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第2章
輝くヒロイン
しおりを挟む『貴女を想っています。貴女の幸せを』
「ハンス・・・・私もですわ」
幸せな気持ちで瞳を開けますわ。
ああ。やっぱり夢でしたのね。
熱を出し、倒れた私・・・・。
魘される中でも、ハンスの夢を見るだなんて。
私ったら本当にハンスの事しか頭にないのね。
ええ。悪魔のような攻略対象共なんて、微塵こも入る隙なんてなくってよ。特にあの、腹黒…いえ悪魔!ほんと、今度こそは青汁と野菜スティックでもって、退治して差し上げてよ!!
「あっ。おはよ。ヴィクトリア。もう体は大丈夫?」
「ええ。平気ですわ」
「そう?熱も下がったみたいだし、良かったね。これでハンスさんも安心するんじゃないかなー。昨日あれだけつきっきりだったし・・・・」
鈴の音のような可愛らしい声が響きますわ。
あら?この声。どなたかしら?
私、何故会話を?またしても幻聴でして?
「どなた?誰かいらっしやるの?」
私・・・・確か2人部屋に1人でしたわ。
同室の方・・・・結局入寮に間に合わなかったと、寮母の方にお聞きしましたもの。
私の疑問にその声が答えましたわ。
「あっ。そっか。まだ挨拶とかしてなかったっけ」
ひょこっ。
「ひっ!生首!?」
「失礼だなー。私はお化けじゃないよー」
ベッドの上の段から、ひょっこりと顔が覗きましたわ。逆さ吊り。顔だけおちてきたんですもの!生首と間違えても仕方なくってよ!
「私、ここに来るの遅くってさー。結局入寮も入学式になっちゃったんだよねー。だから、ドタバタしちゃって全然挨拶とかできなくって」
にこにこと私の顔を見つめる彼女。ふわふわと揺れるピンクの髪が印象的ですわね。
あら?何故かしら。この方の事、私・・・・すごく、すごーく知っている気がしますわ。
「まさか貴女とクラスも部屋も一緒だなんてねー。びっくりすぎて魂抜けるかと思った。これって運命だね」
にこにこと笑いながらこちらを見る少女。何故かしら、頬を冷や汗が伝いますわ。
「貴女・・・・お名前は?」
「あっごめん。ちゃんと自己紹介できてないね。私の名前は、フィロス・インカ。光魔法の使い手だよ」
フィロス・・・・インカ?
今、この方・・・・フィロス・インカと言いまして?
「貴女と一緒でとっても嬉しいわ。ヴィクトリア・アクヤック」
エメラルドグリーンの瞳をキラキラと輝かせ、フィロス・インカが満面の笑みで私を見ますわ。
眩しい!眩しくってよ!
輝いてますわ!!
この輝き!まさしくフィロス・インカ!ヒロインですわ!!
後光が差していて、直視できなくってよ!!
「何故?どうして・・・・ヒロインと私が同室に」
運営は、私をどうしてもヒロインと絡ませたいのね!悪意と作為を感じますわ!!
「きっと運命なんだよ」
ドスン。ぼふっ。
「ひゃっ!」
ヒロインが、降ってきましたわ!上からヒロインが降ってきましてよー!?
「まっ眩しいっ!!」
「あっごめんごめん。私、興奮すると発光しちゃうんだよね。あはは」
は?発光する?
ヒロインが発光(物理)するだなんて話、聞いた事ありませんわ!?
おかしい、色々おかしいと思ってましたけど、この乙女ゲーム。根本的な所から間違ってましてよ!?
ヒロインがこんなので宜しいの運営は!?
「しかしあれだねー」
「なっなんですの?」
私のパーソナルスペースに、ずかずかと乗り込みフィロスは、しげしげと私を見つめますわ。
ちょっと!貴女不躾でしてよ!?人の顔はそのように、舐め回すように見るものではなくってよ!いくら私が驚く程美人といっても、観賞には節度と限度がありましてよ!
「重くってよ!おどきになって!」
「あと、顔が近いわ!近眼ですの!?見つめるのでしたら、他の方にしなさいな!」
ええ。特に攻略対象がお薦めですわよ!観賞用と言わず、是非とも攻略なさって下さらない!?
そして私から遠ざけて!貴女もろとも!!
「ぷっ・・・・くくくっ」
「あら?どうかされましたの?」
先程から、小刻みに震えて。どうかなされたの?
何かおかしな物でも食されて?拾い食いなんて、ヒロインの為さる事ではありませんわよ?
「ごめっ・・・・無理!もう我慢できない!!」
「えっ?何を我慢は宜しくありませんわよ?さあ、無理はなさらずに」
辛いなら無理は、お止めになって。
優しい私は、敵であっても介抱して差し上げてよ?
「先に謝る!ごめん!」
「その髪型!寝ていてもそのままなんだ!?凄いね!寝癖一つないなんて!ビックリだよ!」
淑女に有るまじき大笑いをしていますわ。
・・・・貴女・・・・私(のドリル)を笑ってまして?
これは、私のアイデンティティですのよ!?
「失礼ですわ!今すぐお止めになって!」
「ああ。うん。ごめっぷっくく・・・・ごめっむり・・・・くくくくくくあははは」
「貴女!!ちょっと!いい加減になさって!私、怒りますわよ!」
「いや、だっ…て…くふふ…あはは…怒る度に…揺れるし…くくくく」
ちょっと!何なの!?
この方!?人の外見(主にドリル)をお笑いになるなんて!
本当にヒロインですの!?
性格に難有りですわ!!
見た目と後光以外、ヒロイン的要素が皆無でしてよ!?
こんなので、攻略対象を攻略できまして!?
「ごめんごめん。こんな私だけど宜しくね?ヴィクトリアちゃん」
応援ありがとうございます!
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