種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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聖導教会総本部編

力相撲

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「グォオオオオッ!!」


獣のような咆哮を上げながら加藤はデュランダルの元に駆け出し、慌ててテンたちは大剣を引き上げようとしたが、未だに10センチほど程度しか動いていない。幸いというべきか、先ほどと比べても加藤の動きは明らかに減速しており、肥大化した筋肉が逆に仇となっているのかもしれないが、「デュランダル」の元に辿り着くのは時間の問題だ。


「逃がさん!!」


ドスゥウウンッ!!


「「おおっ!!」」


テン達の前に巨人族の王であるダンゾウが立ち塞がり、天井に埋もれたままのゴンゾウに一瞬視線を向け、すぐに加藤を睨み付ける。その表情はいつもの何か考えているか良く分からない無愛想な顔つきではなく、怒りで顔を真っ赤に紅潮させている。


「おぉおおおおおおおっ!!」
「グァアアアアアアアッ!!」



――ドシィイイイインッ!!



ダンゾウの巨体に加藤は一切の躊躇なく、全身で体当たりしてくる。その勢いに彼の身体数歩分引き下がるが、それでも何とか抑えつけると、


「ふんっ!!」
「フンッ!!」


ガシィッ!!


まるで相撲のようにお互いの身体に腕を絡ませ、巨人族の長と異形の勇者の力比べが始まる。体格差は圧倒的にダンゾウが有利だが、腕力ならば加藤も負けておらず、そのまま2人は激しく押し合いを始める。


「ぬんっ!!」


ズンズンッ!!


「ググ……ッ!!……ォオオオオオッ!!」


ズシィンッ!!


一時はダンゾウの剛力で後退したが、すぐに加藤も負けじと足を踏ん張り、逆に押し返す。彼らが一歩動く度に聖堂内に振動が走り、堪らずに訪問者達から悲鳴が上がる。


「す、すげぇっ……これが真の男比べ」
「んな事言ってる場合か!!早く逃げなければ……」
「で、でも……あの人たちの横を通り過ぎないと出入口に行けないわ!!」
「落ち着いて下さい!!皆さんは私達が守ります!!」


再度、騒ぎ始める人々にワルキューレ騎士団が落ち着かせようとするが、現在の状況は非常に分が悪い。


「ウォオオオオオッ!!」
「ぐぐっ……!!」


ズズズズッ……!!


先ほどまで拮抗していた2人だったが、徐々に加藤がダンゾウを押し返す。加藤の力自体は変化はないが、ダンゾウの方は徐々に体力が切れて着ている。加藤の場合は勇者の力によって強化されているが、ダンゾウの場合は純粋な身体能力で応対するしかなく、着実に疲労が蓄積されている。


「こいつはやばいね……センリさん!!」
「……だめです。あれほど密着されていると援護も出来ません」


光球を漂わせて隙を伺うセンリ自身も顔色が悪い。先ほどから全力で魔法を発現させているにも関わらず、加藤に有効打を与えられていない。先ほどのシャベリンならば通用するだろうが、あまりにもダンゾウと加藤が密着しているため、このままでは彼も危ない。

下手に「千(サウザント)の形態魔法(マジック)」で攻撃を行えばダンゾウも巻き込んでしまい、だからと言ってこのまま放置すればいずれはダンゾウが押し負ける。


「くっ……ゴンゾウなら、この大剣も動かせるのに……!!」


リノンは天井を見上げ、恐らくダンゾウや加藤を除いて唯一この場でデュランダルを持ち上げられる人物はゴンゾウだけであるが、彼は天井に埋もれたまま気絶しており、これ以上の期待は酷だ。


「ちっ……あんたらも手伝いな!!」
「そ、そんな事言われても……!!」
「あ、あんた達の責任でしょ!?何とかしなさいよ!!」
「ちっ……臆病者がっ」


テンがダメ元で周囲の人間達に声を掛けるが、その反応は冷たく、彼らはあくまでも傍観者を決め込むようだ。このデュランダルを何とかしない限り、自分たちの身が危ない事にすら気付いていない。


「儂も手伝おう……この老体が役に立つか」
「おお、かたじけないで……国王様!?」
「私も私も~」
「アクア様まで……有り難い」


だが、バルトロス13世とアクアがテン達の元に訪れ、2人もデュランダルの回収を手伝うために力を貸すが、


「くっ……腰に来るのぉっ!!」
「頑張れ~」


老体では腰を屈めるのも苦しく、アクアの場合は空中に浮いた金魚鉢の中に身体を沈めているため、応援する事しか出来ない。


「……言いたくないけど、もうちょい頑張ってくれないかい!?」
「す、すまん……」
「ごめんね~」
「て、テン団長……一応は国王様が相手ですから……」
「生憎と、ワルキューレに国王も何も関係ないよ!!いいからさっさと引っ張りな!!」


あまり力にはならないバルトロス13世も含め、テン達は渾身の力でデュランダルを引き上げようとするが、せいぜい数センチ単位で動かすのが限界であり、全員がへたり込む。


「ま、まさか肉体強化が通じないなんて……鍛錬不足だったか」
「くそっ……昔なら、これぐらいの重さ……いや無理だね」
「わふっ……こんな時にレノさんが居れば……」
「むむっ……拙者の忍術も役に立たないでござる……」
「すまん……あまり力になれん」
「だらしないな~もう」


腰を抑えるバルトロス13世にアクアは肩を叩き、その様子を後方から確認していたホノカとヨウカは近付こうとするが、ワルキューレ騎士団がそれを遮る。


「ね、ねえ……私達も手伝い……」
「だめです!!巫女姫様にそのような危険な真似を……!!」
「しかし、このまま黙って見ているわけにもいかないだろう?」
「それは……いえ、巫女姫様の安全が最優先です!!」


ヨウカの周囲にはワルキューレの女騎士が囲っており、彼女が手伝いに行こうとする度に引き止められ、動けないでいた。
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