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学園編
同族との邂逅
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「うっ……くうっ……」
レノは意識が戻ると、自分が庭の上で気絶していたことを理解する。身体を起き上げると、周囲の惨状に目を見開く。庭の地面は抉れ、植えられた大木は粉々に砕け散り、建物に無数の焦げ跡が残っていた。
間違いなく、先ほど行った「球体」から生み出された「竜巻」のせいだろう。レノは球体の魔力を解放した途端に気絶してしまったらしい。恐らく、大幅に魔力を消耗したせいだろう。
術者が気絶したせいか、庭の「竜巻」は四散して完全に消え去っており、レノは自分が仕出かした行為に身体が動かない。
「……ひどいな……これ」
周りを見渡すと、レノは自分がやった無謀な行いのせいで、ここまでの惨状を引き寄せたことに衝撃を受けながらも、自分がここまでの力を引き出せたことに驚きを隠せない。
「……これ、元に戻せるのかな……」
建物も、庭も、ボロボロの惨状に罪悪感を抱き、何とか立ち上がろうとしたが、
ドサッ……
「あれ……?」
膝をつき、レノはそのまま倒れこむ。身体が思うように動けない、最初は魔力を使いすぎたのかと思ったが、それだけでは納得できない。レノは身体に異変を感じる。まるで、魔力を地面に吸い取られているような――
「――驚いたねぇ」
突然、うつ伏せで倒れているレノの頭上から声を掛けられ、口調からクズキの姿が思い浮かぶが、声音が違う。明らかに女の声だ。何とか顔を上げると、そこには、
「おや、まだ動けるのかい?こいつは本当に驚きだねぇ」
黒を基調としたドレスを着こみ、左目を眼帯で覆い、肩甲骨辺りにまで伸びた赤い髪の毛に細長く尖った耳。体型はスレンダーでありながら、異様な色気を醸し出している。髪の毛の赤さから、一瞬「フレイ」と見間違えるが、彼女とは顔つきが違う。それに、フレイと違って彼女の瞳は冷たさを感じる。
「あんたは……!?」
「同族だよ。ハーフエルフの坊ちゃん」
「同族……エルフ?」
何故、この場所に女のエルフが居るのか、学園にはエルフの学生もいるとは聞いていたが、レノは彼らとは一度も出会っていない。クズキが入学前に何か手を打ったお蔭だろうが、目の前の女性は首を振り、
「違う違う。同族だって言っただろう?私はハーフエルフだよ」
「ハーフ……エルフ……!?」
自分からハーフエルフを名乗る彼女は、レノの小さな体を持ち上げ、
「あんたもハーフエルフだから、魔力を多めに持ってるんだね?だからここまで喋れる」
「ど、どういう事……?」
「地面をよく見てみな……」
レノは地面を見るが、特に変わった様子は無い。せいぜい、先ほどの竜巻で随分とあらされただけだが。
(……えっ……)
だが、地面を見続けること数秒、レノは異変に気付く。先ほどまで自分が居た場所に、何らかの光の線が走っていることを。
(これは……魔方陣?)
周囲を見渡すと、幾つもの光り輝く線が走っており、レノは巨大な魔方陣が庭に広がっていることを理解した。女はレノが気が付いたのを感じ取り、彼を地面に手放す。
ドサッ……!
「ぐぅっ……」
「気が変わったよ。同族だから生かしておこうか」
「どういう……?」
「あまりしゃべらない方がいいよ。余計に魔力の吸収が早まるからね」
言われて、レノは光の線が自分の中の力を吸収している感覚に気が付き、この「魔方陣」は彼女の仕業なのかと視線を向けると、
「遅いよヒカリ!!何してるんだい!!」
女はレノの目の前で「スマートフォン」らしき物を耳にしながら、怒鳴り散らす。それを見て、レノは驚愕を隠せない。いくらこの学園が世界で最も科学が進んでいると言っても、携帯電話などの細心の機器を作り出すほどの技術力は無いはず。彼女は「スマートフォン」を耳から離し、握りしめたまま何処かへと立ち去ろうとする。
レノは必死に手を伸ばすが、既に言葉を話すことさえできない。女の後姿を見送るしかないのかと、歯を食いしばると、
「――待て!!」
「はああっ!!」
突然、2人の上空から男女の声が聞こえ、上を見上げると、そこにはリノンとアルトが自身の剣を振り上げながら、女に向かって落下していた。
「ちっ……ガキが」
ハーフエルフの女は舌打ちしながら、2人に向けて手を差し出し、無詠唱で「魔方陣」を掌から発生させ、まるで盾のように構える。
「やあっ!!」
「ふんっ!!」
ガキィィイインッ!!
2人の斬撃が重なり、魔法陣に衝突した瞬間、激しい火花が飛び散る。そして、徐々に魔方陣に罅が入り、女は舌打ちしながら後方に跳躍する。
「レノさん!!」
「大丈夫、か?」
その一方で、レノは大きな掌に身体を持ち上げられ、後ろを向くと、そこには強面で心配そうな表情を浮かべるゴンゾウが居り、彼の足元にはポチ子も立っていた。
「お前ら……どうして」
「グラウンドで、竜巻を見て……急いで駆け付けてきたんです」
「もう、大丈夫。俺達、守る」
「無事かレノ!!」
女と対峙しながらも、心配そうな声をかけるリノンに視線を向けると、ちょうど彼女はこちらに笑みを浮かべていた。
レノは意識が戻ると、自分が庭の上で気絶していたことを理解する。身体を起き上げると、周囲の惨状に目を見開く。庭の地面は抉れ、植えられた大木は粉々に砕け散り、建物に無数の焦げ跡が残っていた。
間違いなく、先ほど行った「球体」から生み出された「竜巻」のせいだろう。レノは球体の魔力を解放した途端に気絶してしまったらしい。恐らく、大幅に魔力を消耗したせいだろう。
術者が気絶したせいか、庭の「竜巻」は四散して完全に消え去っており、レノは自分が仕出かした行為に身体が動かない。
「……ひどいな……これ」
周りを見渡すと、レノは自分がやった無謀な行いのせいで、ここまでの惨状を引き寄せたことに衝撃を受けながらも、自分がここまでの力を引き出せたことに驚きを隠せない。
「……これ、元に戻せるのかな……」
建物も、庭も、ボロボロの惨状に罪悪感を抱き、何とか立ち上がろうとしたが、
ドサッ……
「あれ……?」
膝をつき、レノはそのまま倒れこむ。身体が思うように動けない、最初は魔力を使いすぎたのかと思ったが、それだけでは納得できない。レノは身体に異変を感じる。まるで、魔力を地面に吸い取られているような――
「――驚いたねぇ」
突然、うつ伏せで倒れているレノの頭上から声を掛けられ、口調からクズキの姿が思い浮かぶが、声音が違う。明らかに女の声だ。何とか顔を上げると、そこには、
「おや、まだ動けるのかい?こいつは本当に驚きだねぇ」
黒を基調としたドレスを着こみ、左目を眼帯で覆い、肩甲骨辺りにまで伸びた赤い髪の毛に細長く尖った耳。体型はスレンダーでありながら、異様な色気を醸し出している。髪の毛の赤さから、一瞬「フレイ」と見間違えるが、彼女とは顔つきが違う。それに、フレイと違って彼女の瞳は冷たさを感じる。
「あんたは……!?」
「同族だよ。ハーフエルフの坊ちゃん」
「同族……エルフ?」
何故、この場所に女のエルフが居るのか、学園にはエルフの学生もいるとは聞いていたが、レノは彼らとは一度も出会っていない。クズキが入学前に何か手を打ったお蔭だろうが、目の前の女性は首を振り、
「違う違う。同族だって言っただろう?私はハーフエルフだよ」
「ハーフ……エルフ……!?」
自分からハーフエルフを名乗る彼女は、レノの小さな体を持ち上げ、
「あんたもハーフエルフだから、魔力を多めに持ってるんだね?だからここまで喋れる」
「ど、どういう事……?」
「地面をよく見てみな……」
レノは地面を見るが、特に変わった様子は無い。せいぜい、先ほどの竜巻で随分とあらされただけだが。
(……えっ……)
だが、地面を見続けること数秒、レノは異変に気付く。先ほどまで自分が居た場所に、何らかの光の線が走っていることを。
(これは……魔方陣?)
周囲を見渡すと、幾つもの光り輝く線が走っており、レノは巨大な魔方陣が庭に広がっていることを理解した。女はレノが気が付いたのを感じ取り、彼を地面に手放す。
ドサッ……!
「ぐぅっ……」
「気が変わったよ。同族だから生かしておこうか」
「どういう……?」
「あまりしゃべらない方がいいよ。余計に魔力の吸収が早まるからね」
言われて、レノは光の線が自分の中の力を吸収している感覚に気が付き、この「魔方陣」は彼女の仕業なのかと視線を向けると、
「遅いよヒカリ!!何してるんだい!!」
女はレノの目の前で「スマートフォン」らしき物を耳にしながら、怒鳴り散らす。それを見て、レノは驚愕を隠せない。いくらこの学園が世界で最も科学が進んでいると言っても、携帯電話などの細心の機器を作り出すほどの技術力は無いはず。彼女は「スマートフォン」を耳から離し、握りしめたまま何処かへと立ち去ろうとする。
レノは必死に手を伸ばすが、既に言葉を話すことさえできない。女の後姿を見送るしかないのかと、歯を食いしばると、
「――待て!!」
「はああっ!!」
突然、2人の上空から男女の声が聞こえ、上を見上げると、そこにはリノンとアルトが自身の剣を振り上げながら、女に向かって落下していた。
「ちっ……ガキが」
ハーフエルフの女は舌打ちしながら、2人に向けて手を差し出し、無詠唱で「魔方陣」を掌から発生させ、まるで盾のように構える。
「やあっ!!」
「ふんっ!!」
ガキィィイインッ!!
2人の斬撃が重なり、魔法陣に衝突した瞬間、激しい火花が飛び散る。そして、徐々に魔方陣に罅が入り、女は舌打ちしながら後方に跳躍する。
「レノさん!!」
「大丈夫、か?」
その一方で、レノは大きな掌に身体を持ち上げられ、後ろを向くと、そこには強面で心配そうな表情を浮かべるゴンゾウが居り、彼の足元にはポチ子も立っていた。
「お前ら……どうして」
「グラウンドで、竜巻を見て……急いで駆け付けてきたんです」
「もう、大丈夫。俺達、守る」
「無事かレノ!!」
女と対峙しながらも、心配そうな声をかけるリノンに視線を向けると、ちょうど彼女はこちらに笑みを浮かべていた。
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