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13 婚約破棄して下さい。

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「いきなりですけど、婚約破棄してください」
「何故だ!? 私は其方を愛しているのに」
「どの口がそれを言うのです。私は浮気する人は嫌いです。昨晩どこで何をしていたのか、私が知らないとでもいうのですか?」
「……っ、そ、それは……」

済まぬ、と私に土下座をするアルバン王太子。
私の事なんて切り捨てればいいのに、と思う私。

何故こうなったのかと言うと、昨晩王太子が侍女に手を出した事を近衛隊長サンドから訊いたのだ。
サンドはその侍女から詳しく聞き出し、私に報告してくれた。
それは以前私がされた事そのままだった。

「私に子が出来ないからって、他の侍女をつまみ食いするくらいなら、婚約破棄してください。私はものと侍女に戻りますから」
「それはダメだ。私は其方以外と婚約するつもりはない。本当にすまなかった。許してほしい」
「はぁ~……私はそういう女です。以後気を付けてください」

何だか立場が逆転している気がした。
そうか、これを盾にすれば王太子も私の言う事を訊いてくれるのか。
意外な弱みを握った私。

私と今婚約破棄されれば、確かに王太子に顔が丸潰れだ。
ミレンダ令嬢との婚約を破棄した上、侍女だった私を担ぎ上げ大々的に婚約発表までしてしまったのだから。

「あ、でも、側妃が居てもいいのか…」
「側妃など…、私はそのような事は考えておらぬぞ。それよりも早く私の跡継ぎを、私の子を孕んでくれ」

今日も又私に部屋に夜な夜な来てはそう言いながら私の身体を欲する王太子。
もうすっかり夜中のイベントに慣れ切った私はあしらうようになって、王太子をコントロールする。

「そう言えば、今度の祝賀会はどうするおつもりですか?」
「祝賀会……ああ、父の誕生祭の事か。どうするもこうするも、其方も私の正妃候補として参列してもらうに決まっておるぞ」
「私はそんな王族の方々と一緒の席にいたくはないのですが……」
「仕方なかろう。私の婚約者なのだから」

ああ、面倒くさい。
また色々な人が私を見てヒソヒソ私の悪口を言っているのを見るのが辛い。
好きで王太子の婚約者になったんじゃないのに。

「その席には貴族の方々もお見えなのでしょうね」
「ああ、そうだ」
「ミレンダ令嬢とも会うことになるってことなのでしょうね」
「ああ、そうだな。でも近衛兵が其方を守るから問題なかろう」

婚約破棄の話が何故か国王様の誕生祭に摩り替ってしまった。
王太子は私と会話をしながら私の身体を求めた。
今日もいつもと同じように私の中に遺伝子をぶちまけるつもりなのだろう。

もうそろそろ子が出来てもおかしくないのだけれど、一向にその気配が無いのは何故だろうか…。


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