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15話

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「何者だ!」

「フハハッ、我こそは魔物の頂点。魔王である!」

「な!魔王だと!?」

「まだ姿は見られたくなかったが仕方がない。貴様ら全員ここで始末してやる!」

「全員剣を抜け!戦闘開始だ!」

「魔法で牽制しろ!」

 ドォォン!

 バン!

 数々の魔法が魔王に直撃する。

「やったか!?」

 煙が消えるとそこには無傷の魔王が立っていた。

「フハッ、なんだこれは?ぬるい!ぬるすぎる!」

 魔王は手のひらに魔法を出現させた。

 「ダークボール」

 放たれた魔法は真っ直ぐ飛んでいき魔法を放っていた団の人達に直撃した。

 ドゴォォン!!

「な!大丈夫か!?」

 煙が消えそこに残っていたのは真っ黒に焦げた団員だった。

「く、くそ!全員距離をとるな!魔法を受けるぞ!近接戦に持ち込め!」

「は、はい!」

「ほぅ?我に近接戦を挑むとは…ふん!」

 魔王を囲むようにしていた団員達は魔王の振った一撃で上と下に体がわかれた。


 このままではまずい!

「撤退!撤退だ!」

「我が逃すとでも思ったか!ダークボール!」

 ドゴォォン!!

 撤退しようと後ろを向いた団員達は魔王の魔法によって黒焦げになってしまった。

「全員逃げろ!俺が時間を稼ぐ!」

 このままでは全滅。副団長はみんなを逃がすため覚悟を決めた。

「私も残るわ」

「ん、私も」

「俺も残るぜ!」

 副団長のあとに続き団員がみんな残ると言い出した。

「馬鹿野郎!全員残ってどうする!この事を団長に伝えないといけないだろ!」

「それなら1人で十分よ」

「ん、1人で十分」

「そうだぜ、1人で十分だ!」

 みんなの顔を見るともう何を言っても聞かない、という顔をしていた。

「…みんな悪いな。ロイ!お前が王都に戻れ!団長にこの事を伝えろ!」

「そんな!僕も戦わせてください!」

「ダメだ!お前が一番若いんだ!お前が生き残れ、早く行け!」

「…すみません、みなさん」

 涙でぐちゃぐちゃになった顔を拭き、森の出口に向けて走り出した。

「これでいいんだ、これで…お前ら!ロイの時間を稼ぐぞ!」

「「おう!(はい!)」」




 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい

 何度も頭の中でみんなに謝り続けながら森の出口へと走った。

 やっと出口が見えた、その時

「惜しかったな」

 後ろに現れたのは魔王

「魔王がここにいるってことは、みんなはもう…」

「クソォォ!」

 泣きながら魔王に向かって剣を振ったが

「ふん!」

 魔王が一瞬で距離を詰めて腕でロイの腹を貫通させた。

「ぐふっ」

 ロイは団長に伝えることができずその場に倒れた。




「遅いなぁー、ねぇ団長?」

「ん?ああ少し遅いな」

 予定の時間より1時間ほど経っていたがリントブルム騎士団は帰ってきていなかった。


 それから3時間待ったけど帰ってくる様子はない。

「団長もしかしてみんなに何かあったのかもしれないです」

「ああ、俺も心配になってきた。」

「僕探してきます!」

「ま、待て!1人は危険だ、他の騎士団の人に頼んで一緒にいけ」

 門に向かう途中、王国騎士団長がいたので訳を話すと付いて来ると言ったので頼んだ。


 西の森の入口につくと誰か倒れていた。

「あ、あれは。ロイ君!」 

 ロイ君はお腹に大きな穴を開けて倒れていた。

「ど、どうしてこんな事に…」

 ロイ君を王国騎士団長が魔法で火葬してくれた。

「森の奥に血の匂いがするな」

 王国騎士団長がそう言うので森の奥に入っていった。


 森の奥に着くとそこは血の海だった。

 まず誰かもわからない黒焦げになった死体。

 手足がおかしな方向に曲がっている死体。

 首が無い死体に上半身と下半身が分かれている死体。

 ぐちゃぐちゃになった死体。

「うええぇ。」

 思わず吐いてしまった。

「これは酷い。」

「ど、どうしてこんな事に。うわあああああ!」

 どうして、どうして、どうして!

 お昼まではみんなと一緒だったじゃないか!

 なのに何故こんな姿に

 一体誰がやったんだ!

 憎い、憎い、憎い、殺してやる、殺してやる!


「ん?なんだまだ生き残りがいたのか?」

「っ!誰だ!」

「我か?我は魔王だ!フハハハ」

「お前がやったのか!」

「ああ、これか。そうだ我がやった。」

 こいつがみんなを!

 コロス、コロス、コロス、コロス、コロス!

 その時僕の頭で無機質な声が響いた。

 「一定の条件を満たしました。これより一時的にスキル「異食」を使用できます。」

 なんだ?今の声は。

 別にいいか。とりあえずコイツを殺してやる!

 「死ねぇ!」

 「ふん、そんなもので我が傷つくとでも思ったか!」

 僕は剣を魔王めがけて思いっきり振った

 魔王はそんなもので傷がつくはずがないと思い腕を出した。

 ドサッ

「…な!我の腕がぁぁ!!」

 キオの振った剣は魔王の腕を切り落とした。

「貴様!許さん!」

「ダークボール!」

 ドゴォォン!!

 キオに直撃するが

「効かないね、おらぁ!」

 煙の中から出てきたのは無傷のキオだった。

 そしてもう片方の腕を切り落とした。

「ぐっ!き、貴様!何者だ!」

「この騎士団の料理人ですよ!ふん!」

 魔王の首めがけて振った剣は命中し、魔王の頭が地面に転がった。

「条件を満たせませんでした。スキル「異食」を取り消します。」

「ふぅー」

「き、キオ。これはどういう事だ!?」

 戦いを見ていた王国騎士団長は目の前で起こったことが信じられなかった。

「僕にもわかりません。でもスキルが関係してるのかと」

「スキルだと?」

 僕は王国騎士団長に持っているスキル、そしてさっきの声で新しいスキルが使えた事そしてそのスキルはもう使えない事を伝えた。

「そんなスキルが…」

「それよりも王国騎士団長、みんなの火葬をお願いします。」

「あ、ああ。」


 王都に戻った王国騎士団長はこの件を王様に伝えてくると行ってしまった。

 僕は宿屋で寝ている団長にどう伝えようと考えたが、ありのままを伝えることにした。


「な、み、みんなが…」

「は、はい…」

 沈黙が辛い

 そりゃあ騎士団の団長だ。

 一番辛いのは団長だろう。

「すまんが1人にしてくれないか」

「わかりました」

 団長の部屋を出た僕は自分の部屋にいた。

「はぁー、どうしてこんな事になっちゃったんだろう。」

「キオ様、キオ様。」

「だ、誰?」

「私でございます。ネズミでございます。」

「え、ネズミ君!?」

「はい、私でございます。」

「な、なんで喋れるの!?」

「実は私、神である主様から命を受けてキオ様の元へやって来たのでございます。」

「え、え、どういう事?」

「はい、私は主様からキオ様を守るように言われて来たのです。」

「主様の神様って僕をこの世界に送ってくれた?」

「はい、そうでございます。」

「そして先程私の力を使いキオ様にスキルを与えました。」

「え!もしかしてさっきの「異食」っていうスキル?」

「はい、スキル「異食」は食べることが出来ない魔物でも食べることが出来るようになるスキルです。」

「だからか!魔王を倒すことが出来たのは!」

「はい、さようでございます。」

「ありがとう、ネズミ君!」

「いえ。しかし、力を使った事で私の力はなくなり主様の元へ帰らないといけません。」

「え?帰る?もう会えないの?」

「それはわかりません。しかし、また会うことが出来るかもしれません。それまでお元気で!」

 ネズミ君はそう言い残し窓から出て行ってしまった。

 また会えるといいなぁー

「今日は色々あったなぁ。明日からリントブルム騎士団はどうなるんだろう。」
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