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第四章

無事だった

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「ロット。これを、僕に教えようとしてたのか?」
「ピーピー」
 ロットは頷く。
 迂闊だった。Pちゃんがこんな物をロットに持たせたという事は、何かメッセージがあるものと考えるべきだった。
 アンテナの一端を見ると、USB端子がある。
 早速、タブレットPCにつないでみた。
 何かのソフトがPCにインストールされる。
 やがで、どこかの森の中の映像が現れた。
『ご主人様』
 PCのスピーカーから、Pちゃんの声が聞こえてくる。
『ようやく、気が付いてくれましたね』
 Pちゃん、生きていた! よかった……
 てか……これ、通信機になっていたのか。
「Pちゃん。いったい何があった?」
『村が、武装集団に占領されています』
 それは知ってる。
『そいつらに、エシャーさんが捕まってしまいました』
「なんだって!? エシャーは無事か?」
『今のところ。檻に閉じ込められているだけですが、奴らが、この後エシャーさんをどうするつもりか分かりません』
「Pちゃんは、無事なのか?」
『私は、なんとか逃げられました。今は、近くの森に隠れています』
 という事は、この映像はPちゃんが今見ている景色ってことか?
「分かった。車が動くようになったら、すぐに迎えに行く」
『待って下さい。私は、ご主人様を守る事を最優先にしています。ですから、ご主人様が危険な事をしようとしているなら、止めなければなりません』
「来るな、とでも言うのか?」
『私には、ご主人様の行動を止める事はできません。ですが、危険があるなら、それをお教えする義務があります。この村には百人近い武装集団がいて、とても危険です。ロボットスーツを使っても、切り抜けられる可能性は五パーセント以下でしょう』
「知ってる。だけど、そこにエシャーがいるんだろ?」
『危険を承知でご主人様が、エシャーさんを助けるというなら、私は全力でお助けいたします。どういたします? エシャーさんを助けますか?』
 そんなの、最初から答えは決まっている。
「助ける以外の選択肢は、僕にはない」
『承知しました。このP0371。微力を尽くして、ご主人様をお助けいたします』
「あのカイトさん。この声は、お仲間さんですか?」
 ミールが、PCを覗き込んできた。
「そうなんだ。無事だったんだよ」
「よかった」
『ご主人様。今、女の人の声が聞こえましたが……』
「ああ。今、客が来ているんだ」
『私がいない間に、女を連れ込んだんですか?』
「ちっがあーう!」
『不潔です。ご主人様が、そんな人だなんて……思っていましたが……』
 思ってたんかい。
「だから、違うと……」
「あの、Pちゃんさん。何か誤解されてるみたいですが……」
『Pちゃんでいいです。「さん」はいりません』
「ではPちゃん。あたしはナーモ族のカ・モ・ミールと申します。ミールと呼んで下さい」
『ミールさんですか? どうして、そこにいるのです?』
 ミールは状況を説明した。
『じゃあ、私たち入れ違いになってしまったのですか?』
 納得してくれたか……
『でも、ミールさん、気を付けてください。ご主人様は猫耳萌の変態ケモナーですから。くれぐれも私と合流するまでの間、襲われないように』
 だから、襲わないよ。
「それなら、大丈夫です。襲われる前に、あたしの方から襲いますから」
『なんですってぇ!』
「冗談ですよ」
『もし、そんな事やったら殺しますよ』
「やりませんて……それよりお聞きしたいのですが、荷物は無事ですか?」
『荷物? レットドラゴンの肝臓ですか? 私の手元にありますよ』
「よかった。取っておいて下さい」
 通信は終わった。
 時計を見ると、車が動かせるまで一時間ある。
 何か、いい作戦は……思いついた。
「ミール、出発前にやってもらいたい事がある」
(第四章 終了)
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