種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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第四部隊編

因縁との決着

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眼の前に立つ二人は、以前に出会った時よりも肌色が悪く、瞳孔も開いている。また、前回は森人族の服装をしていたが今回は警備兵が着用する鎧と長剣を装備しており、どちらも地下闘技場で装備していた時よりもみすぼらしい格好だった。


「ウウッ……」
「グゥウッ……」
「……生きてるのか?」


前回のビルドは完全な死体であり、死霊使いに思うがままに操られていたが、レノの眼の前の2人は呻き声を上げているために違和感を感じる。


「死んでいるさ。但し、死人に変えたばかりでまだ生者の意識が若干残っているかもしれないがな……」
「へえ……」


レノは地下迷宮にいた死人の事を思いだし、確かにあの迷宮に存在した数多くの死人も今の二人と同じような状態だった。

ビルドと目の前の2人の違いは死霊使いに完全に「支配」されているかどうかであり、恐らく死霊使いはレノに話しかけている死人に意識を集中している分、もしくは複数人の死人を操作しているせいなのか、完全には2人を操り切れていない可能性もある。


「さて……そろそろ死ね」
「「ウガァアアアアアアアッ!!」」


ドンッ!!


レンとランが同時に動き出し、レノに向けて長剣を引き抜いた瞬間、



「――紫電」



ドォォオオオンッ!!



「「グァアッ……!?」」
「何?」


レノが右手を差し向け、自分の手の内の中で最速の魔法である紫の雷を放ち、2人の胸元をあっさりと貫く。そのまま電流は心臓部に存在すると思われる魔道具にまで到達し、勢いよく生前は腕利きだったはずの2人のエルフは地面は倒れこむ。


「……知り合いじゃなかったのか?」
「別に」


倒れ込んだまま動かなくなったレンとランを見下ろし、レノは残った最後の人物に視線を向け、


「……お前が本体……というわけでもないか」
「当たり前だ。俺は臆病でな……ちっ!逃したか……」
「?」


突然、訳の分からない事を口にする魔術師に首をかしげるが、後にコトミがこの時点で本体と思われる男と接触し、逃走にした事が判明する。


「まあいい……今回は油断はしないぞ」
「……こっちもだ」


バサァッ!


全身を覆うローブを振り払い、予想通りというべきか魔術師の格好をした中年男性の「死人」が姿を現し、その胸元にはバルトロス王国の「剣」と「盾」が重なり合ったような紋章が刻まれている(レノが持っているペンダントとは少し形が違う)。


「前回と比べたら質は落ちるが……それでも貴様如き、十分だ!!」
「ワンパターンだな……」


魔術師の男が黒色の杖を取り出し、前回と比べたら大きさは違うが、間違いなく呪具の類であり、触れるだけでも危険だろう。相手は意外にも俊敏な動きで距離を取り、杖先をレノに向けると以前にも使用した「砲撃魔法」を放つ。



「ダーク・フォース!!」



ズドォオオオオオンッ!!



杖先から漆黒の光線が放たれ、レノはすぐに回避行動を取る。この砲撃魔法はミキのセイント・フォースを上回る威力であり、直撃すればただでは済まない。


「瞬脚」


ドンッ!!


「馬鹿が!!」


足元を肉体強化(アクセル)で強化し、さらに嵐属性の力を利用して跳躍すると、魔術師は笑みを浮かべ、そのまま杖の方向を変えて空中に飛来したレノに光線を放とうとするが、


「おっと!」
「何!?」


ドォンッ!!


空中でさらに足を踏みつける動作を行い、一気に加速して交戦を回避する。レノが使用する「瞬脚」は元々は空中に浮かぶ「グリフォン」を相手に戦闘を行うために作り出した技であり、体力の消費が大きいため多用は出来ないが、空中でも仕様が可能で方向転換や加速する際に使用する。


「乱刃!!」


ドォオオオンッ!!


今度はレノが三日月状の嵐の刃を形成し、そのまま下に経っている魔術師に対して放つ。以前よりも大きさも精度も成長し、相手は舌打ちしながら杖先を向け、


「ふんっ!」


無詠唱で尚且つ、呪文の名前を口にせずに六芒星の防御魔方陣を形成し、そのまま乱刃を正面から受け止める。


バシュゥウウッ……!!


「……またか」


三日月の刃が魔方陣に吸収される様に縮小し、遂には完全に呑み込まれる。以前にもミキの魔法を吸収した事を思い出し、力ずくで破壊するのは難しい。


「……相当に腕を上げたな。やはり、あの時殺しておくべきだったか……」
「お褒めに預かり光栄です」


魔術師の言葉を皮肉で返し、レノは目の前で展開されている六芒星の魔方陣にどのように対抗すべきか考え込む。幸い、相手の動きはそれほどではないが、こちらの攻撃が通じないのでは意味が無い。

「撃雷」や「雷槍(雷撃)」は接近しなければ通じず、当然「弾撃(嵐撃)」も不可能。遠距離で攻撃できる「乱刃」や「紫電」すらも魔方陣に吸収されてしまうだろう。六芒星の防御魔方陣を破壊するとなると「カラドボルグ」の力を借りないとならないが、


(……試してみるか?)


レノは右腕を確認して先日の事を思い出し、右手に纏った魔力の鎧が左腕を形成する風属性の魔力を掻き乱したことを思いだし、レグから教わった「魔闘術」を試す事にする。
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