種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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腐敗竜編

聖導教会総本部

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「ここが……聖導教会?」
「の、総本部です」


レノ達は一瞬の浮遊感の後、放浪島から別の場所へと「転移」する。最初に視界に入ったのは地面に広がった巨大な転移魔方陣、そして魔方陣の周囲に段差と大理石の支柱が何本も建てられており、まるでギリシャ神話の神殿を思わせる構造の広間が広がっていた。

全員が無事に転移した事を確認し、ジャンヌはすぐに豪勢な装飾が施された扉を見つけ出し、一刻も早く教会側の人間に聖剣の回収を報告するために歩み出そうとした時、


ジャキッ……


「「っ!?」」


突然、無数の支柱から物音が聞こえ、全員が身構える。流石に全員が戦闘慣れしているため、反応速度が速いが、


「動くな!!」
「止まれ!!」


無数の魔術師とワルキューレ騎士団の女騎士達が支柱の後ろから現れ、レノ達を取り囲む。どうやらこの部屋の見張り番らしいが、明らかに敵意を向けている。


「……あ、あの……私達は聖剣を……」
「黙りなさい!!」
「わうっ……」
「待ってくれ、私達は………」
「リノンッ!」


ポチ子が恐る恐る声を掛けようとした時、すぐにワルキューレの1人が声を荒げ、犬耳をしおらせる。そんな彼女たちの態度にリノンが眉を顰めて前に出ようとしたが、ジャンヌが押し留める。ジャンヌは一歩前に出ると、すぐに1人の女騎士が段差を降りて彼女前に立つ。

彼女は片膝を着いて戦意が無いことを証明すると、女騎士達も武器を下げる。やがて、1人の女騎士がジャンヌの前に移動し、


「教皇様がお呼びです……貴女だけが謁見を許されました」
「……他の者は?」
「申し訳ありませんが、別室で待機してもらいます」
「……牢獄ではないでしょうね」
「まさか、一先ずは訓練場に案内します」


一方的に告げると、彼女は背を向けて歩き出す。口論する気はないらしく、仕方なくジャンヌは申し訳なさそうにレノ達に振り返り、彼らも同様に仕方がないと首を振る。そのままジャンヌは女騎士の後に続き、扉を後にする。残されたレノ達はワルキューレの集団に囲まれながら、


「こちらにどうぞ」


1人のワルキューレが前に出ると、残された全員を別の扉に案内する。が、その際にレノだけは彼女の顔が見覚えがある。名前は覚えていないが、あの「トウキョウ」でゴウに突っかかった女騎士で間違いないが、あちらも覚えていないのか特にレノを見ても反応せず歩き出す。


ギィイイッ……


扉を開かれ、大きめの通路が広がる。地面はコンクリートで構成されているらしく、大理石の柱が幾つも建っている。また、巨人族でも通れそうなほどに天井は高く作られており、ゴンゾウが安堵したように頷く。

流石にあの「聖導教会」の総本部というだけはあり、廊下や天井にも様々な豪華な装飾が施されており、庭の方には巨大な黄金の女神像が建てられていた。もしも盗賊だのバルが入り込めば、間違いなく目を輝かせるだろう。


「へえっ……」
「ここが聖導教会……」
「すごく、大きいです……」
「……綺麗だ」
「ふふん……」


4人が感嘆の声を上げると、道を案内する女騎士が鼻を鳴らす。余程にこの教会を褒められることが嬉しいのか、それとも田舎者同然の反応をする4人に馬鹿にしているのか、その両方なのかは分からない。



――やがて、随分と歩かされたがやっと「訓練場」らしき場所に連れ込まれ、四角い大理石の石が敷き詰められた広場へとたどり着く。そこには無数の「ワルキューレ騎士団」の女騎士が調練中であり、レノ達の姿を確認してすぐに訓練を辞める。



「……ミル!!そいつらが例の方々かい?」
「はい!!テン団長!!」
「ふむっ……」


騎士団長らしき筋骨隆々の女性が前に出て、レノ達を前に移動し、腕を組みながら仁王立ちする。容姿は巨人族のような巨体であり、突き出た胸は最早筋肉だけで構成されているのではないかと思うほどに分厚く、他の物よりも一際露出が激しい鎧を纏っている。外見から察するに年齢は40代ぐらいを思わせるが、訓練場に居る誰よりも立派な体格だった。彼女はレノ達を一通り見渡し、そして頭を下げる。


「ワルキューレ騎士団の総団長「テン・クウ」だ。気軽にテンと呼んでくれや」
「わ、ワルキューレ総団長……!?」
「あ、あの剛腕の騎士として名高い!?」
「おおっ……」
「?」


レノ以外の3人が驚いた声を上げるが、当の彼女は頭を搔いて恥ずかしげに頬を染める。


「その恥ずかしい名前で呼ぶのはやめてくれないかい……テンでいいよ」
「そ、そんな恐れ多い……貴女を目標に私は武道を志しました!!」
「お、嬉しい事言ってくれるねお嬢ちゃん」


感激した風にリノンは瞳を輝かせ、テンは豪快に笑って彼女の背中を叩く。他の2人も羨望の視線を向け、レノだけが取り残されている。

聖導教会の切り札である「ワルキューレ騎士団」大陸の中でも3本指に入るという実力者揃いの騎士団であり、それを統括する「テン」の名前は大陸中に広がっている。若い頃は「ミキ」と共に戦場を駆け巡り、大きな功績を上げてきた歴戦の強者だ。
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