種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
11 / 1,095
幼少編

森人族の集落

しおりを挟む
エルフの集落に到着した2人は集落の傍でユニコーンと別れる。フレイの話によるとユニコーンは決して誰かに飼われるような存在ではなく、今回は小さい頃から仲が良いフレイが頼み込んだからこそ「彼(雄)」の背中に乗らせて貰えたらしい。レノはフレイに手を繋がれ、集落の中に入り込むと無数の見目麗しい住民達が視線を向けてくる(ちなみに基本的に森人族の誰もが容姿が整っており、だからこそ奴隷として売買される時は高値で取引される)。


「何だあいつら……」
「ちっ……戻ってきたのか……」
「汚らわしい……この地が汚れてしまうわ」


その反応は非常に冷たく、そして何故かレノだけではなく、フレイにも同じ視線が注がれる。不思議そうに彼女の顔を見上げると「私にも事情があるんだよ」とだけ一言告げ、そのままレノを連れて集落の奥に突き進む。


「ハーフエルフめ……今度はどんな災厄を招くつもりだ?」
「族長は何故、こんな奴等を……」


話を聞く限り、自分たちを呼び出したのはエルフの「族長」らしく、書物で学んだ限りではエルフの族長とは、100年に一度行われる「族長」の座を賭けた狩猟が行われ、最も大きい獲物を狩り取った者が族長になるという。また、族長の他に長老と呼ばれる者も居り、こちらはエルフの中で最も魔力が強く、古株の人間が選ばれるらしい。


「おおっ……フレイ、帰ってきたか!!」
「爺さん!!」


2人の前に中年男性のエルフが現れ、フレイは彼を見た瞬間、レノを引っ張って男性の元に駆け寄る。中年男性はレノを姿を見て、この森に来て初めて冷たい視線を向けず、彼に視線を合わせるように体勢を低くする。


「おおっ……この子は……間違いない、あの子の……!!」
「そうだよ……姉貴の子だ」


男性はレノの頭を撫でやり、彼の顔を覗き込む。その瞳は涙で潤ませていた。


「そうか……レイアの娘か……」
「あのっ……」
「いや、爺さん。こいつは男だ。私も最初は女かと思ったけど」
「あ、ああっ……すまない、そうだったのか」


レノの頭を一通り撫でまわすと、彼はフレイに視線をやり、彼女は頷きながら、


「今から族長に会わせる……長老も来てくれ」
「ああっ……」


男性はもう片方のレノの手を繋ぎ、共に歩み始める。これでより逃げられない状況に陥り、一瞬も油断できない。自分は未だにここに連れ込まれた理由すら聞いていない。



――やがて、3人は集落の中心と思われる小さな泉の前に辿り着き、すぐ傍には大きな屋敷が建てられていた。



屋敷の門の前には見張るように屈強な肉体のエルフが2人ほど並んでおり、どちらも他のエルフたちのような布製の服ではなく、皮で作られた鎧を着こんでいる。


「レン、ラン!!族長に会いたい!!」
「……これは長老様」
「族長に何用ですかな?」


レンとランと呼ばれた門番の2人組は、男性に声を掛けられてすぐに返事を返すが、フレイとレノの姿を見た瞬間、他のエルフと同様に冷たくなる。だが「長老」と呼ばれた男性が前に出ると、大人しく門の前から退く。


「長老……?」
「ああ、あの爺さん……おっさんはこの森の長老なんだよ。300年以上生きてるだよ」
「300年……」
「族長はもっと長生きだけどな……」


エルフの寿命は人間の約5倍以上であり、だいたい普通のエルフは「400年」は生きると言われているが、実際に老衰するまで生き残ったエルフというのは数少ない。大抵のエルフは寿命を全うする前に、狩猟で命を落とすか、他の種族の争い事で死んでしまうからだ。ちなみにハーフエルフであるレノも、普通のエルフと同じぐらいの寿命である。


「族長は中に居るのか?」
「はっ……しかし、本当にその2人を会わせるのですか?」
「私は族長の命令でここに着たのだ……意味は分かるな」
「も、申し訳ありません!!」


門番は顔を青くし、慌てて頭を下げると、すぐに厳重な扉を2人がかりで開く。


「……これから族長に会う。取って食われない様に覚悟を決めろよ」
「こ、怖い人なんですか……?」
「怖いというよりは……恐ろしいかな」
「帰りたいんですけど……」
「どこに帰るんだよ?ここがお前の家だぞ」


言われてみればその通りであり、第一に既に孤児院は消失したのだ。レノには既に自分には帰る場所などない。やがて門の扉が完全に開かれると、門番の2人に見送られ、レノ達は屋敷の中に入り込む。


――意外にも、建物中は質素なものであり、レノが想像していたような豪華な装飾などは施されておらず、窓の類も存在しない。屋敷の奥に進むと、白いカーテンで覆われた場所が見つかり、レノたちはその前に跪く。



「――その子がレイアの子か……?」
「はっ……族長」
「命令通り、連れてきました」


レノの左右にフレイと長老が並んで座り、深々と頭を下げる。レノも同様に頭を下げながら、カーテンを覗き込むが、誰かが居るのは分かるが、影の姿しか分からない。声の感じからは女だとは分かるが、想像していたよりも年若い声だ。下手をしたらレノと同じ世代の子供が居るのかもしれない。


「そうかっ……確かに面影はあるのう……」


カーテン越しにも関わらず、レノは誰かに覗き込まれるような感覚に襲われた。


「レノ……お前にはこれから過酷な未来が待ち受けているぞ」
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:369pt お気に入り:8,127

シモウサへようこそ!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:335

冷遇ですか?違います、厚遇すぎる程に義妹と婚約者に溺愛されてます!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:866pt お気に入り:8,885

新宿アイル

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:138

処理中です...