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武田義信

甲駿相三国同盟の萌芽

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 思い付きで三条卿への養子を提案したが、よくよく話を聞くと母上の姉が管領細川晴元に嫁いでいる! 俺の提案て不味くない? 不味いよね、何で簡単に賛成するんだよ母ちゃん父ちゃん! 何だ、子供は女の子ばかりなのか? 去年、三条の御爺様に産まれたのも女の子か、年下の叔母ね! やっぱり跡継ぎは欲しいよな、精力剤送るか!

 1番の問題は、俺の大叔父が近衛騎兵隊の出身で、皇室アルバムを正座して見せられていたことだ、尊敬する大叔父から受け継いだ帝への敬慕、帝に万が一の事が有ってはならない、三条家を帝の為にどう活用するか。 経済力がついた今なら、帝の為にやれることが有るはずだ! やはり三条家は支配下に置くべきだ、多少たしょう阿漕あこぎな手を使ってでもやり遂げて見せる。


『躑躅ヶ崎館 善信私室』

 「若殿、木綿の種が手に入りました。」
 飛影の配下が三河で種を手に入れたそうだ。

 「でかした、種を増やす為に時期を見て蒔こう、本格的な栽培は海を手に入れてからだ。」

 「何故でございますか? 何故今から本格的に栽培されないのですか?」

 「木綿栽培には多くの肥料が必要なんだ、今の甲斐で木綿を栽培すれば、それでなくても不足している食料不足に拍車がかかり、毎年飢饉に成ってしまう。後々の為、種を増やす為の栽培は、食料生産量を考慮しながら行うが、本作的な商業作物としての栽培は海を手に入れてからだ、海が手に入れば鰯を肥料にできる。」

 「承りました、浅慮なことを申してしまいました。お許しください。」

 「気にするな、何でも言ってくれなければ、儂の間違いを正すことが出来ない。これからも何でも言ってくれ、それが俺の為であり、民の為だ。」

 「承りました、肝に命じます。」


『躑躅ヶ崎館 信玄私室』

 「将軍家への工作は捗っておりますか?」

 「上手くいきそうだ、敵対している細川晴元の義弟の俺が、献金を打診したのが嬉しいようだ。」

 今日もまた、俺の料理を美味そうに貪りながら返事をしてくれた。
 因みに今日の料理は。

 1・手長海老の唐揚げ。

 2・独活うどの酢味噌和え。
  独活・酢・豆味噌

 3・豆腐田楽
  金気の唐辛子味噌。
  木気の梅肉
  火気のよもぎ味噌
  豆腐・唐辛子・米味噌・梅肉・蓬

 4・なまず味噌汁。
  鯰・麦味噌・葱

 5・鹿肉の塩焼き。
  鹿もも肉・塩
  
 5・玄米飯。

 6・糠漬け大根唐煎り。

 7・林檎餡の粟餅。
  干林檎を水飴で煮たタレを粟餅に掛けたもの

  木気は、梅肉・酢
  火気は、蓬・独活うど
  土気は、玄米・手長海老・粟
  金気は、大根・唐辛子
  水気は、味噌・塩

 「ありがとうございます。晴元伯父上は怒っておられませんか?」

 「合従連衡がっしょうれんこうは戦国の常じゃ、気にすることは無い。」

 「念のため、合戦続きの晴元伯父上は、刀傷用の油薬を贈ります。」

 俺は新しい薬を考えたのだ、薬効の検証は出来ていないが馬油と熊油によもぎ千振せんぶり南天なんてんの葉などの成分を含ませ刀傷用の薬として試作した。油脂は貴重な食用で、石鹸作りなどには使わないようしてきたが、命のかかる刀傷用の油薬に使うなら仕方が無い、食料生産も順調なので生産販売することを決断した。

 そうそう、この時代はのみしらみに噛まれるのは当たり前で、家には当たり前に沸いているのだが、俺には我慢ならなかった、そこで千振液をそこら中に撒いて殺虫した。勿論洗髪にも使用したし、肌着も千振液で染めて蚤や虱が近寄らないように予防している。

 肝心の三条公頼は、越前守護の朝倉孝景を頼って越前国に下向していたが、7月には京都に戻っていたようだ。越前下向中の6月には右大臣を辞退している、早く左大臣・太政大臣に成って貰わないと困る。


 天文14年1545年7月、今川義元が武田信玄に援軍を求めてきた。義元が北条氏に占拠されたままの河東を奪還すべく行動を開始したのだ。義元は武田家による仲介のほか、独自に北条氏との和睦の道を探り、京都より聖護院門跡道増の下向を請うて北条氏康との交渉を行ったのだが、このときは氏康が難色を示し不調に終わった。そのため義元は、引き続き武田家を仲介に和睦を模索しつつも、道増の帰洛後ただちに軍事行動を起こした。義元は、北関東において北条方と抗争していた山内上杉氏の上杉憲政に、北条氏の挟み撃ち作戦を持ちかけ同盟を結んだのだ。

7月下旬、義元は富士川を越え、善得寺に布陣した。信玄は俺・信繁叔父・板垣信方に国内を任せて義元と対面、対北条の作戦を話し合った。

8月22、信玄と義元が駿河から河東に侵攻した。氏康率いる北条軍は駿河に急行してこれに応戦してきた。この状況を見て山内上杉の上杉憲政は、上杉朝定や古河公方・足利晴氏らと連合し8万の大軍で河越城を包囲した。信玄と義元は、関東勢と同時に軍事行動に出たことで、北条軍の兵力を分断することに成功したのだ、前回の第1次河東一乱とは逆に挟み撃ちに成功したのだ。

 9月初旬には、信玄軍が義元軍に合流し、この連合軍の攻撃に押された北条軍は、吉原城を放棄し三島に退却した。

 9月16日には見捨てられた吉原城は開城した。そのままの勢いで今川軍は三島まで攻め入り、北条幻庵の守る長久保城を包囲し、今井狐橋などで合戦となった。関東では山内・扇谷連合の大軍に武蔵国河越城を包囲され北条氏康は窮地に陥った。

 進退窮まった北条氏康が信玄に仲介を頼んで来た、信玄は義元と氏康との交渉を仲介し10月下旬に河東の地を今川家に返還するという条件で和睦させた。

 11月初旬、今川家重臣・太原雪斎を交えて誓詞を交し合った後、北条氏は長久保城を今川氏に明け渡した、挟撃の片方を治めた氏康は河越城の戦いに打って出ることとなった。

 ここで関東勢と最後まで協力して、北条家を滅ぼす手も有ったのだが、それでは俺が考える最重要歴史転換合戦が起こらなくなる。だがらここは史実通りに成るよう、傍観していた。

 色々と迷いは有ったのだが、稼ぎに稼いだ銭で足軽を大量雇用する手は放棄した、これをやると、足軽が大量動員されている畿内動乱が、史実と違ってしまう可能性がある。1番の問題は尾張の織田信長だ、甲斐信濃で大量の足軽を雇えば信長の兵農分離が破綻するかもしれない。足軽の扶持相場が高騰するかもしれない、そうなれば信長は、一族内の抗争に負けてしまう可能性がある、それは断じて有ってはならない。その一方で、多少の武将は引き抜いても大丈夫と判断した。信長ほどの才能なら、引き抜かれた武将以外の有能な物を抜擢するだろう。そこで、素破のネットワークを利用して滝川一益を知行100石で召し抱えた。いろんな説があるが、上手くいけば一族の前田慶次が付いてくるかもしれない。


 9月に三河では、松平広忠が三河安祥城を攻めるも敗れた、これによって、松平氏の弱体化は、決定的なものとなった。

 10月に越後では、黒田秀忠が、守護代・長尾晴景の弟、景康・景房らを殺害して謀反を起こした。
長尾為景の後を継いだ晴景が病弱で統率力が無かったため、それを好機ととらえ独立しようと画策したようだ。しかし、晴景のもう一人の弟・長尾景虎の命令を受けた村山与七郎が、黒田秀忠の居城黒滝城を攻め降伏させた。長尾景虎とは後の上杉謙信のことだ。

 細川晴元伯父さんは、山城国で高国派の上野元治・元全父子と丹波国の内藤国貞らが挙兵したのを、三好長慶・政長ら諸軍勢を率いて反乱を鎮圧したようだ。三好長慶が内藤国貞の世木城を落としたようだ。
あまり足利将軍家だけに献金するのは考え物だな。伯父上にも、もっと精力剤と傷薬を送っておこう。
伯母上との間に嫡男が誕生すればいいのだが、そうなれば、第18代細川京兆家当主で足利幕府の管領が俺の従弟となる。
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