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3話

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 翌日、悠理達は早朝から訓練所に呼び出されていた。

「皆様方には、これから職業に見合った訓練を受けてもらいます。その前に自己紹介をしておきたい者達がいます」

 ルイ王子はそう言うと、その側で控えていた人達を順に紹介していく。

 先ず最初にハルス・アルフォード。赤髪の美少年で、なんとルイ王子の腹違いの弟らしい。
 はっきり言って、ルイ王子と全然似てない。悠理を見るや否や顔を歪め、「ブスな女だな」と呟いてきたのだ。
 バッチリと聞こえていますからね! 

 次にオーリア・アルフォード。ハルス王子の妹らしい。金髪美少女なのだが、なんかツンツンしており、悠理を見て鼻で嗤った。
 なんて失礼な女! 流石血の繋がった兄妹だな、と悠理は思った。
 どうしてこんなにもルイ王子の態度と違うのだろうか。全くもって信じられない。

 そしてレオン・グランセル。
 青髪の爽やか系イケメン君ですね。現騎士団長の息子さんらしく、次期騎士団長として将来有望な騎士なのだとか。

 それからルイ王子によって次々と自己紹介されていく。
 それはもう皆様、美少年揃いです。地味なブスな悠理がいともたやすく空気化してしまうほどに……。

 一方で、悠理を除く女子生徒陣からの黄色の悲鳴が全く絶えません。「あの人、好みかも!」や「カッコイイ!!」などなど……あの姫川麻里ですらも頬を僅かに赤らめているのだから驚きだ。

「──以上で紹介を終わります。次に訓練について説明を致します、レオン」

 ルイ王子がレオンに指名すると、レオンはスッと前に進み出た。

「ご紹介に与りました、レオンです。皆様方には、これから剣術をはじめとした武術と魔法について学んで貰います。先ず今から名前を呼ばれた方は、ルイ王子とハルス王子のいるところに行ってください」

 レオンがズボンのポケットから一枚の紙切れを取り出す。

「では今から名前を読み上げます。一人目、コウスケ・カガミ様」

「俺?」

 加賀美浩介が前に進み出た。すると頬を赤く染めながらオーリア王女が加賀美浩介に挨拶をする。

「はじめまして、私はオーリアと申します。そ、その、これから私がコウスケ様の訓練や身の回りのお世話をさせていただきます」

 どうやらこれから名前を呼ばれた生徒は、お世話係一名の他にオーリア王女のようなおまけがついてくるらしい。
……正直いって必要ないと思う。

「次にマリ・ヒメカワ様」

「え? 私?」

 姫川麻里は戸惑いながらもどこか嬉しそうにして、ルイ王子の前まで歩いてくる。

「ルイ王子、そ、その……」

 頬を僅かに染めながら、姫川麻里はルイ王子に話しかける。多分姫川麻里はルイ王子のことが好きなのだろう。

「ん? ヒメカワ様の担当は私ではなく、ハルスですよ?」

「……え?」

 ルイ王子の言葉に姫川麻里の目が大きく見開かれる。

「俺はハルス・アルフォード。マリは、俺が命に代えても守ってやるから安心しろ」

 空気が全く読めていないらしいハルス王子は、唖然とする姫川麻里の左手を取り、その甲に口付けを落とす。イケメン王子(見た目だけ)とクラス一の美少女……かなり様になっていると思う。

「え、あ……よろしくお願いします」

 ルイ王子ではなかったものの、優しく接してくれるイケメン王子(姫川麻里だけに性格がイケメン)に、姫川麻里は満更でもないようだった。

「ああ、俺のお姫様」

 そして止めと言わんばかりに口説きにかかるハルス王子に、傍観している悠理を除く全ての女子生徒の顔も真っ赤である。

「は、恥ずかしいです……」

「本当に君は可愛いな」

 目の前で繰り広げられる男女の会話に、悠理の精神ライフがみるみると削られていく。

「ハルス様、続きは後でお願いします」

 悠理の顔がどんどんと死んでいくのを見たレオンがすかさず止めに入る。

「ちっ……分かったよ」

 邪魔されたハルス王子は舌打ちをし、姫川麻里の腰を抱いて後ろに下がる。

「ハルス様、ありがとうございます。では、最後の方のお名前をお呼びします」

 もう一人いるのか……
 早く終わらせて欲しいと願いながら、悠理はレオンの言葉を待った。

「最後の方は、ユウリ・シノノメ様です」

 最後の方はユウリ・シノノメ様ね……どんな美少女なのかし、ら……え? 今なんて?
 何が何だか分からず、悠理はその場で固まってしまう。
 そんな悠理に痺れをきたしたルイ王子が自ら近寄ってくる。

「よろしくね、ユウリ」

 太陽のように眩しい笑みを浮かべなら、ルイ王子はそう言った。




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