異世界立志伝

小狐丸

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帝国衰退への序章

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 結論から言って、ゴンドワナ帝国は兵をあげた。

 バスターク辺境伯への侵攻後、大敗して停戦協定を結んだモノを破棄したカタチになった。
 王として、武人として、そのカリスマ性でサーメイヤ王国を統治していたバージェス王を排除出来た事が、ゴンドワナ帝国の皇帝サダムートを突き動かした。

 帝国の挙兵に、テンプルトン伯爵も呼応する。
 もともとバスターク辺境伯へのライバル心と嫉妬心が強く、王弟モーティスを担いで、サーメイヤ王国の実権を握れると考えたのだろう。

 テンプルトン伯爵依子の領地持ち貴族も数家兵を率い、王都へ侵攻する為に合流中だ。

 帝国軍は、テンプルトン伯爵領で反乱軍と合流し、王都へ侵攻すると思われる。
 同時にゴンドワナ帝国は、バスターク辺境伯への侵攻も計画しているだろう。帝国とテンプルトン伯爵領から、バスターク辺境伯の領地へ侵攻する事により、王都への侵攻する反乱軍を助けるつもりだろう。
 牽制のために行われる侵攻だとしても、バスターク辺境伯軍を領地に釘付けにする事が出来る。サダムート皇帝は、十分な勝算があるのだろう。

 義父のゴドウィンは帝国側の国境を、今やバスターク辺境伯一の戦力となった、クリストフ君がテンプルトン伯爵側に兵を率いて警戒する。

 テンプルトン伯爵領に近い王国側の貴族には、領地の防衛だけに専念するように報せてある。
 結果的に、ゴンドワナ帝国とテンプルトン伯爵率いる反乱軍を、王都の騎士団とウチのドラーク子爵軍で迎え撃つ事になる。

 ドラーク子爵領から精鋭の部隊が王都に集結、今回は直接戦闘に参加しなくても、いくらでも仕事があるので、領地を守るギリギリの人数を残し動員した。

 ルキナも虎型ゴーレムのルフトに乗って後方支援するらしい。俺としては、小さなルキナを戦争に連れて行くのは嫌だったんだけど、何時もは工房に籠っているスーラと、猫人族のユーファンが側に居てくれると言うので結局俺が折れた。ちなみに母親のイリアは、エルやルシエルと共に俺の側で一緒に戦うのだそうだ。
 コレットは、衛生兵を指揮して怪我人への対応にあたる。

 騎士団と守備隊は、ランカス、ボーデン、バルデスが率いる。
 エルとルシエルは、例の装甲軍事車輌に乗って、基本遠距離攻撃に徹する。
 俺はゴーレム馬のブリッツに、イリアがラヴィーネに乗って戦う。その為にイリアの防具を強化し、ラヴィーネに結界の魔導具を組み込んだ。




「ドラーク卿、王国は大丈夫でしょうか?」

 国王として、まだ独り立ちするには早い少年、第一王子クレモン様が不安気に俺に聞いて来る。いや、もう王子ではなくクレモン王か。

「陛下、堂々として居て下さい。陛下は後ろで我等の働きを見ているだけで良いのです」

 クレモン王にとっては初陣になるこの戦いだが、クレモン様には軍を率いた経験も、自ら剣を持って戦う力はない。だけど今のクレモン様には力は必要ない。その為のバスターク辺境伯であり、俺たちドラーク子爵軍なのだから。

「しかしドラーク卿、帝国の軍とテンプルトン伯爵達の反乱軍を合わせると2万の軍勢になると聞きました。それに対して、王国騎士団は二千人、ドラーク子爵軍も二千人、合わせても四千人で五倍の軍勢と戦わねばなりません……」

 武人ではない陛下が不安になるのも仕方のない事だけど、俺と義父のバスターク卿はこの後の事を考えている。今回ばかりは帝国を許す訳にはいかない。王弟モーティスへのオトシマエも付けなければならない。

「陛下、ご安心ください。
 バスターク卿が国境を固め、私の軍で侵攻して来た帝国軍と反乱軍を蹴散らしてみせます。その後、我等が先鋒として帝国へ攻め込みますので、陛下は王国騎士団とゆっくり進軍して下さい」

 そう、今回は帝国の領地を切り取る為に、帝国内へ進軍する。俺達が国境を越えると同時に、義父とクリストフ君率いるバスターク辺境伯軍も帝国へ侵攻、チラーノス辺境伯領を攻め取る。

 ゴンドワナ帝国のサダムート皇帝には、バージェス王を弑虐した報いを受けてもらう。

「ドラーク卿、バージェス王の無念を晴らして下さい。どうかモーティスを討ち取って下さい」

 黒いドレスに身を包み、喪に服している第一王妃のアレクシア様が気丈にも涙をこらえて訴える。

「お任せ下さいアレクシア様。モーティス元公爵もオース元伯爵も、報いを受けさせます」



 ゴンドワナ帝国とテンプルトン伯爵達の反乱軍と接触するまでおよそ二週間。俺達はテンプルトン伯爵領との境界に軍を進める。

 漆黒の鎧を纏い、整然と行軍するドラーク子爵軍の後ろに、白銀の鎧を纏う王国騎士団に守られたクレモン王が続く。

 ドラーク子爵軍にとっても本格的な戦争は初めてだけど、俺は何も心配していない。
 帝国にドラーク子爵軍の漆黒の鎧を目に焼き付けてやる。


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