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第二章

レッドドラゴン 3

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 おっと!! 今はそれどころじゃない。
 レッドドラゴンの方を見ると、のた打ち回るのを止めて、のっそりと立ち上がったところだった。
 残った左目で、僕を睨みつける。
 その目は如実に、こう語っていた。
『ようもやってくれたのう。われぇ。覚悟は、出来とるんじゃろうな』
 いや、覚悟なんか、できてませんが……
 レッドドラゴンは、再び猛然と突進してきた。
 ショットガンを構える。
 あれ? 奴の動きが止まった。
 それどころか、後ずさりしている。
「あいつ、なんでかかってこないんだ?」
「警戒しているのですよ」
「なんで? ショットガンじゃ、奴は殺せないんだろ?」
「確かにショットガンでは、レッドドラゴンの鱗を貫通できません。しかし、当のレッドドラゴンはその事を知りません」
 なるほど。少なくとも奴は、自分の目が潰された原因は、このショットガンだと理解できるだけの知能はあるんだな。その知能が却って仇となって、ショットガンを過大評価してしまっているんだ。
 それなら……
「おら! おら! おら!!」
 僕はショットガンを構えて、レットドラゴンに向かって駆け出した。
「ちょっと! 何しているんです!? 危ないですよ」
 言っておくが、これは決して調子に乗っているわけではない。
 今、一番マズイのは、このショットガンが奴に効かない事を知られる事。
 いつまでも撃たないでいると、そのことを悟られる。
 だから、こっちから向かって行けば……
「キシャー!!」
 予想通り! 奴は逃げ出した。
 今のうちに……あれ? 奴を倒す決定的な手段がない。
 逃げるか?
 いや、空を飛べる奴から逃げられない。
「Pちゃん。今のうちにもっと強力な武器を……」
「ありません」
「装備一覧を見たら、マルチプリンターというのがあったぞ。あれで武器を作れるんだろ? バズーカ砲を出してくれ」
「あまりに強力な火器は、同士討ちの危険があるため、最初から三次元データを入れていないのです。あったとしても、バズーカ砲をいきなり渡されて使い方分かりますか?」
「いや、無理だ。しかし……武器がだめなら、爆薬の原料になる薬品出してくれ」
 これでも、大学では化学工学を専攻していたので、そのぐらいは調合できる。
 いや、爆薬調合の講義を受けたわけではなく、自分で調べて薬品や実験道具をばれないようにちょろまかして、黒色火薬やトリ・ニトロ・トルエンを調合したりしていたのだが。
 ばれたら、逮捕だったね。
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