愛し合えない夫婦です

十人 秋夜

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4、貴方は誰ですか?私は貴女を愛しています

愛する姫君は誰の物?

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「兄上、なぜアーシャと結婚するのですか?」

 弟のノゼナイトがアーシャ殿にいきなり会いに行った理由はなんとなく分かるが、ここまで怒っている理由が全く分からない。
 
「アーシャ殿が好きだからだ」

 改めて口にすると照れ臭い。
 可愛らしい声、甘い唇、柔らかな肌、全てが好きだ。
 強がりのくせに時々甘えてくる。何か計算しているのではないかと思ってしまうほど、愛おしくなる。
 それになぜ結婚するのかなんて、答えるまでもない。

「嘘でしょう?どうせ兄上はいつも恵まれているから、偶然魔力があるからとアーシャと結婚することになったのでしょう?
 なら、魔力さえあれば誰でも良いのでしょう?」

 明らかに、自分とアーシャ殿の結婚を祝福していないノゼナイト。仲が良かったと言えば嘘になるが、ノゼナイトのことが嫌いな訳ではない。
 
「始めはそうでも、今はアーシャ殿のことを愛している」

「兄上はいつもそうだ。兄上は魔力がないからって周りから大事にされて、いつも俺よりも上にいる。
 俺の方が先にアーシャを好きになったのに・・・・」

 吐き出すような言葉を受け、かなり驚いた。

「お前とアーシャ殿に接点などないはずだ」

 なんだか嫌だった。
 アーシャ殿が自分よりもノゼナイトを好きなったら。自分が知らないところで二人は仲が良かったのかもしれない、そんな疑念が頭の中を埋め尽くした。
 そして尚且つノゼナイトはアーシャ殿のことが好きだと言っている。

「兄上が知らないだけで、俺はいつも犠牲になっているのですっ!」

「っ・・・・・」

 言い返す理由も、言葉も無かった。
 だからと言って、アーシャ殿を譲る気なんてない。けれど、とてつもない不安ある。
 ここまで弟が声を荒げる姿を見たのは初めてだ。だからこそ、どれほどの感情なのか痛いほどに伝わって来た。

「でも悪いことばりではないですよ。いつも大事にされて光を浴びてきた兄上と、いないも同然の扱いを受けて、一人だった俺。アーシャはどっちに同情すると思います?前に会った時にも同じようなことを話しました。
 優しいアーシャだからこそ、暫くは俺の側にいてくれるのではないのでしょうか。俺は兄上と同じか、それ以上にアーシャのことを分かっています。
 だから同情を引くなんて容易いのです。
 俺の方が有利ですよ?揺れ動くアーシャを早く見たいです。俺の物になるのにそう時間はかかりませんから」

 どれほど自分の顔は青ざめているだろう。
 徐々に笑顔になっていくノゼナイトは、どこか狂気じみていて恐怖を覚えた。
 
「お前には無理だ。私達は暫くのあいだ、ここを離れる」

「それくらい知っていますよ?俺は兄上の持っていないものだってたくさん持っているのです。
 兄上の言われては困るような秘密だって知っていますよ・・・・・・」
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