449 / 1,095
剣乱武闘編
閑話 〈オオイノブタ〉
しおりを挟む
翌日、大会2日目である最初の「休息日」を迎え、バルたちを闘人都市に送り返した後、レノはハイ・ゴブリンが建ててくれた小屋に横たわり、藁の上に敷かれた毛布の上で目を覚ます。昨夜は随分と遅くまで騒いでしまい、起床した時は既に昼近くまで時刻が立っていた。
「ふぁあ……こら、起きろコトミン」
「んんっ……あ、やぁ……」
むにむにっ……
何時の間にか自分に抱き付いたまま眠っていたコトミに首を向け、彼女の胸を揉みしだく。だが、眠りが深いのか起きる様子は無い。
「起きんかい」
「あうっ……ん、ふぅうっ……」
ぐにぐにっ……
抱き付いたまま離れようとしないコトミの胸を鷲掴み、縦横無尽に揉んでみるが決して離そうとしない。力ずくで引きはがそうとするが、普段の態度からは想像できない力だ。
「このっ……」
「ふぁうっ……」
すりすりっ……
安産型の尻を撫でてやると、力が一瞬だが抜けたので即座に離れる。今更ながら寝ている彼女に相当な事を仕出かした気がするが、気にしている暇は無い。
「ほら、これを抱いてろ」
「わうっ……」
「……うぅんっ……」
隣で寝転がっていたポチ子(彼女も泊まっていた)を拾い上げ、コトミに抱き付かせると2人はお互いを抱きしめ合うように寝息を立てる。
「……レノ……」
「レノさぁんっ……」
「ん?」
2人に名を呼ばれて目を覚ましたのかと死線を向けるが、どうやら寝言の用であり、レノは二人の頭を撫で回す。
「さて……と」
明日の第二次予選に備えて訓練を始めるため、レノは外に出ると昨日のバーベキューで満腹になったハイ・ゴブリン達が死屍累々(死んではいないが)の状態で寝転がっており、どうやら彼らも寝過ごしたようだ。
地面には昨日の内にバルが黒猫酒場から持ち出した安酒が入った樽が散乱としており、ハイ・ゴブリン達もどうやら普通の酒で酔っぱらうらしい。
結局、まだ狩猟に出かけたムミョウたちは帰還していないようであり、レノは彼らを踏まない様に気を付けながら、近くに流れている小川に向かう。
「……ここでいいか」
小川に辿り着き、周囲に気を配りながら、レノは右腕に集中する。
ボウッ……!!
右腕に紅色の炎を想像させる「魔鎧(フラム)」が誕生し、ソフィアの時は青色の炎が生まれるが、この状態では魔鎧が変色する。両者の違いは防御型と攻撃型の性質であり、特に発動する際に違和感は無い。
レグ曰く、2つの魔鎧を操れる者は彼女でも聞いたことが無く、レノが性別変化出来るハーフエルフであることが大きく関係しているのかも知れない。
「さて……」
自分の魔鎧を確認し、本物の炎ほどではないが熱を感じ取れる。正確には熱いというよりは生温かいという表現であり、ソフィアの者と比べたら熱量が大きく違う。
ソフィアの攻撃型の「魔鎧」なら高熱を放ち、相手に火傷を負わせることも可能だが、こちらの状態の魔鎧は攻撃にはあまり使用出来ない。以前に死霊使いとの戦闘では魔方陣の破壊に成功したが、レグによればあの時は運が良かっただけであり、下手をしたら右腕が使い物にならなく可能性もあった。
「さて……ん?」
バキバキッ……!!
前方の林から音が聞こえ、視線を向けると、
「ブギィイイイッ……!!」
「イノブタか……」
そこには茶色い体毛に覆われた猪のような魔獣が現れ、その体長は4メートルを超えており、鋭利な角が生えている。昨晩に食したイノブタと比べても一回りは大きく、恐らくは「オオイノブタ」と呼ばれるイノブタの主で間違いない。
「ブヒィィイイイッ!!」
「来るかっ」
レノは向かってくる大型のイノブタに対し、右腕を構える。正直に言えば北部山岳や地下迷宮で大型の魔獣との戦闘は成れているため、適当に撃雷を一発でも放てば勝負は決するだろう。
だが、防御型の魔鎧(フラム)の良い訓練になるため、右腕を構えたまま突っ込んでくるオオイノブタを待ち構え、
ドシンッ!!
「プギィッ!?」
「うわっ!?」
オオイノブタの鼻頭が右腕の魔鎧に派手に衝突するが、レノはそのまま弾かれる様に4メートルは吹き飛び、見事に着地する。先ほどの衝撃に対し、右腕は傷一つ負っていない。
相手もオオイノブタも同様なのか、レノを派手に吹き飛ばしたにも関わらず、混乱したようにドスドスと大地を踏みつけて警戒している。
「なるほど……ゴムか」
まるで自分の右腕が弾性力に特化したゴム製の鎧に覆われたような感覚であり、衝撃を外部へと受け流して負傷を避けた。それでも完全に受け流し損ねたため、派手に吹き飛ばされたようだ。
「もう一度……」
「ブギィイイイイイイイッ!!」
ドスドスッ!!
今度は助走を付けてオオイノブタが突進し、レノは右腕を構えると、
ズズゥンッ!!
「ぬぬぬっ……!!」
「ブギィッ……!?」
今度は大地を踏みしめ、オオイノブタの巨体を防ぎきる。同時に右腕に形成された「魔鎧(フラム)」から衝撃波が外部に流れ込み、今度は上手く突進の衝撃を受け流せた。
「よし……肉体強化(アクセル)」
「ブギギッ……!?」
ビキィイッ……!!
魔力で身体能力を上昇させ、レノは魔鎧を解除させて右腕を振るいあげ、
「寝てろ!!」
ドズゥンッ!!
「ブゲァアアアアッ……!?」
鼻頭に拳を的確に叩き込み、そのまま衝撃がオオイノブタの脳にまで到達し、巨体が倒れこむ。黒狼やゴーレムと比べれば、この程度の相手ならば肉体強化だけで十分に対応できる。
「さて……朝は豚汁でも作るか」
眼の前で気絶したオオイノブタを確認し、まずはどうやって運び込むのかを思い悩む。
「ふぁあ……こら、起きろコトミン」
「んんっ……あ、やぁ……」
むにむにっ……
何時の間にか自分に抱き付いたまま眠っていたコトミに首を向け、彼女の胸を揉みしだく。だが、眠りが深いのか起きる様子は無い。
「起きんかい」
「あうっ……ん、ふぅうっ……」
ぐにぐにっ……
抱き付いたまま離れようとしないコトミの胸を鷲掴み、縦横無尽に揉んでみるが決して離そうとしない。力ずくで引きはがそうとするが、普段の態度からは想像できない力だ。
「このっ……」
「ふぁうっ……」
すりすりっ……
安産型の尻を撫でてやると、力が一瞬だが抜けたので即座に離れる。今更ながら寝ている彼女に相当な事を仕出かした気がするが、気にしている暇は無い。
「ほら、これを抱いてろ」
「わうっ……」
「……うぅんっ……」
隣で寝転がっていたポチ子(彼女も泊まっていた)を拾い上げ、コトミに抱き付かせると2人はお互いを抱きしめ合うように寝息を立てる。
「……レノ……」
「レノさぁんっ……」
「ん?」
2人に名を呼ばれて目を覚ましたのかと死線を向けるが、どうやら寝言の用であり、レノは二人の頭を撫で回す。
「さて……と」
明日の第二次予選に備えて訓練を始めるため、レノは外に出ると昨日のバーベキューで満腹になったハイ・ゴブリン達が死屍累々(死んではいないが)の状態で寝転がっており、どうやら彼らも寝過ごしたようだ。
地面には昨日の内にバルが黒猫酒場から持ち出した安酒が入った樽が散乱としており、ハイ・ゴブリン達もどうやら普通の酒で酔っぱらうらしい。
結局、まだ狩猟に出かけたムミョウたちは帰還していないようであり、レノは彼らを踏まない様に気を付けながら、近くに流れている小川に向かう。
「……ここでいいか」
小川に辿り着き、周囲に気を配りながら、レノは右腕に集中する。
ボウッ……!!
右腕に紅色の炎を想像させる「魔鎧(フラム)」が誕生し、ソフィアの時は青色の炎が生まれるが、この状態では魔鎧が変色する。両者の違いは防御型と攻撃型の性質であり、特に発動する際に違和感は無い。
レグ曰く、2つの魔鎧を操れる者は彼女でも聞いたことが無く、レノが性別変化出来るハーフエルフであることが大きく関係しているのかも知れない。
「さて……」
自分の魔鎧を確認し、本物の炎ほどではないが熱を感じ取れる。正確には熱いというよりは生温かいという表現であり、ソフィアの者と比べたら熱量が大きく違う。
ソフィアの攻撃型の「魔鎧」なら高熱を放ち、相手に火傷を負わせることも可能だが、こちらの状態の魔鎧は攻撃にはあまり使用出来ない。以前に死霊使いとの戦闘では魔方陣の破壊に成功したが、レグによればあの時は運が良かっただけであり、下手をしたら右腕が使い物にならなく可能性もあった。
「さて……ん?」
バキバキッ……!!
前方の林から音が聞こえ、視線を向けると、
「ブギィイイイッ……!!」
「イノブタか……」
そこには茶色い体毛に覆われた猪のような魔獣が現れ、その体長は4メートルを超えており、鋭利な角が生えている。昨晩に食したイノブタと比べても一回りは大きく、恐らくは「オオイノブタ」と呼ばれるイノブタの主で間違いない。
「ブヒィィイイイッ!!」
「来るかっ」
レノは向かってくる大型のイノブタに対し、右腕を構える。正直に言えば北部山岳や地下迷宮で大型の魔獣との戦闘は成れているため、適当に撃雷を一発でも放てば勝負は決するだろう。
だが、防御型の魔鎧(フラム)の良い訓練になるため、右腕を構えたまま突っ込んでくるオオイノブタを待ち構え、
ドシンッ!!
「プギィッ!?」
「うわっ!?」
オオイノブタの鼻頭が右腕の魔鎧に派手に衝突するが、レノはそのまま弾かれる様に4メートルは吹き飛び、見事に着地する。先ほどの衝撃に対し、右腕は傷一つ負っていない。
相手もオオイノブタも同様なのか、レノを派手に吹き飛ばしたにも関わらず、混乱したようにドスドスと大地を踏みつけて警戒している。
「なるほど……ゴムか」
まるで自分の右腕が弾性力に特化したゴム製の鎧に覆われたような感覚であり、衝撃を外部へと受け流して負傷を避けた。それでも完全に受け流し損ねたため、派手に吹き飛ばされたようだ。
「もう一度……」
「ブギィイイイイイイイッ!!」
ドスドスッ!!
今度は助走を付けてオオイノブタが突進し、レノは右腕を構えると、
ズズゥンッ!!
「ぬぬぬっ……!!」
「ブギィッ……!?」
今度は大地を踏みしめ、オオイノブタの巨体を防ぎきる。同時に右腕に形成された「魔鎧(フラム)」から衝撃波が外部に流れ込み、今度は上手く突進の衝撃を受け流せた。
「よし……肉体強化(アクセル)」
「ブギギッ……!?」
ビキィイッ……!!
魔力で身体能力を上昇させ、レノは魔鎧を解除させて右腕を振るいあげ、
「寝てろ!!」
ドズゥンッ!!
「ブゲァアアアアッ……!?」
鼻頭に拳を的確に叩き込み、そのまま衝撃がオオイノブタの脳にまで到達し、巨体が倒れこむ。黒狼やゴーレムと比べれば、この程度の相手ならば肉体強化だけで十分に対応できる。
「さて……朝は豚汁でも作るか」
眼の前で気絶したオオイノブタを確認し、まずはどうやって運び込むのかを思い悩む。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
480
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる