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千姫ルート 上海要塞防衛戦5
反転(エロ度☆☆☆☆☆)
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居勝の叫びより、ほんの少しだけ時間を巻き戻す。
上海要塞南門の前で奮闘を続ける忠勝は、既に数百に上ろうかという人数を殺していた。
どれもこれも大した武勇はない。
だが、まるでその者が自身を殺した忠勝を呪うかのように、忠勝の槍を鈍らせていた。
血糊は確かに名槍の切れ味を鈍らせ、じっとりと重みを重ねてくるのだ。
「本多殿! 一度お退きを!」
「なんの! まだまだ!」
横薙ぎの一閃で明兵の首を落とす。
否、落としたはずだった。
「クッ!」
明兵の首に7割がたまで食いこんで勢いの止まった槍は、果たしてその切れ味を落としたゆえか、或いは忠勝の疲労が武を陰らせたのか。
「本多殿!!」
後続の明兵が続々と進んでくる姿に、忠勝の危機を感じた一人の若武者が敵に突貫する。
蛮勇ではあったが、その間に忠勝は明兵から槍を抜き取ることができた。
「すまぬ!」
・・・・・・が、忠勝がその若武者を見た時、既にその者は全身から槍を生やしていた。
「ぬぅ、そちの名は!?」
せめて、名だけでもと思った忠勝だったが、その若武者が笑いながら呟いた声を聞き取ることは出来なかった。
「・・・・・・此処は戦場よ、ぬしらに恨みは抱かぬ。ただ、忠勝の槍の冴えを見届けて死ね!」
一閃し血糊を落とし、若武者を殺した兵たちを屠る。
既に味方15騎の内、5騎が死んだ。
少なくなったこれからはさらに厳しい戦いになるだろう。
「本多殿!」
その時、味方の一人が点を指さした。
赤い狼煙、撤退の合図。
「・・・・・・すまぬ」
先程の若武者を一瞥し、心の中で合掌する。
そして、彼の遺体を持ち帰ることすら叶わぬことを詫びる。
そこは城壁による火計の範囲内。
焼けてしまえば敵も味方も分からない。
「退けぃ!」
忠勝が城門に向けて駆けていくと、明軍からは遂に戦神を退けたと歓喜の声が響き渡る。
一息に城門を落とそうと、我先に明兵が橋に殺到する。
誰一人として、銃声が止んでいることを不思議に思うことなど無かった。
そして、本陣では敵の引付を十分と判断した井頼が指示を出す。
「火を付けよ!」
やたらと長いその導火線は城壁の下部、石垣の更に内側に大量に敷き詰められた火薬に繋がっている。
その目的は石垣を中からの爆発で吹き飛ばすこと。
そして、内部の壁の基礎を破壊すること。
井頼の必勝の想いを乗せ、点けられた火が城壁に向かって走る。
ドゴォッォオオオーーン
いくら耳を塞いでいても、その音だけで気絶してしまいそうな強烈な轟音。
そして、ギギィッという音と共に城壁が倒れていく。
ちょうど同じ頃、加藤軍は城の西側の広範囲に火を点けだしていた。
地雷火により、文字通り爆発的に広がる火は、完全に明軍の退路を潰していく。
さらに1000程の兵を率いて敵の帷幕にも火を投げ込んでいく。
敵はほとんどいないので、抵抗もなくすべてが燃やされていく。
「なんとも不用心な奴等だ」
火計自体は完全に兵に任せ、清正は上海要塞を見ていた。
「ククッ。井頼よ、策は為ったぞ」
見れば南側も同様に火焔が広がっていく。
そして、西側に付けた火は風に乗って見る見る合間に東へと拡がっていく。
火計の成功を確信し、清正は逃れてきた明兵を迎え撃つために轡を返した。
遠く、上海要塞から巨大な壁が倒れるその音を聞きながら。
上海要塞南門の前で奮闘を続ける忠勝は、既に数百に上ろうかという人数を殺していた。
どれもこれも大した武勇はない。
だが、まるでその者が自身を殺した忠勝を呪うかのように、忠勝の槍を鈍らせていた。
血糊は確かに名槍の切れ味を鈍らせ、じっとりと重みを重ねてくるのだ。
「本多殿! 一度お退きを!」
「なんの! まだまだ!」
横薙ぎの一閃で明兵の首を落とす。
否、落としたはずだった。
「クッ!」
明兵の首に7割がたまで食いこんで勢いの止まった槍は、果たしてその切れ味を落としたゆえか、或いは忠勝の疲労が武を陰らせたのか。
「本多殿!!」
後続の明兵が続々と進んでくる姿に、忠勝の危機を感じた一人の若武者が敵に突貫する。
蛮勇ではあったが、その間に忠勝は明兵から槍を抜き取ることができた。
「すまぬ!」
・・・・・・が、忠勝がその若武者を見た時、既にその者は全身から槍を生やしていた。
「ぬぅ、そちの名は!?」
せめて、名だけでもと思った忠勝だったが、その若武者が笑いながら呟いた声を聞き取ることは出来なかった。
「・・・・・・此処は戦場よ、ぬしらに恨みは抱かぬ。ただ、忠勝の槍の冴えを見届けて死ね!」
一閃し血糊を落とし、若武者を殺した兵たちを屠る。
既に味方15騎の内、5騎が死んだ。
少なくなったこれからはさらに厳しい戦いになるだろう。
「本多殿!」
その時、味方の一人が点を指さした。
赤い狼煙、撤退の合図。
「・・・・・・すまぬ」
先程の若武者を一瞥し、心の中で合掌する。
そして、彼の遺体を持ち帰ることすら叶わぬことを詫びる。
そこは城壁による火計の範囲内。
焼けてしまえば敵も味方も分からない。
「退けぃ!」
忠勝が城門に向けて駆けていくと、明軍からは遂に戦神を退けたと歓喜の声が響き渡る。
一息に城門を落とそうと、我先に明兵が橋に殺到する。
誰一人として、銃声が止んでいることを不思議に思うことなど無かった。
そして、本陣では敵の引付を十分と判断した井頼が指示を出す。
「火を付けよ!」
やたらと長いその導火線は城壁の下部、石垣の更に内側に大量に敷き詰められた火薬に繋がっている。
その目的は石垣を中からの爆発で吹き飛ばすこと。
そして、内部の壁の基礎を破壊すること。
井頼の必勝の想いを乗せ、点けられた火が城壁に向かって走る。
ドゴォッォオオオーーン
いくら耳を塞いでいても、その音だけで気絶してしまいそうな強烈な轟音。
そして、ギギィッという音と共に城壁が倒れていく。
ちょうど同じ頃、加藤軍は城の西側の広範囲に火を点けだしていた。
地雷火により、文字通り爆発的に広がる火は、完全に明軍の退路を潰していく。
さらに1000程の兵を率いて敵の帷幕にも火を投げ込んでいく。
敵はほとんどいないので、抵抗もなくすべてが燃やされていく。
「なんとも不用心な奴等だ」
火計自体は完全に兵に任せ、清正は上海要塞を見ていた。
「ククッ。井頼よ、策は為ったぞ」
見れば南側も同様に火焔が広がっていく。
そして、西側に付けた火は風に乗って見る見る合間に東へと拡がっていく。
火計の成功を確信し、清正は逃れてきた明兵を迎え撃つために轡を返した。
遠く、上海要塞から巨大な壁が倒れるその音を聞きながら。
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