種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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闘人都市編

地下闘技場一回戦

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「レノ、あんたの出番だよ!!話はそれぐらいにして試合場に上がりな!!」


後方からバルに声を掛けられ、振り向くと既に試合場には1人の大男(3メートル級の巨人族)が待ち構えていた。あれがレノの一回戦の対戦相手だろう。バルに急かされながら、「A」の試合場に急ぎ、審判に連れられて鉄柵に囲まれた闘技場に上がり込む。


「え~……これより、剣乱武闘の「参加証」を賭けたトーナメントを行う!!各試合場の選手は決して「故意」に相手を殺す事は無いように!!」
「「「うおぉおおおおおおおっ!!」」」


それぞれの試合場から歓声が上がり、出場者全員が気合を入れる。レノの相手の大男も同じように咆哮を上げ、こちらに武器を構える。


「ふんっ……小僧、怪我をする前に棄権した方が身のためだぜ?」
「あれ……普通に喋れるの?」
「……当たり前だろ、何言ってんだお前」


ごく普通に話しかけた巨人族の男に対してレノは驚きを隠せない。そんな彼の態度が気に喰わないのか、男は鼻を鳴らして背中に装着させた戦斧を引き抜く。

てっきり、ゴンゾウのように「巨人族」はやたらと区切りを付けた話し方だと思っていたが、どうやら彼だけが変わった喋り方をするらしい。もしかしたら彼の一家独特の訛った喋り方である可能性が高い。

審判役も務めているのか、カインがまるでボクシングの審判のような服装に着替え、試合場に降り立つ。


「……用意はいいな?」


カインの言葉に巨人族の男は戦斧を構える。単純な大きさならばジャンヌのジャイアント・キリングにも匹すし、彼女と戦う事を想定するとしたら絶好の相手かも知れない。レノはミキから受け取った短剣を抜き取り、そんな彼等の様子をバルは黙って見つめ、ヨウカとミキは離れた場所から心配そうに見つめてくる。


「……開始ぃっ!!」


カァアアンッ!!



ご丁寧にコングの鐘の音まで鳴らされ、それぞれの闘技場で選手たちが動き始める。


「ふんっ!!」


ビュオッ――!!


眼の前の大男は、戦斧を頭上から振り上げ、明らかに殺す気で刃を落としてくるが、


「肉体強化(アクセル)」


レノは瞬時に右腕のみ肉体強化させ、振り落される戦斧に対し、


ガキィイイインッ!!


「なにっ……!!」
「っ……!!」


――短剣を掲げた片腕のみで受け止める。放浪島で習得した「部分強化」であり、右腕だけを魔力で強化させることで、途轍もない腕力を得られる。無論、腕だけを強化したところで振り落される刃を受け止める事は不可能。当然ながらに体を支える両足も強化済みであり、刃を横に反らす。


ガァンッ!!


「くっ……ふんっ!!」
「おっと」


大男は戦斧の刃が闘技場にめり込み、咄嗟に巨体に似合わず俊敏な動きで右足を繰り出すが、それをいとも簡単に体勢を低くさせながら避けると、レノはがら空きの巨大な右足にそっと手をやり、


(力の流れを掴んで……押し込む)


拳を叩き込むのではなく、掌で押し込むように右足を退けると、


「のわっ!?」


ドスンッ!!


大きくバランスを崩した大男は、そのまま派手に転倒する。彼は何が起きたのか訳が分からず、顔を上げたときには、


「チェックメイト」
「ぐっ……」


その喉元には既にレノが「短剣」の刃を構えており、苦悶の表情を浮かべるしかない。


「勝負あり!!勝者、レノぉおおおおおっ!!」
「え、ええっ……?」
「な、何だ……何が起きた?」
「相手の選手が勝手に転がって……ええっ!?」


試合開始から早くも決着がつき、周囲の観客たちは驚きを隠せない。レノの様子をじっと見ていたバルたちは安堵の息を吐き、あまりにもあっさりと終わったことに観衆は呆気にとられる。カインに勝ち名乗りを受け、レノは試合場から降りると、喜色満面のバルが迎え入れる。


「やるじゃないか……あのおっさんも相当な実力者だったんだよ?」
「だろうね……殺されるかと思った」
「は、よく言うよあんたも!!」


ばんばんと背中を叩きながら、バルと共にヨウカ達が座る机に向かう。次の試合は他の選手が終わるまでお預けであり、この間に休憩や武器の見直しをする事も出来る。


「見てたよレノたん!!おめでとう、すごかったね!!」
「流石ですね……ですが、当たり前の結果とも言えますね。トウキョウであの男を倒したあなたが、有象無象にやられるはずがありません」
「そうでもないよ……こっちも腕が痺れた」


正確に言えば右腕と両足が痺れている。先の一撃を真面に受け止めたせいか、肉体強化を施しても完全な防御は不可能だった。だが、短剣の方は流石に聖剣の名に恥じぬ頑丈さであり、刃毀れ1つ起こしていない。


「それにしても……あまり感心できる内容ではありませんでしたね。幾ら腕力に自信があると言っても、決してあのように正面から受け止めてはなりませんよ」
「そうかな……いや、そうだな」


ミキに咎められ、確かに無茶をしたことは自覚している。だが、どういうわけかあの男の一撃を受け止められる自信はあった。放浪島での北部山岳で暮らしていたころ、人型の魔獣も多く生息している。中にはサイクロプスにも匹敵するという危険な存在も居り、そいつらに比べれば先の大男は特に驚くべき相手ではない。まあ、ミキの言葉も一理あるため、これからの試合は無茶をしない様に気を付けねばならないが。
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