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52 母として…

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「其方たちは私の妻に対して何をモノ申しておるのだっ!」

アルバン国王がそう言って彼女たちを怒鳴りつける。
王子が泣き止む中乳母に連れられてお祝いムードから一気にしんみりとしてしまった。

「……申し訳、ござません。陛下。私達は決して王妃様を罵っていた訳では」
「そんな言い訳が通用すると思っているのか。既に其方たちがマリアにしてきた数々の失言や暴言、罵り等全て把握しているのだ。私は国王として其方達を許す訳にはいかぬ。当分謹慎処分とする」
「そ、そんな……」
「連れて行け」

兵士に命じてクリスティ様達が会場から追い出されていった。
初めて私に対して怒ってくれたと思うとなんだか嬉しくなる。


その後、パーティーはお開きになり私は部屋に戻ることになった。
リリアンも自室へ侍女に連れられて行ってしまった。
部屋に戻ると、国王が部屋に入って来て私の隣に腰かけた。

「今まで黙っていたが、もう辛抱出来なかった。其方を愚弄する輩は誰であろうが許さぬ」
「国王様…其処までせずとも、私は王妃としては未熟です。そのことは自分が一番よく分かっているのです。なので私は気にしておりません」

本当は『よっしゃ』と思っているがそのことを悟られないように私は国王に言った。
国王は笑顔で安心せよ、と私に言いながら優しく抱きしめてくれた。
これから私は王妃としての役割を果たすべき時期に来てしまった。
今後は政にも携わることになるだろう。
王妃として……。

「私にはまだまだ未熟者ですがどうかよろしくお願い致します」
「ああ、分かっておる。此方こそ宜しく頼む」

国王はそう言って優しく微笑んでくれた。
国王が部屋から出て行ったあと私は侍女のラスティを部屋に呼んだ。

「ラスティ、あの人たちはどうなるの?」
「さぁ……当分は自宅謹慎でしょうけれど、今後の事までは分からないわ」
「私の事をバカにした連中よ。許せない……」
「国王様も分かっているのだからそこまで……」
「これは見せしめでもあるの。私は本気で王妃としてこれから振舞うことになるわ。そんな私に対してああいう物言いをする人たちが現れないようにしないと……」

ラスティは少し困惑した表情で私を見つめていた。
子供を二人も生んだ母として、私は強くならねばならないと心の中で誓ったのだった。



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