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剣乱武闘編
偽物
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やっとの事でレノ達の出番が回り、まずはリノンたちが先にメダルを提出する。彼女達も王国から支給された参加証であり、事前の説明では第一次予選免除が約束されている。
「……はい、大丈夫です。これをどうぞ」
「ありがとう」
「ありがとうございますっ!」
「……ありがとう」
3人が問題なく検査を通って木札を受け取り、最後にレノが受付員の前に立つと、机の上に2つのメダルを提示する。
「参加証を2つお持ちですね。では、検査を先に行います」
まずはレノが地下闘技場で獲得した一般者用のメダルが検査機に填め込まれ、すぐに魔石の色が赤色に点滅する。
「問題ありません。次に……おや、これは選定者メダルですね」
次に王国から支給されたメダルを受付員が手に取ると、すぐに先ほどのメダルと同様に検査機に填め込むと、
「――え?」
「これは……」
検査機が偽物の証である「黄色」に変色し、受付員達が困惑する。それは見守っていたリノン達も同じであり、全員が驚愕する。
「……このメダルは偽物です」
「そんな馬鹿な!!」
真っ先に声を上げたのはリノンであり、彼女は慌てて検査機からメダルを取り出して確認を行う。
「……おかしい、何かの間違いだ……これは王国から支給された物だぞ」
「し、しかし……現に検査機が……」
「おい、何を揉めてんだよ!!さっさとしろよ!!」
後方に並んでいる他の参加者たちが声を荒げ、受付員とリノン達は顔を合わせ、取りあえずは1人の受付員とレノ達が移動して他の者達の検査を進める。
「何が起きてるの?」
「こっちが聞きたいぐらいだ……何故、王国の参加証のメダルが……」
「……事情は分かりませんが、こちらとしても対応に困ります。貴方方の事は聞いておりましたが、メダルが本物ではない以上、特別選手の木札は渡せません」
「そんな……」
「……どうにか、ならないのか?」
「……難しいです。今回の大会は王国主催ではなく、全種族「共同」で開催されています。つまり、特定の個人を特別扱いする事は種族間の信用に関わります」
この大会の受付員は人間で構成されているが、大会の進行役や審判はそれぞれの種族が取り仕切っており、ここでメダルを所持していないレノを参加者として認める事は「人間(彼を保護している)側」が不正を行ったと判断されかねない。
「申し訳ありませんが……貴方のメダルは認められません。ですが、最初に提示した一般参加者用のメダルは問題ありません」
受付員が木札を取り出してレノに手渡す。番号は「315番」という数字が刻まれており、恐らくは事前に選定された者達は「300番」以内の数字が刻まれているのだろう。
「レノ……」
「別に俺は問題無いよ。予選に出ればいいだけでしょ?」
「それはそうだが……今回の予選内容を知っているのか?」
「……種族別に行われる。つまり、俺は森人族(エルフ)の奴等と予選を受ける」
「……危険すぎる」
「レノさん……」
エルフ達はハーフエルフであるレノを目の敵にしており、予選に出場する参加者の中には深淵の森のエルフ達も当然混じっている可能性が高い。このまま出場するのは危険だが、それ以外に方法は無い。
「一体、いつメダルを……」
「……さっきの騒ぎの時だな」
先ほどの女戦士のエルフの事を思いだし、レノは馬車の中に荷物を置いて行ってしまった。その中にはメダルが入った小袋も含まれており、馬車が急停止した際に落としてしまっていた。思えばエルフを取り押さえる際に全員が馬車から抜け出しており、その際にすり替えられた可能性が高い。
幸いにも一般参加者のメダルは服の内側に隠していたため、すり替えは防げたが、予選免除がされる王国のメダルの方は間違いなく何者かに奪われたと考えるのが妥当だろう。だが、少し気になる所もあるが。
「狙撃したエルフ以外にも仲間が……くそっ」
「今、追っても遅い」
「私が臭いで……」
「もう随分時間が経っている。それに臭い消しぐらいの薬は使用してるはずだ」
エルフは薬学にも精通しており、尾行に備えて臭いを消しているのは常套手段である。どちらにしろ、時間が経ちすぎているので追いかけるのは無駄だろう。
「……予選開始は?」
「……明日の正午から始まります。午前中に開会式が行われますが、参加者の方々は自由参加ですので……」
「森人族の予選は?」
「一番最初に行われます。正午から参加者は闘技場に収集され、それぞれ規則の下で予選が開始されます」
「予選か……」
――予選は「初日」と「3日目」に掛けて行われ、全種族の参加者が競い合い、5日目の本戦に出場する「64名」が選定される。ちなみにリノン達が予選を免除されるのは初日だけであり、3日目以降は彼女達も参加しなければならない。
初日の予選で参加者は「1000名」から「333名」に限定され、3日目から「333名」は「64名」に、5日目は「32名」まで搾られ、最終日である7日目からトーナメント方式で決勝まで行われる。
「それでは、闘技場を入ってすぐに係りの者が参りますので、指示に従ってください」
受付員はそう告げると、
「最後に……ご武運を祈ります」
「……はい、大丈夫です。これをどうぞ」
「ありがとう」
「ありがとうございますっ!」
「……ありがとう」
3人が問題なく検査を通って木札を受け取り、最後にレノが受付員の前に立つと、机の上に2つのメダルを提示する。
「参加証を2つお持ちですね。では、検査を先に行います」
まずはレノが地下闘技場で獲得した一般者用のメダルが検査機に填め込まれ、すぐに魔石の色が赤色に点滅する。
「問題ありません。次に……おや、これは選定者メダルですね」
次に王国から支給されたメダルを受付員が手に取ると、すぐに先ほどのメダルと同様に検査機に填め込むと、
「――え?」
「これは……」
検査機が偽物の証である「黄色」に変色し、受付員達が困惑する。それは見守っていたリノン達も同じであり、全員が驚愕する。
「……このメダルは偽物です」
「そんな馬鹿な!!」
真っ先に声を上げたのはリノンであり、彼女は慌てて検査機からメダルを取り出して確認を行う。
「……おかしい、何かの間違いだ……これは王国から支給された物だぞ」
「し、しかし……現に検査機が……」
「おい、何を揉めてんだよ!!さっさとしろよ!!」
後方に並んでいる他の参加者たちが声を荒げ、受付員とリノン達は顔を合わせ、取りあえずは1人の受付員とレノ達が移動して他の者達の検査を進める。
「何が起きてるの?」
「こっちが聞きたいぐらいだ……何故、王国の参加証のメダルが……」
「……事情は分かりませんが、こちらとしても対応に困ります。貴方方の事は聞いておりましたが、メダルが本物ではない以上、特別選手の木札は渡せません」
「そんな……」
「……どうにか、ならないのか?」
「……難しいです。今回の大会は王国主催ではなく、全種族「共同」で開催されています。つまり、特定の個人を特別扱いする事は種族間の信用に関わります」
この大会の受付員は人間で構成されているが、大会の進行役や審判はそれぞれの種族が取り仕切っており、ここでメダルを所持していないレノを参加者として認める事は「人間(彼を保護している)側」が不正を行ったと判断されかねない。
「申し訳ありませんが……貴方のメダルは認められません。ですが、最初に提示した一般参加者用のメダルは問題ありません」
受付員が木札を取り出してレノに手渡す。番号は「315番」という数字が刻まれており、恐らくは事前に選定された者達は「300番」以内の数字が刻まれているのだろう。
「レノ……」
「別に俺は問題無いよ。予選に出ればいいだけでしょ?」
「それはそうだが……今回の予選内容を知っているのか?」
「……種族別に行われる。つまり、俺は森人族(エルフ)の奴等と予選を受ける」
「……危険すぎる」
「レノさん……」
エルフ達はハーフエルフであるレノを目の敵にしており、予選に出場する参加者の中には深淵の森のエルフ達も当然混じっている可能性が高い。このまま出場するのは危険だが、それ以外に方法は無い。
「一体、いつメダルを……」
「……さっきの騒ぎの時だな」
先ほどの女戦士のエルフの事を思いだし、レノは馬車の中に荷物を置いて行ってしまった。その中にはメダルが入った小袋も含まれており、馬車が急停止した際に落としてしまっていた。思えばエルフを取り押さえる際に全員が馬車から抜け出しており、その際にすり替えられた可能性が高い。
幸いにも一般参加者のメダルは服の内側に隠していたため、すり替えは防げたが、予選免除がされる王国のメダルの方は間違いなく何者かに奪われたと考えるのが妥当だろう。だが、少し気になる所もあるが。
「狙撃したエルフ以外にも仲間が……くそっ」
「今、追っても遅い」
「私が臭いで……」
「もう随分時間が経っている。それに臭い消しぐらいの薬は使用してるはずだ」
エルフは薬学にも精通しており、尾行に備えて臭いを消しているのは常套手段である。どちらにしろ、時間が経ちすぎているので追いかけるのは無駄だろう。
「……予選開始は?」
「……明日の正午から始まります。午前中に開会式が行われますが、参加者の方々は自由参加ですので……」
「森人族の予選は?」
「一番最初に行われます。正午から参加者は闘技場に収集され、それぞれ規則の下で予選が開始されます」
「予選か……」
――予選は「初日」と「3日目」に掛けて行われ、全種族の参加者が競い合い、5日目の本戦に出場する「64名」が選定される。ちなみにリノン達が予選を免除されるのは初日だけであり、3日目以降は彼女達も参加しなければならない。
初日の予選で参加者は「1000名」から「333名」に限定され、3日目から「333名」は「64名」に、5日目は「32名」まで搾られ、最終日である7日目からトーナメント方式で決勝まで行われる。
「それでは、闘技場を入ってすぐに係りの者が参りますので、指示に従ってください」
受付員はそう告げると、
「最後に……ご武運を祈ります」
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