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第2章
レクリエーションsideハンス 3/3
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紆余曲折を経て、ハンス達は採掘場に辿り着いた。切り立つ絶壁。ゴツゴツとした岩肌。聳え立つ岸壁は圧巻の代物である。
ここに至るまで、ハンスが被った被害はというと・・・・。はぐれ蜂の針×2。軍隊蜂の襲撃。飛來熊の張り手。トッコウウオの特攻×99。マダラヘビのシビレ毒。その全てが、オルラカとナルキッススの巻き添えや、ルビアナを庇っての負傷だ。
満身創痍のハンス。残り1時間。下手に動きまわらず、ハンス達はここでミッションをこなす事に決めた。
「道具がないと厳しいな」
「うーん。鎖に何をエンチャントすればいけるかナ?ハーンスはナニを触媒にしたの?」
「ああ・・・・俺はこの手袋だな」
ルーファの問い掛けに、フッと表情を緩めるハンス。
「手袋?」
「執事の必需品だよ。俺はお嬢様の執事だからな」
少しくたびれた手袋をそっと撫でると、キュッとはめなおす。ハンスはそれに魔力を纏わせた。
「魔力武装」
「ヒュー♪詠唱カットだネ。もしかして、無詠唱で攻撃魔法もいけたりするのかい?」
「いや、流石にそこまではできない。これは簡単なヤツだからカットできてるだけだ」
努力家のハンス。元々の素地も高い。ヴィクトリアの護衛として高めてきた技術と身体能力も助けて、他の者達よりも上位の魔法も取得している。・・・・すべてヴィクトリアの執事である為に、ハンスが身に付けたものだ。
「ハハハ。冗談だョ。無詠唱だなんて芸当、魔導師カイン様ですらできないんだろ?」
意図して発動させる魔法には、言葉・・・詩が必要だ。それは、式であり過程。たとえ解があっていたとしても、途中式を抜かすと正しく発現されない。高度な魔法になればなるほど、その詩祈は長く重く多量の魔力を必要とする。
「鉱石の発掘か。下手に採掘すると岩が落ちてくる。オルラカとナルキッススは、今回手を出さないでくれ」
二人に釘を刺しておく。
「僕に相応しい見せ場を!」
「俺にまかせてくれれば、採掘なんてあっという間に!」
「手を」
「だ・さ・な・い・で・く・れ」
笑顔を消したハンスの低い声。
「あっ・・・・ああ。僕も少々疲れてきたようだ。ここは君に譲ってあげよう」
「そうだな。俺もそれで構わない」
顔を引き攣らせ、大人しく見守る二人を背に、ハンスは岸壁に触れる。
「ハンスさん。ここにサザメ石と烈紅石、ミカゲ屑が埋まってます」
同じく岸壁に触れていたルビアナが告げる。
「すごいな。ルビちゃんはわかるのかい?」
「あっ。私の触媒は土なんです。小さい頃から土に触れてきたので、何がうまってるか大体わかるんです」
「それは、便利な才能だネ。嫁に欲しいョ」
「へ?」
「ハーンス。よければその手袋に風属性をエンチャントしてあげよう」
ルーファがハンスに声をかける。それに反応したのは、ナルキッススだった。
「風魔法だって?」
そう叫ぶとハンスに駆け寄り、ルーファを押しのける。
「それなら僕に任せたまえ!この風の貴公子!ナルキッスス・バルボコディウム!美しく華麗な風の舞にて、君に優美なる愛を授けよう!!」
「いや、いい。ルーファがするから。ナルキッススは何もしないでくれ。」
「遠慮なんてよしてくれ。ほら、いくよ!」
静止するハンスを無視し、ナルキッススは鏡を掲げ呪文を唱える。
「自由を纏いし荘厳なる蒼き風よ。天空の門を開きて我が前に現れよ。虚空を舞て音を奏で謳うがいい。・・・・彼の者に力を与えよ!風属付与!」
大気が震える、風が舞う。渦巻く空気がハンスに向かう。
「いや!おい!エンチャントでなんでそんな大業な詩を!」
「僕が魔法を使うんだ。美しく奏でるのは当然だろ」
得意気にふんぞり返るナルキッスス。どんどんと風が強さを増す。
「しかも、アレンジしすぎデタラメだョ。これヤバイ。避難案件。みんなー逃げてョ!危ないョ!!」
採掘場にいる他の班にも、ルーファが慌てて警告する。
「僕の華麗な魔法が・・・・何故こんな事に・・・・」
荒れ狂う風を目にし、茫然自失なナルキッススに、オルラカが掴みかかる。
「なにやってんだよ!ナルシス!おめぇ!制御できてねーじゃねーか!」
「そっそんな風に言われてもっ!!」
「オルラカ、今はナルキッススを責めるな!それよりも避難だ!ルビアナ嬢、ここから離れるんだ!」
術者の手を離れ、暴れる風。ハンスは、飛んでくる石を弾きながら避難を促す。土壁を作り、逃げ遅れた人を守ろうと防御に徹するルビアナ。
「ルビちん!上!!上だョ!!!避けて!!」
ルーファの叫びに上を見上げるルビアナ。その頭上に特大の岩が・・・・
「ルビアナ嬢!」
「あっああっ・・・・」
ーズッドオオオオオオーーーン!!!
「ルビちん!」
ここに至るまで、ハンスが被った被害はというと・・・・。はぐれ蜂の針×2。軍隊蜂の襲撃。飛來熊の張り手。トッコウウオの特攻×99。マダラヘビのシビレ毒。その全てが、オルラカとナルキッススの巻き添えや、ルビアナを庇っての負傷だ。
満身創痍のハンス。残り1時間。下手に動きまわらず、ハンス達はここでミッションをこなす事に決めた。
「道具がないと厳しいな」
「うーん。鎖に何をエンチャントすればいけるかナ?ハーンスはナニを触媒にしたの?」
「ああ・・・・俺はこの手袋だな」
ルーファの問い掛けに、フッと表情を緩めるハンス。
「手袋?」
「執事の必需品だよ。俺はお嬢様の執事だからな」
少しくたびれた手袋をそっと撫でると、キュッとはめなおす。ハンスはそれに魔力を纏わせた。
「魔力武装」
「ヒュー♪詠唱カットだネ。もしかして、無詠唱で攻撃魔法もいけたりするのかい?」
「いや、流石にそこまではできない。これは簡単なヤツだからカットできてるだけだ」
努力家のハンス。元々の素地も高い。ヴィクトリアの護衛として高めてきた技術と身体能力も助けて、他の者達よりも上位の魔法も取得している。・・・・すべてヴィクトリアの執事である為に、ハンスが身に付けたものだ。
「ハハハ。冗談だョ。無詠唱だなんて芸当、魔導師カイン様ですらできないんだろ?」
意図して発動させる魔法には、言葉・・・詩が必要だ。それは、式であり過程。たとえ解があっていたとしても、途中式を抜かすと正しく発現されない。高度な魔法になればなるほど、その詩祈は長く重く多量の魔力を必要とする。
「鉱石の発掘か。下手に採掘すると岩が落ちてくる。オルラカとナルキッススは、今回手を出さないでくれ」
二人に釘を刺しておく。
「僕に相応しい見せ場を!」
「俺にまかせてくれれば、採掘なんてあっという間に!」
「手を」
「だ・さ・な・い・で・く・れ」
笑顔を消したハンスの低い声。
「あっ・・・・ああ。僕も少々疲れてきたようだ。ここは君に譲ってあげよう」
「そうだな。俺もそれで構わない」
顔を引き攣らせ、大人しく見守る二人を背に、ハンスは岸壁に触れる。
「ハンスさん。ここにサザメ石と烈紅石、ミカゲ屑が埋まってます」
同じく岸壁に触れていたルビアナが告げる。
「すごいな。ルビちゃんはわかるのかい?」
「あっ。私の触媒は土なんです。小さい頃から土に触れてきたので、何がうまってるか大体わかるんです」
「それは、便利な才能だネ。嫁に欲しいョ」
「へ?」
「ハーンス。よければその手袋に風属性をエンチャントしてあげよう」
ルーファがハンスに声をかける。それに反応したのは、ナルキッススだった。
「風魔法だって?」
そう叫ぶとハンスに駆け寄り、ルーファを押しのける。
「それなら僕に任せたまえ!この風の貴公子!ナルキッスス・バルボコディウム!美しく華麗な風の舞にて、君に優美なる愛を授けよう!!」
「いや、いい。ルーファがするから。ナルキッススは何もしないでくれ。」
「遠慮なんてよしてくれ。ほら、いくよ!」
静止するハンスを無視し、ナルキッススは鏡を掲げ呪文を唱える。
「自由を纏いし荘厳なる蒼き風よ。天空の門を開きて我が前に現れよ。虚空を舞て音を奏で謳うがいい。・・・・彼の者に力を与えよ!風属付与!」
大気が震える、風が舞う。渦巻く空気がハンスに向かう。
「いや!おい!エンチャントでなんでそんな大業な詩を!」
「僕が魔法を使うんだ。美しく奏でるのは当然だろ」
得意気にふんぞり返るナルキッスス。どんどんと風が強さを増す。
「しかも、アレンジしすぎデタラメだョ。これヤバイ。避難案件。みんなー逃げてョ!危ないョ!!」
採掘場にいる他の班にも、ルーファが慌てて警告する。
「僕の華麗な魔法が・・・・何故こんな事に・・・・」
荒れ狂う風を目にし、茫然自失なナルキッススに、オルラカが掴みかかる。
「なにやってんだよ!ナルシス!おめぇ!制御できてねーじゃねーか!」
「そっそんな風に言われてもっ!!」
「オルラカ、今はナルキッススを責めるな!それよりも避難だ!ルビアナ嬢、ここから離れるんだ!」
術者の手を離れ、暴れる風。ハンスは、飛んでくる石を弾きながら避難を促す。土壁を作り、逃げ遅れた人を守ろうと防御に徹するルビアナ。
「ルビちん!上!!上だョ!!!避けて!!」
ルーファの叫びに上を見上げるルビアナ。その頭上に特大の岩が・・・・
「ルビアナ嬢!」
「あっああっ・・・・」
ーズッドオオオオオオーーーン!!!
「ルビちん!」
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