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天下人
天下の差配(エロ度☆☆☆☆☆)
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小西邸に辿り着いた時には既に福島軍による討ち入りは始まっていた。
パンパンと鳴り響く鉄砲の破裂音に、人とひとが殺し合う怒号の声、そして、死に際した断末魔。
それらの音と、飛び交う血飛沫が否応なくそれを実感させる。
此処は、戦場だ。
「殿、危のうございます。お下がりください」
如水が俺を後ろに下げようとするが、ふと気になる物を見つけ、思いとどまる。
そこにいた軍は福島軍と小西軍だけでなく、別の軍旗が見えたのだ。
「如水、あれは何処の軍だ?」
「扇子に月丸。佐竹殿の軍にございます」
「・・・・・・如水、清正、長政。あれは何だ? 戦場か?」
「「「はっ!」」」
「そうであるなら父上の惣無事令(そうぶじれい)に反している。その認識で良いな?」
「もちろんでございます」
「し、しかし」「そ、そうとも限りますまい」
真っ先に如水が返答するが、清正や長政は正則を助けたいのだろう、同意を避けるように口ごもる。
「いや、反している。如水、例のものを掲げよ。両賊軍を鎮圧する。武装解除を行うまで徹底的に攻めよ。指揮は如水に任せる」
「ははっ!」
如水の指示で、新たな旗指物・豊臣家の五七の桐の紋が掲げられる。
この紋を今掲げられる者は現在この世にただ二人だけ。
俺と豊臣秀次のみ。
そして、これが掲げられた軍に抵抗することがどういうことか。
「出来る限り殺すなよ」
「ご安心ください。此処は直ぐにでも鎮圧出来ましょう」
「そうか、正則と行長、善宣を確保し次第、次に向かうぞ!」
如水もこの言葉にニヤリと口元を歪める。
「と、殿。次とは?」
対して清正と長政は理解していない。
最初から狙いは家康しかいない。
「清正、お前は正則と共に起訴状を何度も家康に送っていたな?」
「は? はい。・・・・・・ま、まさか」
「天下を支える諸将の訴えを家臣である家康が差し止め、俺に伝えもしないのは、不満を膨らませるだけの行為だ。それはもはや、謀反を疑うべきである!」
「そ、それは!?」
「このまま、聚楽第に行く。清正、長政、不服か?」
「「・・・・・・御意に!!」」
何か言いたげではあるが、言えるわけもない。
そうしている間に既に豊臣の家紋の前に無抵抗となった福島、小西、佐竹軍の将校が拘束されていく。
そして、先ずは正則が俺の面前に連れて来られる。
「・・・・・・ま、まさか。秀頼様!?」
「なんだ? 秀次叔父上と思ったのか?」
「い、いえ。しかし」
「どうでも良い。正則、行軍に加われ。処分は後だ」
「な、何故某が裁かれるのですか!?」
「父上は惣無事令で私闘を禁じた。忘れたとは言わせないぞ!」
「・・・・・・は!」
「そして、お前達の不満は差し止めた者に問題がある。俺はそんな事を知らなかった」
実際に俺には清正達の訴えは届いていない。
くノ一たちの調査と、如水の情報、それに前世の知識で分かっていただけだ。
「結果、こういった事となっている以上、重大な失態だったと考えるべきである。如水、そうだな?」
「ははっ! それもまた一面の見方かと」
「それは!? しかし、そもそもの問題は!」
「それは別に吟味するものとする。それでは不服か?」
「・・・・・・承知!」
これで、福島軍も吸収して約3000の兵力。
まして豊臣の家紋の前には聚楽第も直ぐに開門するはず。
「殿、小西殿、佐竹殿も後軍に加わることを承知いたしました」
「ご苦労、如水。では、参ろうか?」
「ははっ!」
そして、聚楽第に向け3000強となった豊臣軍は京の街を走る。
「桜、三成の居場所は分かるか?」
「・・・・・・聚楽第のようでございます」
「ふん、ならばちょうど良い」
「しかし、徳川殿が聚楽第から姿を消した、と」
「・・・・・・なに?」
「見張っていた者からの報告にございます」
「何処に行った?」
「ただ今探らせておりますが、未だ何とも・・・・・・」
「如水!」
「・・・・・・徳川殿はかつて伊賀より遠江に逃れたとか・・・・・・」
「桜! お前も伊賀者だったな?」
「はっ! しかし、徳川殿配下の服部殿は伊賀の上忍の出自。私でも追えぬかもしれませぬ」
・・・・・・家康を追うか?
いや、本来なら家康が京を抜け出たということは、つまり役目を放棄したものといえる。
「如水、家康は俺の許しなく京を離れた。これを各地の大名に伝えよ。俺が怒っている、とな。さて、このまま聚楽第に向かうぞ! 三成を確保した後に今日は聚楽第に泊まることにする」
「ははっ!」
その後は何事も無く聚楽第に入り、三成も確保することが出来た。
長旅と長時間の乗馬でくたくたになっていたので、桜を抱き枕にぐっすりと泥のように眠った。
パンパンと鳴り響く鉄砲の破裂音に、人とひとが殺し合う怒号の声、そして、死に際した断末魔。
それらの音と、飛び交う血飛沫が否応なくそれを実感させる。
此処は、戦場だ。
「殿、危のうございます。お下がりください」
如水が俺を後ろに下げようとするが、ふと気になる物を見つけ、思いとどまる。
そこにいた軍は福島軍と小西軍だけでなく、別の軍旗が見えたのだ。
「如水、あれは何処の軍だ?」
「扇子に月丸。佐竹殿の軍にございます」
「・・・・・・如水、清正、長政。あれは何だ? 戦場か?」
「「「はっ!」」」
「そうであるなら父上の惣無事令(そうぶじれい)に反している。その認識で良いな?」
「もちろんでございます」
「し、しかし」「そ、そうとも限りますまい」
真っ先に如水が返答するが、清正や長政は正則を助けたいのだろう、同意を避けるように口ごもる。
「いや、反している。如水、例のものを掲げよ。両賊軍を鎮圧する。武装解除を行うまで徹底的に攻めよ。指揮は如水に任せる」
「ははっ!」
如水の指示で、新たな旗指物・豊臣家の五七の桐の紋が掲げられる。
この紋を今掲げられる者は現在この世にただ二人だけ。
俺と豊臣秀次のみ。
そして、これが掲げられた軍に抵抗することがどういうことか。
「出来る限り殺すなよ」
「ご安心ください。此処は直ぐにでも鎮圧出来ましょう」
「そうか、正則と行長、善宣を確保し次第、次に向かうぞ!」
如水もこの言葉にニヤリと口元を歪める。
「と、殿。次とは?」
対して清正と長政は理解していない。
最初から狙いは家康しかいない。
「清正、お前は正則と共に起訴状を何度も家康に送っていたな?」
「は? はい。・・・・・・ま、まさか」
「天下を支える諸将の訴えを家臣である家康が差し止め、俺に伝えもしないのは、不満を膨らませるだけの行為だ。それはもはや、謀反を疑うべきである!」
「そ、それは!?」
「このまま、聚楽第に行く。清正、長政、不服か?」
「「・・・・・・御意に!!」」
何か言いたげではあるが、言えるわけもない。
そうしている間に既に豊臣の家紋の前に無抵抗となった福島、小西、佐竹軍の将校が拘束されていく。
そして、先ずは正則が俺の面前に連れて来られる。
「・・・・・・ま、まさか。秀頼様!?」
「なんだ? 秀次叔父上と思ったのか?」
「い、いえ。しかし」
「どうでも良い。正則、行軍に加われ。処分は後だ」
「な、何故某が裁かれるのですか!?」
「父上は惣無事令で私闘を禁じた。忘れたとは言わせないぞ!」
「・・・・・・は!」
「そして、お前達の不満は差し止めた者に問題がある。俺はそんな事を知らなかった」
実際に俺には清正達の訴えは届いていない。
くノ一たちの調査と、如水の情報、それに前世の知識で分かっていただけだ。
「結果、こういった事となっている以上、重大な失態だったと考えるべきである。如水、そうだな?」
「ははっ! それもまた一面の見方かと」
「それは!? しかし、そもそもの問題は!」
「それは別に吟味するものとする。それでは不服か?」
「・・・・・・承知!」
これで、福島軍も吸収して約3000の兵力。
まして豊臣の家紋の前には聚楽第も直ぐに開門するはず。
「殿、小西殿、佐竹殿も後軍に加わることを承知いたしました」
「ご苦労、如水。では、参ろうか?」
「ははっ!」
そして、聚楽第に向け3000強となった豊臣軍は京の街を走る。
「桜、三成の居場所は分かるか?」
「・・・・・・聚楽第のようでございます」
「ふん、ならばちょうど良い」
「しかし、徳川殿が聚楽第から姿を消した、と」
「・・・・・・なに?」
「見張っていた者からの報告にございます」
「何処に行った?」
「ただ今探らせておりますが、未だ何とも・・・・・・」
「如水!」
「・・・・・・徳川殿はかつて伊賀より遠江に逃れたとか・・・・・・」
「桜! お前も伊賀者だったな?」
「はっ! しかし、徳川殿配下の服部殿は伊賀の上忍の出自。私でも追えぬかもしれませぬ」
・・・・・・家康を追うか?
いや、本来なら家康が京を抜け出たということは、つまり役目を放棄したものといえる。
「如水、家康は俺の許しなく京を離れた。これを各地の大名に伝えよ。俺が怒っている、とな。さて、このまま聚楽第に向かうぞ! 三成を確保した後に今日は聚楽第に泊まることにする」
「ははっ!」
その後は何事も無く聚楽第に入り、三成も確保することが出来た。
長旅と長時間の乗馬でくたくたになっていたので、桜を抱き枕にぐっすりと泥のように眠った。
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