種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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腐敗竜編

魔力供給

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レノは騎士団全員の視線を浴びながら、聖導教会の魔術師の1人に握手を行い、彼は何をする気なのかと不思議そうな表情を浮かべるが、


ボウッ……!!


「うおぉおおおおっ!?」
「うっさい、耳元で騒ぐな」
「す、すいません……」


魔術師は急速に自分の魔力が回復していく感覚に陥り、まるで高級品である「マナ・ポーション(魔力を回復させる液体)」を使用した時と似ている。だが、此方の方が遥かに魔力が回復し、僅か数秒ほどで彼は身体に魔力が満ち溢れている事に気が付く。


「はい、終わり」
「す、すごい……本当に回復した」
「魔力供給……!?上級スキルじゃないですか!?」


今まで空気と化していたミカが驚きの声を上げる。彼女は野営地に着いて早々にテントに直行し、着替えとシャワーを終えて戻ってきたところだ。アルトが既に居なくなっていた事に衝撃を受けたが、これ以上の面倒事は御免なのかこの場を離れるつもりはないらしい。

レノは次の魔術師を呼び出し、彼の前にすぐ魔術師の列ができる。中には魔術師ではないにも関わらず、彼の「魔力供給」を味わいたい人間もいた。レノの行為が遊戯ではない事にジャンヌは眉を顰めるが、特に彼等を咎めず、レノの技術に感心する。


(……地下で私に行ったものですね)


最初に会った時にレノはジャンヌの額に触れ、彼女の「聖痕」をさり気なく回収した。その際に彼女は一度根こそぎ魔力を奪い取られたはずだが、すぐにレノから魔力を送り込まれて事なきを得た。ゴウのように老化しなかったのは彼の処置が速かったからだと思われる。

「聖属性」の聖痕を失ったとしても、彼女はテンペスト騎士団一の武芸者であり、人間にしては相当な魔力容量を誇る事に変わりはない。だが、レノは彼女の10倍以上の魔力を所持しており、次々と魔術師たちの魔力を回復させていく。

1人につき数秒ほどの魔力供給を行い、次々と回復させていく姿に全員が驚愕する。一体、どれほどの魔力を有しているのか想像できない。



――遂には魔術師どころか、野営地に居る者全ての魔力を回復させ、レノは軽く首を動かして一息を吐く。これほどの人数の魔力を回復させたにも関わらず、彼自身に特に異変は無い。



「すごい……流石はエルフだな!!」
「身体に魔力が満ち溢れてやがる……これなら闘える!!」
「しかし……本当に何者なんだ?普通じゃねえよあいつ……」
「どうでもいいだろ。今は頼りになんだからよ……」


殆どが感動する中、数人の人間がレノに対して疑惑の視線を向ける。迷宮に突入した際には見ない顔であり、一体何処から来たのかと疑問が浮かぶのは当然だ。だが、ジャンヌ達が慌ててレノの隣に立ち、


「えっと……か、彼は私の友人であり、私と共に聖天魔導士であるミキの下で修練を共にしました。今回は私達の危機を聞きつけ、既に地下迷宮内に出向いていたのです」
「そ、そうだぞ。それに彼は私の弟みたいなものだからな!!心配しないでくれ!!」
「わ、わぅんっ!!私のご主人様的な存在です!!」
「俺の、親友」
「「「おぉおおおおおおっ!!」」」


4人の説明に驚嘆の声が上がる。特に「聖天魔導士」のミキの元でジャンヌと共に修練を受けたという事は彼女にとって姉弟弟子にあたり、それならば先ほどの一連の行為も納得できなくはない。

さらにはリノンの「弟」ポチ子の「ご主人様」ゴンゾウの「親友」発言に彼が只者でないことがはっきりと分かるが、何人かが妬みと疑惑の視線を向けてくる。


「私達のポチ子ちゃんにご主人様だなんて……」
「許せん……が、下手に手を出せない」
「機会を待て……好機を見逃すな」
「……やれるものならやってみろ。但し、覚悟しろよ?」
「「っ!?」」


不審な声がレノの耳に入ってくるが、一睨みすると彼らは慌てて他の者たちの陰に隠れる。ハーフエルフの聴力を舐めていたようであり、彼らの反応に溜息を吐きながらも、魔術師たちの方に視線を向ける。


「早く転移魔方陣を展開したら?」
「そ、それが……これだけの規模になると時間がかかるのです」
「5人ほどならすぐにでも送り込めますが……」
「なら、メンバーは決まったな」


レノは振り返ると、すぐにジャンヌたちが頷く。レノ、ジャンヌ、リノン、ポチ子、ゴンゾウの5人組が集まり、転移魔方陣の上に移動する。


「す、すいませ~ん……私はここに残りますよ?もう、足がぱんぱんで……」
「分かりました……ここまでお疲れ様でした」
「わふっ……お元気で」
「迷宮内では色々とあったが……まあ、頑張った方でしたよ」
「……さらば」
「じゃあね~」


彼女にそれぞれが適当な返事を軽く返すと、すぐに魔方陣が発光し、



「――では、参りましょう……聖導教会総本部へ」



次の瞬間、身体が浮き上がる感覚が広がり、視界が光の奔流に覆われた――
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