。
 その爆発は以前とは比べ物にならない程に轟音と豪炎が広がって行って…雲が全て燃えて消し飛んでから、何かが墜落して来たのだった。
 
 「あ、何か落ちて来た…」
 「あれは、ロックバードじゃな!」

 集落の周辺に10匹以上の大きな鳥が落ちて来たのだった。
 ロックバードは全て死んでおり、中には黒く焦げているモノも居たのだった。

 「それにしても、なんちゅう威力じゃ!」
 「前回の比では無かったぞ‼」
 「こうなって来ると…テトのレベルは今幾つなんじゃろうな?」
 「ワシ等でもベヒーモスは苦戦する相手だというのに、それを1撃で葬ったんだぞ! 下手するとワシ等よりもレベルが高いんじゃないのか?」
 
 レベルというのが良く解らない。
 ギルドカードというのがあれば、それも分かるという話らしいけど…
 リフティングの回数が少ない数であそこ迄の威力が出る事を考えると、僕は強くなっているのだろうか?
 明確に形になる物が目の前にある訳じゃないので、イマイチ実感が無かった。

 「そういえば、ベヒーモスの後にロックバードも数十匹落としていたし、あの爆発じゃ他にも何かを倒していそうだな?」
 「恐らくな…本当に恐ろしい威力の攻撃じゃ!」
 「またテトのレベルが上がったんじゃないか? それにしても、城の者も良く調べもせずによくもまぁテトを追い出したな? 下手すると伝承の勇者よりも強いかもしれんぞ?」
 
 その夜の夕食は、ベヒーモスの肉とロックバードの肉が振舞われた。
 僕や皆はしっかりと腹に詰めると、いつもよりも早く寝るのだった。
 そして翌日…今日は街に出発する日だ!
 皆はそれぞれの荷物を担いで集落を出るのだった。

 ちなみに…テトの現在のレベルは107になっていた。
 この世界の人類の到達している最高のレベルは87だった。
 既にテトはそれを大きく上回っているのだった。
 こんなレベルでは、既に高校生3人よりも遥かに強いだろう。
 そんな事になっているとは、今のテトには知る由も無かった。
 
 そしてテトの現在のレベルが107…
 街に行くまで険しい場所を通って行く…
 テトはこの旅で、更にレベルを上げる事になるのだった。
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