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千姫ルート 南京城攻略戦2

千姫ルート 蛇足2(エロ度☆☆☆☆☆)

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(サブストーリーです。本編とは直接関わりは有りませんが、千姫ルートの蛇足的なものとなります)
(会話は全て通訳越しとなります)



「季夏さん、どれが良いと思いますか?」

 此処は南京における一番の繁華街。
 その中でも一等地に立つ季夏の親の経営する商店だ。
 今日の午後には日本に向けて旅立つと言う千姫が、お土産を買いたいと言いだしたのだ。

「いえ、正直どれも服の方が負けてしまう感じですね、ちょっと嫉妬してしまいそうです」

 あれこれと取ってみる服はどれも最高級の品。
 だと言うのに千姫の美しさを引き立てさせるのではなく、少々邪魔をしている様に見える。
 季夏自身はその品を身に付ければ引き立てられるのだが・・・・・・。

 格の違い、そう言ったものを感じさせられてしまう。
 女としてこっそり嫉妬するくらい神様も許してくれるだろう。

「千姫様が着ればどの服も素晴らしいものに映ります。ですが、どの服も千姫様を引き立てるには力不足。産まれてからずっと商人の娘をしてまいりましたが、こんなことは初めてです」

「ど、どうしましょう! 陛下に喜んでもらいたいのに!」

 そう言って困って慌てた顔をすると、歳相応の愛らしさが滲む。
 きっと、彼女は皇帝のことを本当に好きなのだろう。
 戦場に立つ凛々しい鎧姿とは真逆の乙女の姿。

「えっと、皇帝陛下はどのような色や模様がお好きなのですか?」

「・・・・・・そう、ですね。実は今も探していたのですけど、赤と白とかの2色が順々に入った四角い格子模様が好きだと仰っていて。その、有りますか?」

 それは、ブロックチェックのことだが、当然この時代に明や日本にあるわけがない。
 まして、この時代の最高級品ともなれば、最上級の絹に金糸で見事な刺繍を施した織物。

「・・・・・・えっと、そういうものはうちには、と言いますか、南京にはありませんね。その、もっと西の地域の絵柄で見たことがあったように思いますが・・・・・・」

 ただし、明は西方との国交を基本的には閉ざしている。

「長安に行けばあるいは昔の伝手が残っているかもしれませんが・・・・・・」

 陸路のシルクロードは非常に不安定な道。
 命懸けの旅路の末に持って来るものが、柄にしか特徴をもたない洋装では大した儲けにならない。数が少ないのも当然のことと言えるだろう。

 とは言え、期待の眼差しで見られれば、恩を返したいと言う気持ちと、商人の血を引く気質が無理と言わせてくれない。

「もしも、商品として出されることがあれば確保しておきますね」

「はい! ありがとうございます」

 屈託のない笑顔。
 こうしていれば普通の女の子なのだ。
 むしろ普通でないのは・・・・・・。

「お麟ちゃんは服見ないの?」

 未だに本を読み漁るお麟の方だろう。

 北京の商人ほどではないにしても、明でも第2位の都・南京の一・二を争う大商店。
 だと言うのに服にも、宝飾にも、香にも関心を示さず、本ばかり。
 いや、5歳であれば、そういうものに関心が無いのも分からないではない。
 だが、その代わりに読むのが軍学書と言うのは異常を通り越している。

「お麟ちゃーん?」

 そして、相変わらずの集中力で6冊目の本を読み終え、直ぐに次の本。
 一体どれだけ読んでいく気なのだろうか。

 より分けられた12冊の本は、先ほど千姫に買ってほしいと泣きついていた。
 千姫も、「体調を崩さないように気を付けて読むなら」と気前良く買っていた。
 正直、相当な額だが、そこは流石に皇后である。
 一切の値切りもしなかった。

 季夏の父などは娘の命の恩人から金は取れないと言ったが、千姫は素敵な縁を得られたのだから最初から恩など無いと支払った。
 そういったところも器が違うと季夏は思ってしまう。

 そんな千姫も、季夏の視線に気付き、お麟に視線をやる。
 主が自分に注目していると言うのに、相変わらず本に没頭するお麟に顔を見合わせて笑ってしまう。

「アハハ、もう少し読ませてあげてください」

「フフ、ええ。もう、あまり時間が無いですしね」

 千姫達の日本への出発まではあと一刻もない。
 一息に長江を下り、上海で乗り換えて日本へ。
 船足は下りは非常に速い。
 上海までは三日もかからないかもしれない。

 そして、日本に戻ってしまえば、もう千姫達が明に渡ってくること自体が無いだろう。

「皇后様、改めて深い感謝を。貴女のおかげで私達も結ばれることが出来ました」

 深く、深く頭を下げ、心からの感謝を伝える。

「い、いえ、それについてはお二人の心がそうさせたのです。私は思ったことが、つい口から出てしまっただけで、そんな感謝されることなんて・・・・・・」

 千姫が慌てて手を振る。
 まるで自分は何もしていないと、そう言うように。

「皇后様ともうお別れなんて、私・・・・・・」

 この一月あまり毎夜の如く3人で筆談した夜が思い出される。
 それは少しずつ季夏が道具から一人の人間に癒されていった日々。

「あ、では、季夏さんも日本にいらっしゃいませんか?」

 それは千姫の良いことを思いついたと言うような会心の笑顔と共に告げられる。

「・・・・・・え?」

 青天の霹靂とでも言おうか、一瞬何を言っているのかが分からなかったほどだ。

「張将軍には一度日本に来て、陛下にお目通りいただくことになっているんです。先に季夏さんとの婚姻を済ませ、明軍の動向を探った後ということになっていますけど。その時に是非季夏さんもいらしてください。私たちの国も見て欲し・・・・・・と言っても、私はほとんど城から出たことが無いのですけど」

 テヘッと舌を出して笑って見せる。

「是非、是非! 行かせてください!」

 季夏自身も見て見たかったのだ。
 日本と言う、千姫とお麟を生んだ国を。

「フフッ、約束ですよ?」

 二人が嬉しそうに手を取り合う。
 フフッと、お麟も少し笑ったような気がした。

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