万能聖女は、今日も誰かに制裁を与える為に拳を振るまう!

アノマロカリス

文字の大きさ
9 / 12

第八話

しおりを挟む
 「さて、村人達にどう説明したら良いのだろう?」

 あの元家族が好きなだけ騒ぎ立ててくれたお陰で、私の名前も村人達にバレたと思う。
 お年を召した方々は大丈夫だとは思うんだけど、若者になると話が変わってくるのよね。
 どの世界でも、若者は都会に憧れる傾向がある。
 そしていざ都会に行くと…成功者では無い者達の大半は現実を知って打ちのめされる。
 田舎の若者は大して資金も商売の腕も無い者達は、都会に行った所で成功する物は本の一握りで、観光をして帰って行くというのが関の山だ。
 そして大体口をそろえて言う事と言えば、「金があったら…」と嘆く者が多い。
 余生を田舎でゆっくり過ごしたいという年寄りはともかく、若者に関しては別な話で…?
 カロナック王国では懸賞金で金貨2000枚、ゼムスカーラン王国では懸賞金で金貨5000枚がこの村にいると解れば、若者達は逃す手はないと思うだろう。

 「セーレナリアさん…ではなかったのだな。」
 「申し訳ありません、別に犯罪者という訳ではないのですが偽名を使わさせて頂きました。」
 「セレナ様と仰いますと、カロナック王国の聖女様ですよね?」
 「はい…そこの馬鹿王子が身分が低く聖女というだけで王族に嫁入りするのが気に入らなくて、国王と王妃様がいない時を見計らって自分の言う事を聞く都合の良い女性を用意して私を婚約破棄したのですが、同時に国外追放を言い渡されて腹が立ったのでカロナック王国に張ってある結界を解除したら、王国が壊滅したのは私の所為だと言い触らしたみたいで…」
 「どうしようもない王子だな。 では、ゼムスカーラン王国での事は?」
 「私はゼムスカーラン王国で、王国から勇者に認定された者達と行動を共にしていたのですが、とにかくこの勇者が女癖が悪い奴で私にも手を出して来まして、腹が立ったのでボコボコにのしてから使えこなせない聖剣を奪ったらこうなってしまって。」

 まぁ、あの浪費癖がある馬鹿勇者に金貨5000枚も支払える金額なんかない所を見ると、国王に私のありもしない戯言を言って金を出させたのでしょう。
 本当にどっちの馬鹿も碌な事をしないわね?

 「聖女は世界に誕生して世界に発表されておられるが、まだ勇者が世界に誕生したという者が現れていないから各国が勇者を作りだして任命させているのだろうけど、ゼムスカーラン王国の勇者はそんなに禄でもない奴なのか?」
 「とてもが魔王を倒せる存在だとは思えませんね。 他の王国にも勇者が誕生しているので、そちらに期待をしたい所ですが…」
 
 勇者と聖女は世界に必ず現れる存在だった。
 私は聖女として誕生し、世界に公表されたのだが…?
 勇者はまだ誕生していなくて、国民達を安心させる為に各国の王国側から勇者を誕生させて発表するという感じだった。
 ただこれだけはどうしても謎なんだけど、ゼムスカーラン王国でどうしてカルイオみたいなのが勇者に選ばれたのかが意味不明だった。
 王族の関係者だったとかという話だったら納得は出来るんだけど、勇者認定されるためには厳しい条件をクリアした者だけが選ばれるという基準になっているんだけど、どう考えてもアレが最終迄残ったとは考え難かった。
 
 「さて、今回私事でご迷惑をお掛けしましたので体調の悪い方から順に治療魔法を施してあげますわ。」
 「おぉ、それはありがたい! 実はこの村の年寄りたちはどこかしらの痛持ちなのでな。」

 私は各家を村長さんと共に回って治療魔法を施して行った。
 なんだけど、各家を回っている間は若者の姿を一切見なかった。
 私は嫌な予感がして、やる事をやったら村の好意で宿泊をさせてくれるという話を断り山に帰って行った。

 《離れた場所に数人がこちらの様子を窺っているわね?》
 「でしょうね…お年寄りの人達は私の事は何も干渉しないとは言ってくれたけど、若者達は別よね?」

 私は様子を窺いながら山に帰って行くのだが、どうやらここで仕掛ける気はない所を見ると私のねぐらを確認するみたいだった。
 私は山に着くと洞穴に入る事はせずに、道具をしまう為に作った掘っ立て小屋2号の中に入った。
 前回作った粗末な小屋とは違って、今回の掘っ立て小屋は造りはしっかりしていて少し大きい。
 
 「ここで仕掛けて来る…かな?」
 《違うみたいね、全員引き挙げて行ったみたいよ。》
 「…という事は、暗くなるのを待ってから攻める気かしら?」

 私は畑にある成長途中の野菜を回収した。
 そして掘っ立て小屋2号の中の道具も一緒に収納魔法に入れた。
 全員引き挙げて行ったとはいえ、もしも監視がいる場合を懸念して念の為に掘っ立て小屋2号から転移魔法を使って洞穴の中に転移した。
 これでもしも監視人がいたとしても、私は掘っ立て小屋の中に入った事になるから狙いはこっちを狙う筈?
 私は洞穴の入り口を強固な結界を張り巡らせた。

 「来るとしたら夜ね?」
 《恐らく…?》

 私は中から様子を窺っていた。
 そして夕暮れから夜の闇が広がっていった頃…村人達が松明を灯してやって来たのだった。
 
 「さて、どうしようかしら?」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。 しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。 絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。 一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。 これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」 婚約者として五年間尽くしたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。 他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...