真中流マネジメント

“メンタル強者”は何が違うのか
~「結果」でなく「内容」だけを意識する選手~

2016.06.10 公式 真中流マネジメント 第6回

「結果」ではなく「内容」を考えることが次へのステップ

今この瞬間に最大のパフォーマンスを発揮するためにどうしたらいいか
常に状況を冷静に見極める「分析力」と「平常心」を持つ選手が強い

前回の連載の中で、「緊張」というものについて少しだけ触れました。アスリートにとって、「緊張」などのメンタル面の成長は、永遠の課題といえるでしょう。プロとして、自分のパフォーマンスを試合で最大限に発揮するためには、日々の練習はもとより、このメンタルのコントロールがとても重要になります。事実、メンタル面に弱点を抱えた選手が、非凡な素質がありながらも、それなりの選手で終わってしまうケースは、球界だけでなくよくある話です。
そこで今回は、私が選手たちを指導するうえで意識しているメンタルコントロールについて触れてみたいと思います。

「根性で通用するのはアマチュアまで」
これは、野村監督が常々言っていた言葉です。
「根性」というと、声を出したり、とにかく一生懸命がむしゃらにやったりと、どことなく力んでいるイメージがわきます。

もちろん、根性は大切です。
ただし、プロに入ると全員が生活を賭けて一生懸命やっていますし、根性というレベルだけでは到底通用しません。プロとして長く活躍していくには、持って生まれた素質と技術に加え、総合力が必要です。この総合力とはまさしく、素質と身につけた技術をいかにコントロールできるかということになります。
言い換えれば、今この瞬間に最大のパフォーマンスを発揮するためにどうしたらいいか、目の前で何が起こっているか、今どういう状況なのかを冷静に見極める“分析力”であり“平常心”ともいえます。

まず、自分をコントロールできずに実力が発揮できない選手の多くは、「結果」ばかりにフォーカスしすぎている傾向があります。もちろん、プロとして結果にこだわることは大切です。しかし、試合中の打席の中やマウンドの上で「結果」を見過ぎると、その瞬間、目の前の状況を見極めることがおろそかになってしまいがちです。
私がよく選手に伝えているのは、「結果」でなく「内容」を考えろ、ということです。

「この打席、絶対ヒットを打ちたい」
これが結果ばかり見ている選手の心境です。こうした気持ちで打席に入っている選手は、力んでいるのがすぐに分かります。

しかし本来意識すべきは「どうずればその結果に辿りつけるか」ということです。例えば、相手投手の実力や調子を見極めつつ、「この打席は、ストレートのインコースだけを強く振ろう」とか「逆方向に強くミートしよう」とか――「何をするか」に具体的にフォーカスして打席に臨むことです。ピッチャーでいうと、「絶対に三振を取ってやる」ではなく、「指にかかったボールを、あのコーナーに投げ込む」といったような、より具体的な考え方ですね。

当たり前のようにも思いますが、試合中にこうしたアプローチでプレーするのは意外と難しいものです。どんな状況にあっても、「内容」に着目してプレーできる選手は、集中力も高く、チャンスに強く、きちんと結果を出します。

結果を考えれば「邪心」、内容を考えれば「無心」

常に今、その瞬間に取り組むことにフォーカスできる選手が
平常心を保ち、結果としてよい成績を残すことができる

極論を言えば、悪い結果に終わろうが、それはしょうがないことです。結果は必ずどっちかに出てしまいます。そこには左右されず、自分が次のプレーで何に対して集中するのがよいのかを考える方が、平常心が維持でき、ひいてはよい結果に結びつくものです。

よく、「無心でプレーする」という言葉がありますが、私は無心という状態はないと思っています。必ず何かを考えています。それこそが「やることが明確になっていて、そのことだけに集中している状態」なのだと思います。ですから、力んでいる選手を見かけると、「この状況を考えたら、ストレートでは勝負してこないよな? だから、高めに浮いてくる変化球を、強く振ってこい。それだけを意識しろ」と、今やるべきことだけを伝えるようにしています。

私も、若いときは結果のことばかり考えていました。「ここで打ったらレギュラーに定着できる」とポジティブに考えたり、ネガティブになって「ここで打てなかったら2軍落ちだ」と考えたり……
いずれにしても、結果を考えすぎて邪心ばかりが浮かんでしまい、打席の中でやることがまったく明確になっていない。それでは打てるはずがありません。

ベテランになり、ある程度立場も確立されてくると、「やること」に関してだけをよく考えるようになりました。結果を考えると「邪心」、内容を考えれば「無心」と、その違いは明確ですね。今、その瞬間に取り組むことにフォーカスできる選手が、平常心を保ち、結果として成績を残すことができます。

ちょっとここで話は逸れますが、「持って生まれた素質」と「技術」という話をしましたが、前者の素質型の代表といえば、池山隆寛さんでした。体は大きく、走ったらめちゃくちゃ速い、投げたら肩は強いという圧倒的身体能力。華もあって、まさにスーパースター。「THIS IS プロ野球」といった人でした。こういう、どう背伸びしたって敵わない選手もいます。

一方で、後者の技術型の典型といえば、宮本慎也でしょう。入団当初は、バッティングは期待されておらず、守備の人という位置付けでした。それが、晩年は3割を打つことが普通になり、最終的には2000本安打も達成しました。彼の練習量や追い込み方は尋常じゃありませんでしたからね。毎日早出でバッティング練習をしていましたし、彼の練習スタイルが、後のヤクルトのスタンダードになったくらいです。まさに、努力で掴んだ2000本安打といえるでしょう。あと、彼は信じられないほど負けず嫌いです。それが、彼の練習の原動力だったのかもしれませんね。

コンスタントに成績を残すには、プロとしての「責任感」が重要

プロとしての責任を感じれば感じるほどに襲ってくる「緊張」という魔物。
その中で選手がプレーの精度の高さを維持するのは本当に大変なこと。

話を戻しましょう。
充実したメンタルで試合に臨み、コンスタントに成績を残すうえで、もう一つ重要なのは、プロとしての「責任感」です。これが、プロとアマチュアを分ける大きな要素です。
それは言い換えれば、プロとしての「自覚」ともいえます。
まず、プロらしくいるというのは、「当たり前のことを当たり前にやる」ということです。ショートゴロが飛んだら、確実にアウトにする。バントは決めて当たり前。こういった基本のプレーの精度が疎かでは、プロとして許されません。

もっとも、だからこそ非常に緊張します。それゆえにミスも起こる。しかしプロ意識を持ち、こうした基礎を確実に、精度高くこなせる選手こそ、さらに上のレベルの「魅せるプレー」に繋がっていくのです。
と口で言うのは簡単なのですが、責任を感じれば感じるほどに緊張が襲ってきますから、プレーの精度の高さを維持するのは大変なことです。

例えば、私の時代でいうと、大魔神こと佐々木主浩投手と対戦するときなどはほとんど緊張しませんでした。なぜなら、打てなくて当たり前というレベルの投手だったからです。同じように、晩年に代打専門になりましたが、代打というのはそこまで緊張しないのです。そもそもそんなに簡単に打てませんからね。

それよりも、守備固めで出場するときは本当に緊張します。終盤1点差で勝っていて、外野の守備に送られるときなどは、ミスは絶対に許されません。こんなに緊張することはありませんよね。
「やって当たり前」という、裏を返せば「当たり前という責任」は、プロ野球選手として背負っていかなくてはならない宿命のようなものです。そのプレッシャーと常に闘い、打ち破っていくプロ意識の高い選手こそが、一流といえるのだと思います。

責任という意味では、選手の私生活や野球以外の部分の要素が大きく影響することももちろんあります。
例えば、私は入団1年目に巨人の斎藤雅樹さんからヒットを打ち、次の試合で槇原寛己さんからヒットを2本打ちました。当時の斎藤雅樹さんや槇原さんは、毎年のように20勝近くするエースピッチャー。そんな大投手からヒットをポンポンと打ったので、「プロとしてやっていけるんじゃないか」と生意気にも思っていました。
しかし、そこから一軍と二軍を行ったり来たり。正直、プロ野球選手である自分に満足していた感もあったと思うんですよね。

転機は、プロ4年目に結婚をし、子どもも生まれたあたりです。披露宴のとき、球団関係者がたくさんいるなかで、「俺、結婚して幸せにするとか言っているけど、このままじゃ本当にマズイな」と強く思ったことを覚えています。そこから、「守るものがあるんだ」と、一気に覚悟が固まりました。
「この世界で飯を食っていくんだ」という覚悟。こうした覚悟が、個々の選手のモチベーション、責任、プロ意識に繋がる大切な一因となりますから、監督として選手のそういった部分にも気を配るよう意識していますね。

取材協力:高森勇旗

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プロフィール

真中満
真中満

1971年栃木県大田原市出身、宇都宮学園高等学校を経て日本大学卒業後1992年にドラフト3位で東京ヤクルトスワローズに入団。
2001年は打率3割を超えリーグ優勝、日本一に貢献。2008年現役を引退。
2015年東京ヤクルトスワローズ監督就任1年目にして2年連続最下位だったチームをセ・リーグ優勝に導く。
2017年シーズン最終戦をもって監督を退任。

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