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上章
第八話 ギムの修業法
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ドワーフ族の朝は…遅い!
皆夕食時は飯を喰いながら酒盛りをする為に、朝…というよりも昼近くになって動き出す。
その代わり、夜遅くまで仕事をする事があり…夕食はほぼ夜中で朝方まで酒盛りをするという毎日を送っている。
僕もこの生活にようやく慣れ始めたので、皆と同じ時間に眠りに就き、朝も皆と同じ時間に起きるのだった。
でもこれ…健康的な生活なのだろうか?
「よし、テト! 今日も昨日の続きで同じ修業をするぞ!」
「はい、ギムさん!」
ギムの修業は、ハッキリ言ってやる事はただ1つ。
井戸のレバーを上下に動かして水を出す事。
これだけ聞く分なら凄く楽そうに聞こえるのだけど、問題はその重さだ。
ドワーフの方々の筋力では、片手で上下に動かす事が出来るのだけど…人間の子供の力だとそうはいかない。
全身をフルに活用して、ほぼ毎日スクワットをするかのように動かさないと水が出ない。
レバーを下に下げる時は上から押さえつける様にしてしゃがみ込み、上に持ち上げる時はレバーを下から上に飛び上がるかのように勢いを付けないと上がらないのだ。
「ほれ、早く水を貯めろ!」
「は…はい!」
ドワーフの人達は、鍛冶や製鉄などで大量の水を使う。
中には飲み水としても使用するのだが、1回の飲む量も半端が無い。
僕は井戸の蛇口の前にあるタライに水を貯めないといけない。
なぜなら、貯まったと思ったその場でドワーフの人達が水を汲んで行くからだ。
それも大きな樽に入れて持っていく為にすぐに無くなるので、食事の時以外は休み暇がない。
「ほら、水が足らんぞ!」
「は…はい!」
僕は必死になって上下運動を繰り返している。
重りを付けたスクワットをしているかのような錯覚に陥る。
確かに修業としては、これ程過酷な物は無い。
だが、この位はまだ序の口という話だった。
僕はこの先の修業に耐えられるのだろうか?
「ほれ、手が止まっているぞ‼」
「は…はい‼」
とりあえず考えるのは後回しにして…いまは全力でこの修業をやり遂げようと思った。
・・・・・・・・・一方、トランドオーケス城の高校生達は?・・・・・・・・・
「勇者魔法…トリニティスパーク!」
「獄炎魔法…ヘルフレア!」
「聖女魔法…天の裁き!」
エオの光の魔法が人形を串刺しにし、セソの魔法が人形を一瞬で灰にした。
クケコの魔法は天から光の柱が降り注ぐと、広範囲の地面に穴を開けたのだった。
「エオ様もセソ様もクケコ様も素晴らしいです! こんなに早くジョブの特性を習得なさるなんて…」
「王女様! これも皆さんの指導の賜物です!」
私はエオとセソに変わって発言をした。
「これで、明日の討伐には万全に整いました。」
「素晴らしいです! ですが、実戦はまた違う物なので、決して奢らずに事に当たって下さい!」
「はい!」
私達3人は感触を確かめ合っていた。
これなら旅に出ても立ち回れると…
「では明日の討伐には、騎士団が護衛に着きますので…」
「私達だけで行動ではないのですか? 一応、この周辺の地図や知識は頭に入ってはいますが?」
「いえ、討伐の初陣なので念の為です。 基本は3人で戦って貰い、騎士団はあくまで補助という形で動きますので…」
「わかりました。 そうですよね、初の実戦では失敗する可能性もありますから…」
私に変わり、セソが言った。
そしてセソは小声で私に言った。
「クケコ、逸る気持ちは分からなくはないが…もう少し冷静にな!」
「そうだね、私達の考えを読まれて行動を制限される可能性があるかもしれないし…」
戦いの術を学び、実戦を想定した戦闘も行った。
だけどそれは、動かない的である人形に魔法を当てたり、顔なじみの騎士達との戦闘訓練というだけで見ず知らずの魔物との戦闘は一度も行ってない。
この辺の知識や地図も頭に入れていはいるけど、実際に城の外には出た事が無いので安心は出来ない。
本当ならすぐにでも飛び出してテト君を探しに行きたいというのが本音だ。
でも、敷いては事を仕損じる…という言葉がある様に、焦りは禁物だった。
私は空に向かって祈った。
すると、王女様から声を掛けられた。
「明日の討伐成功の祈りですか?」
「はい、皆無事に帰って来れますようにという…」
「立派な心掛けですね。」
そう言って王女様は去って行った。
私が祈っていたのは明日の事ではなく、テト君と無事に会えますようにという事だった。
「もう少し…もう少し待っていてね、必ず迎えに行くから…待っていてテト君!」
・・・・・・・・・テトに戻る・・・・・・・・・
僕は井戸のレバーを動かしすぎて、へとへとになっていた。
「そろそろ夕食の時間だから、この修業も開放される…筈?」
そう思っていたが、また水を要求された。
僕は気力を振り絞ってレバーを動かしていると…急に体の疲れが無くなった感じがして、レバーが軽く感じた。
「なんだか、誰かに励まされた様な気がする!」
僕は夕食までの時間の間、何度も水を要求されたが…
体は疲れてはいたものの、まだまだ元気が漲っている感じがしていたのだった。
クケコの祈りが効いたのだろうか?
だが、テトはその事に気付いていなかった。
皆夕食時は飯を喰いながら酒盛りをする為に、朝…というよりも昼近くになって動き出す。
その代わり、夜遅くまで仕事をする事があり…夕食はほぼ夜中で朝方まで酒盛りをするという毎日を送っている。
僕もこの生活にようやく慣れ始めたので、皆と同じ時間に眠りに就き、朝も皆と同じ時間に起きるのだった。
でもこれ…健康的な生活なのだろうか?
「よし、テト! 今日も昨日の続きで同じ修業をするぞ!」
「はい、ギムさん!」
ギムの修業は、ハッキリ言ってやる事はただ1つ。
井戸のレバーを上下に動かして水を出す事。
これだけ聞く分なら凄く楽そうに聞こえるのだけど、問題はその重さだ。
ドワーフの方々の筋力では、片手で上下に動かす事が出来るのだけど…人間の子供の力だとそうはいかない。
全身をフルに活用して、ほぼ毎日スクワットをするかのように動かさないと水が出ない。
レバーを下に下げる時は上から押さえつける様にしてしゃがみ込み、上に持ち上げる時はレバーを下から上に飛び上がるかのように勢いを付けないと上がらないのだ。
「ほれ、早く水を貯めろ!」
「は…はい!」
ドワーフの人達は、鍛冶や製鉄などで大量の水を使う。
中には飲み水としても使用するのだが、1回の飲む量も半端が無い。
僕は井戸の蛇口の前にあるタライに水を貯めないといけない。
なぜなら、貯まったと思ったその場でドワーフの人達が水を汲んで行くからだ。
それも大きな樽に入れて持っていく為にすぐに無くなるので、食事の時以外は休み暇がない。
「ほら、水が足らんぞ!」
「は…はい!」
僕は必死になって上下運動を繰り返している。
重りを付けたスクワットをしているかのような錯覚に陥る。
確かに修業としては、これ程過酷な物は無い。
だが、この位はまだ序の口という話だった。
僕はこの先の修業に耐えられるのだろうか?
「ほれ、手が止まっているぞ‼」
「は…はい‼」
とりあえず考えるのは後回しにして…いまは全力でこの修業をやり遂げようと思った。
・・・・・・・・・一方、トランドオーケス城の高校生達は?・・・・・・・・・
「勇者魔法…トリニティスパーク!」
「獄炎魔法…ヘルフレア!」
「聖女魔法…天の裁き!」
エオの光の魔法が人形を串刺しにし、セソの魔法が人形を一瞬で灰にした。
クケコの魔法は天から光の柱が降り注ぐと、広範囲の地面に穴を開けたのだった。
「エオ様もセソ様もクケコ様も素晴らしいです! こんなに早くジョブの特性を習得なさるなんて…」
「王女様! これも皆さんの指導の賜物です!」
私はエオとセソに変わって発言をした。
「これで、明日の討伐には万全に整いました。」
「素晴らしいです! ですが、実戦はまた違う物なので、決して奢らずに事に当たって下さい!」
「はい!」
私達3人は感触を確かめ合っていた。
これなら旅に出ても立ち回れると…
「では明日の討伐には、騎士団が護衛に着きますので…」
「私達だけで行動ではないのですか? 一応、この周辺の地図や知識は頭に入ってはいますが?」
「いえ、討伐の初陣なので念の為です。 基本は3人で戦って貰い、騎士団はあくまで補助という形で動きますので…」
「わかりました。 そうですよね、初の実戦では失敗する可能性もありますから…」
私に変わり、セソが言った。
そしてセソは小声で私に言った。
「クケコ、逸る気持ちは分からなくはないが…もう少し冷静にな!」
「そうだね、私達の考えを読まれて行動を制限される可能性があるかもしれないし…」
戦いの術を学び、実戦を想定した戦闘も行った。
だけどそれは、動かない的である人形に魔法を当てたり、顔なじみの騎士達との戦闘訓練というだけで見ず知らずの魔物との戦闘は一度も行ってない。
この辺の知識や地図も頭に入れていはいるけど、実際に城の外には出た事が無いので安心は出来ない。
本当ならすぐにでも飛び出してテト君を探しに行きたいというのが本音だ。
でも、敷いては事を仕損じる…という言葉がある様に、焦りは禁物だった。
私は空に向かって祈った。
すると、王女様から声を掛けられた。
「明日の討伐成功の祈りですか?」
「はい、皆無事に帰って来れますようにという…」
「立派な心掛けですね。」
そう言って王女様は去って行った。
私が祈っていたのは明日の事ではなく、テト君と無事に会えますようにという事だった。
「もう少し…もう少し待っていてね、必ず迎えに行くから…待っていてテト君!」
・・・・・・・・・テトに戻る・・・・・・・・・
僕は井戸のレバーを動かしすぎて、へとへとになっていた。
「そろそろ夕食の時間だから、この修業も開放される…筈?」
そう思っていたが、また水を要求された。
僕は気力を振り絞ってレバーを動かしていると…急に体の疲れが無くなった感じがして、レバーが軽く感じた。
「なんだか、誰かに励まされた様な気がする!」
僕は夕食までの時間の間、何度も水を要求されたが…
体は疲れてはいたものの、まだまだ元気が漲っている感じがしていたのだった。
クケコの祈りが効いたのだろうか?
だが、テトはその事に気付いていなかった。
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