種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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放浪島編

目覚める才能

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「よしっ……」


槍は粉々に砕け散ったが、それでも狼男の数は減らした。レノは何とか着地を決めると、すぐに魔力を足に纏わせて走り出す。


「ガァアアアッ!!」
「ウオォオオオオンッ!!」


後方から狼男たちが追跡し、速度は若干だがあちら側が速く、見る間に距離を縮められる。腕の紋様を見て、魔石は再び発動できるようだが、この調子では1キロほど転送したところですぐに追いつかれるだろう。


ビュンッ!!ビュンッ!!


「しつっこい!!」


追跡してくる狼男たちは手に持つ槍を投げ飛ばしてくるが、レノは定期的に「嵐弾」を飛ばし、槍を吹き飛ばす。


「これ貰うよっ」


それどころか自分の近くに落ちた槍を拾い上げると、レノは先ほどのように「嵐」を纏わせる。一度成功して切っ掛けを掴んだお蔭か、すぐに槍の先端に螺旋状に渦巻く嵐が形成される。


「ガルァアアアアッ!!」
「くっ……このっ!!」


接近してきた狼男の一体にレノは槍を振り回し、顔面に先端を向けると、


ギュイィィイイイッ!!


「グエッ……!?」



まるでドリルのように顔面を抉り取り、首が一瞬で四散する。レノは初めて生物を魔法以外で殺した感触に顔をしかめるが、すぐに槍を構えて逃走を中止する。仲間を殺された光景を見て、狼男達は警戒行動を取り、レノの周囲を囲んで何時でも襲撃出来る体勢を取る。


「ガァアアアッ!!」
「ウォンッ!!」


向い来る狼たちにレノは槍を向け、振り回す。


「せいっ!!」


ブンッ!!


「ガウッ!!」
「ウォンッ!?」


狼男たちは軽く避けると、レノに向かって牙や爪を向けるが、彼はすぐに転がって躱すと、瞬時に一体に「嵐弾」を至近距離で放つ。


ズドォオオンッ!!


「ギャンッ!?」


嵐の弾丸をまともに喰らった狼男はそのまま吹き飛び、もう一体は怒りの表情を浮かべて、手に持つ槍を掲げて襲い掛かる。


「ガァアアアッ!!」
「おっと……!!」


ブンッ!!ブンッ!!


一撃でも当たれば致命傷だろうが、レノは自分でも驚くほどの反応速度で避け続ける。腹部に火傷の痛みが走るが、それでも我慢できないほどではない。


――レノ本人は気付いていないが、彼がここまで危機的状況で肉体が動けるのは、「ダークエルフ」の血を引いていることが関係している。


元々、身体能力や魔力が人間よりも高いエルフと魔族の間から生まれた「ダークエルフ」は、全ての種族の中でも三指に入るほどの戦闘能力が高い。ダークエルフの血を引いているレノの肉体は、子供ながらに実戦に対して即座に適合し、狼男の動きがしっかりと見えていた。


「はっ!!」


ズドォオオオッ!!


「ゲブゥッ……!!」


狼男の腹部を突き刺し、そのまま上半身と下半身を2つに裂くと、すぐに周囲を取り囲む仲間たちが獰猛な牙を向けて近づいてくる。


(残りは……21体)


冷静に残りの狼男を数えると、レノは先ほど殺した狼男の槍を拾い上げ、適当な長さに叩き折ると、両手に柄の長さが違う「風の槍」を装備する。

残りの魔力は体感的に半分を切り、火傷もさらに痛み出している。それほど長くは動けないかもしれないが、その前に何とか終わらせなければならないのだが、


「……無理だろ」



――ウガァァアアアアアアアッ!!



一斉に狼男たちが飛びかかり、レノは両手の槍を握りしめた。


「ちっ!!」


ズドォンッ!!


「ガアッ……!?」
「ウオオンッ!!」


一体を右手の槍で貫くと、後方から新手が襲い掛かり、レノは左手の槍を射し込む。


ズゥンッ!!


「ギャウッ!?」
「ウォンッ!!」


ドゴォッ!!


「がはっ……!?」


前後を突き刺した狼男に気を取られていたところ、右横から一体が体当たりを仕掛け、レノは槍を手放してそのまま吹き飛ばされる。



ドバァアアアアアッ!!



「「ギャンッ!?」」


槍がレノから離れた瞬間、狼男たちの身体が四散し、どうやら使い手を失った事で槍の先端の「嵐」が弾けたようだ。レノは地面に倒れ込みながらも、飛びかかってくる狼たちに掌を向け、


「――吹き飛べ!!」


最大の魔力を右手に送り込み、



ドゴォオオオオンッ!!



「「「ギャウウウウンッ!?」」」



自分が持てる最大の魔法「撃嵐」を放ち、レノの周辺に竜巻が起きる。これで6匹近い狼が巻き込まれて遥か上空に吹き飛ばされる。だが、今の一撃で魔力を大幅に使い切り、視界が一瞬歪む。


「くっ……」
「「「ガァアアアアアッ!!」」」


まだ半数以上残っている狼男たちが、一斉に向かってくる。レノは武器になりそうなものを探すが、生憎と見当たらない。残された魔力は精々「嵐弾」を一発放てるかどうか、魔石を使えば転送で逃げることも可能だであり、すぐに追いつかれるだろうがそれでも時間を稼ぐことは出来る。



「転送……!!」



ゴォオオオオッ――!!



ジェットコースターの要領でレノの身体が転送され、すぐに1キロほど離れた草原に移動する。



――ウオォオオオオンッ!?



先ほどまでレノが居た場所で狼たちの困惑の鳴き声が聞こえるが、すぐ彼の臭いを辿って追跡してくるだろう。



だが、十分に「合成魔法」を試せる時間は出来た――
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