万能聖女は、今日も誰かに制裁を与える為に拳を振るまう!

アノマロカリス

文字の大きさ
10 / 12

第九話

しおりを挟む
 私は岩山の洞穴の中から外の様子を窺っていた。
 …とはいえ、洞穴の入り口が開いている訳ではなく…隠蔽魔法で山の斜面と同じ様に偽装しているのでバレる事はない。
 更に隠蔽魔法は、外側からは普通の山の斜面にしか見えないけど、内側からなら透けて見えるのである。
 
 「ひぃ…ふぅ…みぃ………20人近くいるわね?」
 《そういえば、セレナは小屋に何か仕掛けてなかった?》
 「手紙を書いて置いておいた。 多分今頃…?」

 小屋の扉を蹴り飛ばした若者の1人が別な物に手紙を渡していた。
 その手紙を松明で照らしながら若者達は内容を見た。
 そして手紙の内容を確認した若者の1人が、手紙を丸めて地面に叩き付けると…他の者達に命じて若者達は散って行った。

 《何かだいぶ怒っていたみたいだけど…ここには居ないってだけを書いた訳じゃない様ね?》
 「少し怒らせる内容を書いておいた。 散って行ったのは、私を探しに行ったんだと思う。」

 ちなみに私が手紙に書いた内容はこうだった。

 【あ~んなバレバレの尾行で後ろから後を付けておいて気付かないと思った訳? しかも監視を1人も残さずに帰って行くなんて馬鹿なの? そういう訳で、皆が居なくなった事を見計らって私はこの山から退散します。 今頃はゼムスカーラン王国との国境辺りに着いているかもね。 無駄な事を御苦労様ね、バイバ~イ!】

 「…とまぁ、こんな感じで書いておいたので。」
 《それは怒るわよ! それにしても、ゼムスカーラン王国との国境ねぇ? カロナック王国もゼムスカーラン王国も行く気は無いのよね?》
 「それなんだけど…考えが変わったわ! このままだと懸賞金の所為で船にも乗れないし、それどころか他の街にすら入れない可能性だってあるから、今度こそあの馬鹿王子に会って懸賞金の件を無くさせるわ!」
 《う~ん?》
 「どうしたの、フォルティーナ?」
 《2つの懸賞金の用紙を見た時に、生死を問わず…ではなかったよね?》
 「そうね、必ず生かして連れて来いって書いてあったけど。」
 
 フォルティーナからは何か考えて唸っている声が聞こえて来た。
 何だろう?

 《仮によ…仮に両国がセレナに懸賞金を出した理由を考えてみたんだけど、1つはこの大陸から出させない様にするのが目的なんじゃないかしら?》
 「その可能性はあるかもね。 懸賞金を出された賞金首は、好き好んで街の中に入ろうとはしない筈だし…更に警戒の厳しい港にはまず立ち寄らないでしょうしね。」
 《もう1つは、どっちの国もセレナを罰するのが目的では無くて…呼び寄せるのが目的なんじゃないかな?》
 「カロナック王国に関しては、会合から戻って来た国王夫妻が王国のあり様を見て…という可能性はあるかも知れないわね。 もしくは馬鹿王子が何かいらない事を吹き込んだ可能性もあるかもしれないけど。 ゼムスカーラン王国はどう見てもカルイオの私怨が絡んでいる様にしか思えないけど?」

 カロナック王国は一度は魔物の軍勢によって壊滅させられた。
 だけどあれから4年も経過していたら、完全ではなくても幾らかは復興しているのかな?

 「これからカロナック王国に行ってみるわ!」
 《こんな夜遅くに? 明日にしたら?》
 「…うん、それもそうね。 それに先程の若者達の数人が残って周りで私の痕跡を探しているみたいだし。」

 余程の馬鹿じゃなければ、手紙の内容を全て真に受けないか。
 その為に数人の残しているみたいだけど、生憎そこからは痕跡は追えないのよねぇ。
 私は洞穴の奥にある寝室で眠りに就いた。
 そして翌日、洞穴の中にある生活雑貨を全て収納魔法に入れてから外の様子を窺ってみた。

 「外には居ないみたいだけど…?」
 《いえ、小屋の中に何人かいるみたいよ。》
 「なら、ここから転移魔法でカロナック王国に向かうとするわ。 下手に外に出て行っても…まぁ、村人では相手にならないけど下手に騒がれるのも面倒だしね。」

 私は転移魔法を使ってカロナック王国から少し離れた高台の村にやって来た。
 ここは以前に、カロナック王国が壊滅して行く様を見ていた場所だった。

 「完全に復元は無理だったみたいだけど、幾らかはマシになっているみたいね?」
 《カロナック王国は以前見た時は…それ相応にふさわしい建式ある作りだったけど、今は見る影もないわね。》
 
 私は一応変装をしてからカロナック王国の城下町の門の前に転移をした。
 入る時はすんなり入れたけど、城下町は…思い出の中の街並みではなかったが、幾らか復興して生活が出来る位にはなっていた。

 「さ~て、馬鹿王子は何処にいるのかな? 事と次第によっては、半殺しにして…」
 《セレナ、目的が変わっているわよ。》

 私は久々のカロナック王国を見ながら城を目指して行った。
 そして…?
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。 しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。 絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。 一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。 これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」 婚約者として五年間尽くしたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。 他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...