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現在
入院
しおりを挟む頭から血の気が引いたのは、恭平の顔を見た瞬間だ。
修也に殴りかかった恭平を見て、思わず修也を庇ってしまった。それが更に、恭平の怒りを増すことになったのだと思う。
ふざけるなと言って恭平の伸ばした足が、零の腹に当たった。
「いっ…!」
真っ先に駆け寄ってきたのは、恭平ではなく修也だった。
病院で絶対安静を言い渡された零は入院することとなった。
「恭平、あの…」
言い訳をしようとしたものの、恭平は零の言葉を遮った。
「悪い。今は冷静に話し合える気しないから、…また明日来る」
「あ…」
確かに、家に上げるべきではなかったのだ。けれど動くのは結構しんどくて、家に上げる以外なかったのだ。けれど、キスを受け入れたのは紛れもなく自分である。
「…ごめんなさいっ…!」
誰に届くこともなく、謝罪の言葉は宙へと消えていった。
病院の外に出た修也は、ため息をついて目の前のベンチに座る。
(何でこうなったんだ…)
ただ、俺は忘れ物を家に取りに帰っただけだったはずだ。 電話したけど出なかったから 買い物にでも行っているのかと思ったのに、 わけがわからなくなってしまった。 蹴るつもりなんてなかったのに。
「…あ」
今までどこにいたのか、病院の入口から出てきた修也が気まずそうに目をそらす。
「……帰ってくれますか」
それしか言えない自分が嫌だ。今、零を庇われでもしたら…きっと、零に思ってもないことを言ってしまいそうで怖いのだ。
「…勝手に家に入ったことは謝る。けど、」
「謝るぐらいなら二度と俺たちに関わらないでくれ!アンタのせいで俺は、自分で自分の子供を殺すところだったんだ!」
「っ……」
家に上げた、だけなら許せた。なのに、どうして。
(もう、嫌だ…)
俺のもののはずなのに、俺の腕をすり抜けていく。俺の顔を見ているようで、本当は違うところを見ている。そんな零が、大嫌いなのに、好きなのだ。
だからこんなにも苦しいのだ。
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